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こうして2年目は桜植えて、孤児院行って、メアリーさんと下着の話をして、ハンドクリームや基礎化粧品やアロマや香水の話もしてみた。クロエさんとナプキンやコットンの話をして、アーヴィンさんとオリバーさんとお酒の話をして、みんなで宴会(18歳になったので、飲めるようになったのだ!)しながら歌ったたり、ゼブランさんとダーツ大会の企画をして、アベル君グレン君、カロリーナちゃんと遊んで、その合間に陛下から王宮で勉強会してくれという要請に時々聞いて、時々陛下の愚痴も一緒に聞いてきて、過去の落ち人の記録を調べて、2年目もアーヴィンさんと収穫祭も参加して世話役とお祭り楽しんで、ジョアンナさんとアビゲイルさんとこたつに入ってみかん食べて、まぁまぁ忙しい日々。いや。桜植える日は1日に1本植えたら終わりだし、ゆっくりさせてもらっているかな。
夜には残った魔力でパソコンやスマホ、金貨や魔石に魔法袋を複製していたんだけど、このスキルもっと活用できないかなと思案していた時、アーヴィンさんが公爵領の戸籍を作ろうと言い出された。日々日本の制度とか勉強されているものね。戸籍があれば税の計算、兵士の徴兵、逃げてきた罪人の特定や孤児や未亡人など援助が必要な人がわかるだろうと。本当良い領主さんだ。
公爵領は、領都が2万人ぐらいで、町は2個がそれぞれ3,000人ぐらい村は4か所で各400人ぐらいだと聞いた。全員で38,000人だ。公爵領としては少ないかもしれないけど、戸籍を作ろうと思うと多いかな。ギルドの受付にある魔法の登録を流用すると言っておられた。血が一滴で身分証明書を作れるあれだ。それを冒険者ギルドだけではなく、公爵領の領民登録として役立てるのだそうだ。
それほど急がない、ゆっくり丁寧に登録していきたいとのこと。じゃ、わたしも一緒に頑張ろうかな。登録した人に渡せる非常時バックを作ろう。
何?それって言われそうだけど、なんていうのか、わたしが日本に居た時、いつか異世界に飛ばされたらどうしようって考え時にこれだけ持っていたら大丈夫じゃないかというグッズたち。持っているだけで安心した。何かあった時自分を助けてくれるもの。心配性で不安ばかり持っていた変った子だったわたしの心の支えだったもの、こっちの世界で本当助けてくれたパソコン。そんな心の支えグッズを詰め込んだもの。それを1人1人に渡したいなと思ってしまったのだ。
ただ、領民みんなにパソコンは渡せない。日本語読み書きできない人が多いしね。子爵家や男爵家や騎士爵家までまだ行き届いていないし。
ということで、こっちの世界の人が何かあった時に助けてもらえる心を支えてもらえるためのグッズとは何か。まずは食料だよね。5m四方の大きさしかないけど時間停止の小さめの魔法袋に、こっちのパンを2週間分、日本の袋ラーメン5入りを2パック、カップラーメン10食、フリーズドライのスープ、南の村のりんごジャム、飴、チョコレートバー、羊羹、時間停止付きなんだから、温かいものや冷たいものもいけるか。温かいココアと紅茶、冷たいスポーツ飲料を10本、水も10本、干し肉、焼き鳥、サンドイッチにハンバーガー。りんごとみかん5個ずつ、お粥とうどんも3食分入れておこう。これぐらいあれば風邪ひいたときとか、お金がない時でも2週間ぐらい食べていけるよね。コップやお皿や鍋も一緒に入れておこうか。
食料の次は、初級ポーションと中級ポーション各5本、救急セット、お腹の薬、風邪薬、痛み止め、ソーイングセット、小型のナイフ、Tシャツ、長袖のシャツ、ズボンかスカートこれらはフリーサイズ、子どもにはちょっと大きいけどね。女性用と男性用の袋をわけて作ろうかな。下着とか分けた方がいいかな、いや、どっちも入れておこう。あまったら好きにするだろう。
タオルと無地の大き目の布地はなんでも作れるように上等なリネンにした。石鹸とシャンプーとリンスに魔石。
これだけあれば、急遽仕事を辞めさせられても、病気になってもしばらくはなんとか凌げるだろう。
しばらく何とかなったら次どうしたらいいのか前に進めるんじゃないだろうか。
まぁ使わなくてもいいんだよね。こういうのは。持っているだけでいい。準備してあるから大丈夫というのがいい。これらを全部入れても小さめの魔法袋は手の平に乗るぐらいの大きさだ。本当に魔法って凄い。
これらを領民全員に1個ずつ渡せるように、戸籍の登録をしてくれた人に渡せるようにと毎日複製することにした。全部入ったまま複製できるから楽だ。複製もこれぐらいなら1日50個ぐらい軽い。
どんどん複製していって、どんどんアーヴィンさんに渡していった。
アーヴィンさんは最初驚いていたけど、「ハナ様には適いませんね。」と笑って受け取ってくださった。懐の深い方だ。
全領民の戸籍の登録には2年ちょっとかかったけど、無事に登録できた。非常袋も登録しにきた人にお年寄りも子どもでも1人1人に手渡してもらった。自分の魔法を注力できる魔道具のペンでみんな貰った袋に名前を書いてもらい、自分だけの袋になった。
入っている中身も喜ばれたけど、簡単に複製できるから忘れていたけど、5m四方の小さな袋だけど時間停止の魔法袋は超レアものだった。そうだ最初は公爵家でも1つしかなかったものね。これで商売も出来ると思った人も多かったそうだ。
領民全員に行き渡ったので『ハナ様の非常袋』と呼ばれるようになったそれは、子どもが生まれて5歳で戸籍を登録する時に新規で受け取れるようになった。わたしが亡くなっても渡し続けられるように、毎晩複製したよ。
公爵領で年間1,000人ぐらい生まれて400~500人ぐらいが5歳になると聞いている。手洗いうがい等頑張っても、まだまだ乳幼児の死亡率は高い。生まれてきてくれた子が全員健やかに成長できるといいんだけど、今後生きている限りの課題だね。
複製した12万セットぐらいを大きな魔法袋に入れているからしばらく大丈夫だ、魔法袋イン魔法袋はいけるのだ。そして袋イン袋がそのまま複製できる。本当不思議だ。わたしの魔力も増えたものだ。
毎晩複製出来るものが増えて嬉しい。ああこのスキルが大学時代にあったらなって何百回も思ったけど、もうそこは仕方がない。あの時の分まで今が幸せだからね。昔の辛かったことはもう夢のように記憶も薄い。こっちに来てから日本のこと忘れそうだ。やっぱりあまり縁がなかったからかな。
寂しかったっていうのはほんのり覚えているぐらい。とにかくがむしゃらに生きてきたからね。それにこっちに来てから、たくさんの人と縁が出来た。
みんなが、わたしを受け入れてくれている。日本にいた時のように名前だけ知っている他人とは違うのだ。それがどれだけ嬉しかったか。どれだけ幸せなのか。だからこの気持ちを少しでもいいから返したい。この世界の人たちの幸せをわたしは守りたい。
そんな思いを胸に過ごした日々を大事に生きていく。




