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ゼブランさんが卒業して領地で騎士の訓練に参加することになって、リリスさんだけ王都の学校に戻ることになった時、勇者君がリリスさんのところへ寄ってから学校へ一緒に行くと連絡が来た。勇者君にとってリリスさんはスマホを持っていて連絡の取れる唯一の友達だしね。
わたしに会いたいというのもあるそうだ。
学校に戻る2日前、勇者君に会うことになった。本当1年ぶりだね。真面目でか細いイメージだった彼は、あれ?ちょっと逞しくなったかな。体の幅が増えたね。成長期かな。身長も伸びたんじゃないかな。1年前に見たよりかさが増えたっていう感じだった。
「あ、あの、久しぶりです。立花悠翔です。ユウトと呼んで下さい。ハナさんのお陰でスマホが使えるようになったし、学校行けることになりました。お会いしたらお礼を言いたかったのです。ありがとうございました。」
声はまだ高いかもしれない。少年から青年に向かう成長過程を見ているようだ。しっかりお礼も言えるところを見たら馬鹿じゃなかったんだね。
「そっちは、もう大丈夫?辛いこととかしんどいこととかない?」
「はい。落ちてきた最初は勇者だからと剣の稽古や鍛錬ばっかりで大変でした。ご飯は日本食に似ていて助かったんですけど、体が辛くて。
誰にも弱音吐けずにいた時に北の公爵家の三男の側近の方がスマホのソーラー充電器を持っていたから無理やりお借りして、もう一度スマホの中を見ることができたら懐かしくて辛くて悲しくてどうしていいのかわからなくなっていまって。
そんな時に、いったん稽古と鍛錬は中止して、学校に行ってみたらどうかとご提案を受けて、学校行って、友達が出来て、こっちのこと勉強できて、僕、日本では親ともあまりうまくいっていなくて、学校でも真面目で地味で目立たなくて大抵1人でいたんです。こっちでは勇者で何をしても特別で、みんな受け入れてくれて親切で仲良くしてくれて、なんだか吹っ切れて楽しめているんです。
魔物がいる世界だから学校でも魔物退治の授業あるのですが、そこで少しずつ倒し方教えてもらって、休みの日はダンジョンも入って、ゲームの世界の中にいるみたいにレベルアップしていって、本当楽しいんです。自分でも不思議です。
日本の思い出が薄くなってきていて、今ここが本当の自分の世界のような気もするのです。もちろん時々寂しいっていう気持ちも出てきますが、今はリリスさんにトークルームで会話のやり取りさせてもらって、僕、女の子とそんな親しくしたことがなかったのですが、それが自然で普通でとても嬉しいのです。落ちてきて良かったなと思えるぐらいになりました。」
勇者君が一気に話すとにっこり笑った。その笑顔を見たらほっとした。こっちの世界が楽しいって思えているっていうので本当良かった。
勇者君にはわたしのスキルで日本の物が買えるというのは伝わっていて、北の公爵さんに時々我儘言って、コーラやポテトチップスや日本で読んでいた漫画の週刊誌を定期的に買ってもらっているようだ。週刊誌は勇者君が読み終わったら、公爵家の三男さんも読んでいるそうで、北でも漫画は人気になってきていると教えてもらった。
でも、漫画の導入は西の公爵家の方が進んでいるよと、心の中で少しマウントしてしまったけどね。
1年ぶりの勇者君との会合も無事終わり、仲良く勇者君とリリスさんが学校へ、戻っていった。
思ったよりこっちに馴染んでいて体も心も成長していて良かった。
ほっとしたっていうことはやっぱり勇者君のことが気になっていたんだな。こっちの世界でたった2人の日本人同士だものね。また、時々話をしようね。




