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朝起きてしばらくすると、女性だけのトークルームでは、わたしが毎日洗ってもらっている下着に興味があると話題に出てきた。こっちの世界の下着はリネンのワンピースのようなもの、コルセット、ペチコート、かぼちゃパンツだ。ブラジャーはないし、ぴったりお尻を包むショーツもない。わたしが使用している下着と似たようなものが欲しいと声があったので、女性だけで、わたしの部屋に来てもらった。
良い下着はきちんとサイズをはからないといけないからねー。
まずは奥様のメアリーさんから、淡い金髪に澄んだ水色の目の美しい人だ。40代だけど若い。張りもある。好みを聞きながらノートパソコンで検索して、レースが綺麗でバストアップが期待できるものを選択。各自金貨を持参されたので、遠慮したけど、投入することにした。やはりこっちの金貨は60万円以上の価値がある。何枚も買えるけど、とりあえず日本製のものが合うかどうかだから、試しにブラとショーツを1枚ずつ買ってみる。少しセクシーなタイプだ。いいのか。
謎空間から届く荷物。ブラジャーはわたしが服の上から付け方を指導し、メアリーさんがメアリーさんの侍女さんに手伝ってもらって、試着してみる。ほとんど他人の下着姿を見るのもなんだけど、これはお試し実験なのだと言い聞かせる。メアリーさんの方は貴族なので人に見られるのは慣れているようだ。ブラもショーツもぴったりみたい。セクシーなタイプだったけど、メアリーさんには似合う。いいね。素敵。
「どう?このレース凄く素敵だし、ぴったりしているのにきつくないのよ。ごわごわもしていないし支えられているのが気持ち良いです。」
それにしてもメアリーさん、足も長いな。色も白いし本当に綺麗。たぶんご自分でも自信がありそうで、ぴったりの下着姿で、どう?良い?と何度もくるくるされる。
「お母様素敵です。思ったよりも上品でわたくしも欲しいです。足がとても長く見えます!」
「そうねぇリリスはもっとレースのついているのが良いかしら。それにしてもとっても楽よ。」
「コルセットではご飯も食べられなくなるぐらいキツイですからねぇ。」
「色も白以外にいろいろあって、迷いますわ。」
着付けを手伝った侍女さんも自分にも欲しいと言いだされた。この侍女さんはメアリーさんのご実家から一緒に来られた古参の方でメアリーさんの親友のような家族のような感じなので、こうプライベートな空間では上司と部下ではなく姉と妹のような感じで会話が進むそうだ。メアリーさんは侍女さんのお願いを笑って応えていた。
お嫁さんのクロエさんはダークブラウンの髪と緑の目で秘書のような雰囲気の知的美人で、ふわふわの赤味かかった金髪で青い目のユリアーナさんは可愛い系、娘のリリスさんはお母さんのメアリーさんと同じ淡い金の髪色で目はお父さんのアーヴィンさんとハシバミ色で少女と大人のはざかいの美しさを持っている。みんな綺麗。だから、綺麗な下着姿を見ても大丈夫って自分に言い聞かせながらファッションショーを見る。女性同士だしまぁいいか。
いろんな美女の下着姿に翻弄されながら、同性なんだから大丈夫と言い聞かせて数時間、次々好みのものを選択し謎空間から受け取ること数十回。全員にお気に入りのものが選べた。わたしが複製してもいいんだけど、ここは投入した金貨分は大丈夫だと4人プラス侍女分も追加で60万円分の下着をお買い上げ。きゃっきゃ、うふふと、めちゃくちゃ楽しそうだった。
ほくほくした顔で自分たちのお部屋に戻られる。メアリーさんとクロエさんたちは、あの下着を着てご主人をノックアウトしたいとか言っておられたので、明日顔を合わすのが少し恥ずかしいかも。
寝る前の残り魔力で今日は金貨を複製しておく。王宮用にパソコンもスマホも追加しておこうか、あ、増やしたハンドクリームを渡していなかった。明日ジョアンナさんに渡そう。公爵家の使用人は警護する人や下男下女も入れたら全員で100人近くいるそうで、そのうち約半分が女性だと聞いている。
ハンドクリームもう少し多めに複製しておこう。異世界あるあるのハンドクリームをこっちの世界の人に渡せるのは嬉しい。自分が作ったものじゃないのが少し残念だけどね。
それにしても、わたし異世界に馴染みすぎ。日本にいる時はいつもここではないどこかへという地に足がつかない根無し草のような状態だったのに、こっちの世界には馴染む馴染む。変な感じ。日本の家族はわたしがこっちに落ちてきてどうなんだろう。神隠しにあったようなものなんだろうか。まぁ両親には溺愛する兄が近所に住んでいるし、なんとなく気が合わないというのか、若干放置気味だったわたしのことはいてもいなくてもどっちでもいいだろう。
小さい頃からここではないどこかへいつも意識がいっていたわたしは、希薄な存在感だったのか、いてもいなくてもわからないような感じの扱いだった。放置というのか無視というのか、今思えば日本にいて日本にいなかったのかもしれない。空気のような存在だったのだろう。まぁ文句言われたり執着されたり支配されなかっただけましだったし、好きな大学に行って無事に就職して、好きな手作りして本を読んでパソコンで異世界転生した時にシミュレーション情報など打ち込んで楽しんで、好きに生きてきて、末期癌になったけど、それなりに好きに生きてきたから、落ち着いた今は後悔していないって言える。
両親とは縁が薄かっただけだろう。小さい頃は兄ばかり構っていて寂しかったけど、わたしはわたしの好きなことに邁進していたから、変に目が届いていなくて良かったかもしれないって今なら言える。
会社には迷惑かけたかもしれない。小さな会社だったから抜けると痛いかも、神隠しなら少しはニュースになって巻き込まれているかも。すみません。社長。ぜんぜん会社に馴染めず浮いていつもひとりぼっちだったけど、いじめられたりはしなかったし、ちゃんとお給与いただけていたのに。ああ、本当日本ではわたしどこでも浮いていたよね。別に突拍子もないことを言ったり目立つことなんて何ひとつしていなかった。ただ雑談する人もなく、仕事しかすることがなかったから、ただ真面目に働いていただけだったけど、誰とも繋がれなかった。だからこそ、こっちに来て初めてこっちの地と人と繋がった感じ。馴染めている感じにほっとする。美女だらけの女性陣と下着のファッションショーだなんて日本の知り合いが聞いたら絶対嘘だと思われそうだ。疎遠中の日本のお父さん、お母さん、お兄ちゃん、わたしはこっちで幸せです。




