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そうして3年、4年過ぎて、
わたしがこっちの世界に落ちてから60年経った。
落ちて来てから4年後21歳の時にアビゲイルさんと結婚した。アビゲイルさんはその時29歳。日本では30歳になるまでいいなと思う人すらいなかったのに、アビゲイルさんとはずっと一緒にいて、じっくりじわじわとわたしの心の中に忍び込んできて、気づいたら心の大きな空間にアビゲイルさんが居座っていた。びっくりした!
寡黙でちょっといかついけど、頼りになるところ、鍛えた体と器の広いところに惹かれた。一緒にこたつに入ってみかん食べてくれるのに一切躊躇なしだったのが好印象。時々ふっと笑う顔がとても素敵でわたしを見る目が優しくて恋愛初心者のわたしは一気にやられてしまった。
こんな素敵な人が何故わたしと結婚してくれるんだろうかと不安になって、アビゲイルさんに何故わたしと結婚したのかを聞いてみたら、わたしが落ちてきた日、落ち人の間のホールで抱き上げてくれた騎士さんがなんとアビゲイルさんだったのだ。
あの時アビゲイルさんはこんな若くて小さくて可愛い女の子がひとりぼっちで落ちてきて可哀そうで絶対に自分が守ってあげたいと思ったそうだ。その後わたしを守りたいとアピールを続けたお陰で、王宮から護衛を出すと言う時にすんなりアビゲイルさんに決まったそうだ。実力はあるし副団長だし文句なしだったそうだ。
一緒にいるようになってから、わたしが桜を植えたり、収穫祭で踊ったり、こたつで幸せになったりする姿を見て、いつも笑っているところが好きになったのだと聞いた。
わたし落ちてきてからずっと好きなことばかりさせてもらっている。本当に幸せな第二の人生だと思う。
アビゲイルさんとの間に男の子が3人生まれた。みんなアビゲイルさんに似ていて元気な子だ。やんちゃだけど素直で可愛い。自分の子どもがこんなに可愛いと思わなかった。3人いて3人とも元気でやんちゃだった。今はその子たちも結婚して子ができて、孫もひ孫もいる。60年で自分の血縁者がこんなに増えると思ってもいなかった。
孫もひ孫も可愛い。でも、やっぱり息子たちが一番可愛い。もう50歳を過ぎたおっさんになったのに、息子は可愛い。自分が親になれるんだろうかと悩む時もあったけど、なってしまえばなるようにしかならないんだね。
自分が大切にしたいと思えば、大切にできた。温かい家庭を持てて幸せだね。
結婚するまでは領主館に住んでいたけど、結婚してからはココスの町に引っ越しした。その時初めて、わたしの口座に馬鹿ほどのお金が貯まっているのを知った!いや、だって、公爵家で暮らしている時は衣食住タダだったし、お小遣いもいただけたし、自分で金貨複製して通販アプリで好きなもの買えたし!
あ、こっちのお金は複製したことないよ。日本の金貨は地金だと思って複製していたからね。口座に貯まっていたお金は、アーヴィンさんや王宮から、わたしが複製したパソコンとスマホに非常袋の代金として振り込まれていた。複製は魔力だからお金かかっていなかったから良かったのに。と思ったけど、アーヴィンさんからは「これは国のけじめです」って言われちゃったらねー。有難くいただくことにしました。ほんと恵まれている。感謝!
お金に困っていなかったわたしは、ココスの職人さんたちと、日本の家電や便利グッズをこっちの世界仕様に作り始めた。王都にも領都にも落ち人研究所が出来てたくさんの魔道具が発明されたけど、わたしたちは庶民でも使えるような魔道具を作ろうとはりきった。ココスだもの、こたつの誕生の地。そこから温熱ヒーターや冷え冷えクーラー、ドライヤーなど作っていった。たまごっちのような小さなゲームも作ってしまった!真面目で働き者の国の職人さんはどんどん開発していっている。
一番頑張ったのは実は時計。庶民でも買える値段で使いやすくてそれでいて素敵な腕時計。こっちの世界には無かったんだよね。小型の時計は。少々の衝撃にも強い〇―SHOCK系だ。ははは。
作れる職人さんが増えてココスといえば、焼きそば、こたつ、時計、ダンジョンと呼ばれるようになったんだよね。
そう、ココスの町にはダンジョンがある。西側の町の外れの小さなものだ。1Fはスライムのみで、子どもやお年寄りに女性でも大丈夫。レベルを上げたら体が丈夫になるし、風邪もひきにくくなるということで、1Fでレベルアップする人がいる。
2F以降は角うさぎとか、ワイルドベア、ブラックウルフ、ファングボアとか出てくる。どうもこっちのダンジョンモンスターは魔獣系、動物が魔素を受け入れ過ぎて魔獣になるらしいんだけど、その魔獣がダンジョンにも出てくる。
よって、ゴブリンやオークは出てこない。
倒すと、肉か皮、あと魔石が落ちる。スライムは魔石とスライムパウダーが多い。スライムパウダーは生理用品のナプキンを作る時に必要なので、公爵家が大量に冒険者ギルドに依頼している。そのお陰でダンジョンの1Fでレベル上げする人のお小遣い稼ぎにもなっていて、感謝されている。
わたしもレベルが上がるのが面白くてアビゲイルさんと日参してしまった。どんどんレベルがあがり、どんどん魔力が増え、わたしの部屋は一時複製したもので溢れたものだ。魔法袋イン魔法袋が可能だってわかるまでは大変だった。多くなった魔力で非常袋はどんどん増えて、結局エルダリス王国中のすべての人に手渡しすることが出来たんだけどね。どんどん増える魔力がこの国の幸せに繋がるであれば頑張ろうっていう気になる。落ちてからずっと至れり尽くせりだったもの。
結婚してココスの町に引っ越してきた時、ジョアンナさんは旦那様と一緒について来てくれた。ジョアンナさんの旦那様はうちで執事をしてくれている。ジョアンナさんは侍女長だ。お2人の子どもは大きくなって自立されている。ちゃんとお休みもとって会いにいかれたりもするけど、2人とお子さんにはスマホを渡しているから連絡はまめにとっておられるそうだ。従業員の福利厚生はきっちりしておかないと。お金もたくさんあるから給与も弾んでいる。
アビゲイルさんと二人暮らしも考えたけど、ココスの町は少し荒くれ者が多いからと、そこは陛下からお許しが出なかった。だから家には侍女やメイドや護衛もいる。領主館と比べると小さいけど、日本の普通の建売に比べると20倍ぐらい大きい。陛下や公爵家の人がお忍びで遊びにきたり、各町や村の世話役が顔を出したりと賑やかな時を過ごさせていただいている。




