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第八話 もしも世界が優しかったなら

もし。

もしこの世界が、

最初から優しい世界だったなら。

怪物もいなくて。

秘密もなくて。

ただ普通の家族がいて、

普通の毎日が続くだけの世界だったなhら。

きっと私は――

もっと幸せだったと思う。

朝の光が、

カーテンの隙間から部屋に差し込む。

柔らかい光。

私はゆっくり目を開けた。

天井は、

いつもの天井。

静かな朝。

遠くから、

キッチンの音が聞こえる。

母の声。

父の笑い声。

そして――

「起きたか?」

ドアの向こうから、

兄の声がした。

私は思わず笑う。

「うん」

ドアが開く。

そこに立っていたのは、

いつもの兄だった。

普通の人間の姿で。

優しい顔で。

長い首も、

怪物の影も、

どこにもない。

ただの――

兄だった。

「朝ごはんできてるぞ」

「今行く」

私はベッドから降りる。

心が軽い。

何も怖くない。

キッチンに行くと、

家族が揃っていた。

父が新聞を読んでいる。

母が味噌汁をよそっている。

兄が椅子に座っている。

普通の家族。

ただそれだけ。

でも。

それだけで、

胸が温かくなる。

朝食のあと。

私は兄と一緒に家を出た。

学校へ向かう道。

空は青い。

風が優しい。

兄が隣を歩いている。

私は少しだけ、

勇気を出して言った。

「ねえ」

兄が振り向く。

「ん?」

私は少しだけ頬が熱くなる。

そして言った。

「もしさ」

「私たちが兄妹じゃなかったら……どう思う?」

兄は少し驚いた顔をした。

そして、

静かに笑った。

「難しい質問だな」

私は歩きながら、

空を見る。

答えは期待していなかった。

ただ、

聞いてみたかっただけ。

そのとき。

兄が小さく言った。

「でも」

私は顔を上げる。

兄は少しだけ照れたように笑った。

「今でも別に、嫌いじゃないけどな」

心臓が跳ねた。

「え?」

兄は前を向いたまま言う。

「もしそうだったら」

「付き合ってたかもな」

その言葉に、

世界が止まったみたいだった。

私は何も言えない。

ただ顔が熱い。

兄は少しだけ笑った。

そして。

私の手を、

軽く握った。

「今からでも」

「試してみるか?」

その瞬間。

胸の奥が、

幸せでいっぱいになった。

夕方。

家の前の坂道。

空はオレンジ色だった。

私は兄と並んで座っている。

手は、

まだ繋いだまま。

世界は静かで、

優しかった。

怪物もいない。

秘密もない。

ただ、

普通の幸せがあるだけ。

兄が小さく言う。

「こういう未来もあったのかな」

私は笑う。

「きっとあったよ」

風が吹く。

優しい夕暮れ。

でも。

ふと。

私は思った。

これは本当に――

現実なんだろうか。

それとも。

ただの夢?

それとも。

私が一番望んだ

世界の形?

遠くで、

誰かの声が聞こえた気がした。

「起きろ」

その声は、

とてもよく知っている声だった。

兄の声に、

少し似ていた。

私は目を閉じる。

もしこれが夢なら。

もう少しだけ――

覚めないでほしい。

この物語の結末、どう思いましたか?

よければ感想を聞かせてください。

―おまけ話 / Extra Story―


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