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第二話 夜のパーティー

人は時々、

何気ない一日が、

自分の人生を変えることになるとは知らない。

ほんの小さな誘い。

ほんの軽い気持ち。

けれど、その夜――

私は初めて気づいた。

この世界には、

どこか“おかしいもの”があるということに。

「今日はちょっと出かけるぞ」

夕方、兄がそう言った。

制服の上に軽く上着を羽織りながら、

私の方をちらりと見る。

「友達の家でパーティーがあるんだ」

「パーティー?」

私は少し驚いた。

兄はあまりそういう場所に行くタイプじゃない。

「小さい集まりだよ。クラスのやつらだけ」

そう言いながら、兄は少しだけ考えるような顔をした。

「……お前も来るか?」

その言葉に、

胸が少しだけ高鳴った。

「え?」

「どうせ家にいても暇だろ」

兄は軽く笑う。

「来てもいいぞ」

私は少し迷った。

でも――

「……行く」

気づいたときには、

もうそう答えていた。

兄は「そっか」とだけ言って、

少しだけ嬉しそうに笑った。

それだけで、

胸が温かくなる。

……本当に、

単純だと思う。

兄の一言で、

私は簡単に幸せになってしまう。

そのあと、私たちは家を出た。

夜の街は、静かだった。

街灯の光が道路を照らしている。

人は、あまりいない。

それが少しだけ、

気になった。

「……ねえ」

私は歩きながら聞く。

「人、少なくない?」

兄は少しだけ考えてから答えた。

「そうか?」

「うん……」

なんとなく、

街が静かすぎる気がした。

けれど、兄は気にしていないようだった。

しばらく歩いて、

一軒の家の前で兄は止まる。

「ここだ」

チャイムを押すと、

すぐにドアが開いた。

「おー、来たか」

そこにいたのは、兄のクラスメイトらしい男の人だった。

「こんばんは」

私は軽く頭を下げる。

そのとき――

「へぇ……」

後ろから、女の人の声がした。

振り向くと、

そこには一人の女の子が立っていた。

長い髪。

静かな目。

彼女は私を見て、

少しだけ笑う。

「この子が妹?」

「……ああ」

兄が短く答える。

その女の子は、

私をじっと見ていた。

まるで――

何かを確かめるみたいに。

その視線に、

私はなぜか少しだけ寒気を感じた。

「可愛いね」

彼女はそう言った。

けれどその声は、

どこか奇妙に聞こえた。

「兄妹なんだ」

そして、

小さく笑いながら言う。

「……いいなぁ」

何が“いい”のか、

私はよく分からなかった。

けれど――

そのときの彼女の目は、

少しだけ怖かった。

パーティーは、

普通に始まった。

笑い声。

会話。

グラスの音。

どこにでもある、

ありふれた夜の集まり。

それなのに。

時々、

誰かの視線を感じる。

そして――

さっきの女の子が、

遠くから私を見ていた。

じっと。

まるで、

何かを観察するように。

そのとき私はまだ知らなかった。

この世界で、

本当に少ないのは――

人間の方だということを。

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