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この後、わたしの今回企画したものを、他の町や村でも再現して良いかと聞かれ、アーヴィンさんがわたしさえ良ければという話だったので、全部OKした。

ダーツの景品のお酒や、輪投げの景品の小物については、アーヴィンさんが世話役たちに、それぞれパソコン1台の使用許可を出すことにしたのだ。

パソコンは今や侯爵家、伯爵家と広げていっているものね。この流れでいけばそのうち、子爵家、男爵家となるかもしれないので、ここは先に公爵領もパソコンに慣れさせよう。町や村の世話役がどう使うのか見てみたいというのもあるようだ。


お祭りの次の日領主館の空き部屋で世話役のマイクさん、ヨハンさん、ゴランさん、ゾイドさん、マティアスさん、トマスさんが集合してパソコンの使い方の勉強だ。

検索、表計算、文書作成、音楽鑑賞、動画視聴、メールの送受信、そして通販サイト。みなさん、収穫祭でわたしがパソコンを使っているのを見ているので、初めてパソコンを見た驚きは無かったけど、


「ハナ様と同じパソコンが使えるとは!」


人畜無害そうなマイクさんが満面の笑みを浮かべ、にこにこされている。にこにこしながらもマイクさんはエリートだからパソコン操作はさくさくと進んでいる。


「落ち人様の英知がこの手に!!」


ヨハンさんがひたすらパソコンを拝んでいる。ヨハンさんの付き添いの若いお兄ちゃんがパソコンの使い方を必死で覚えているようだ。


「はぁ。凄い。凄い。凄いとしか言えない。」


ゴランさんが唸っている。豪農だけど、世話役まで選出された優秀な方だ。唸りながら操作方法を学んでいるようだ。


「これで町を発展させてやる!!」


上昇志向の強いゾイドさんは、我勝ったり!みたいな感じで恍惚状態だ。ほっておこう。


「領主様に了解を取らずに本が買えるようになるとは!」


マティアスさんが検索しまくりで、次々本を探している。スマホで良い本を見つけてはアーヴィンさんに買ってもらって届けてもらっていたらしい。勉強家なんだよね。


「よろしいんでしょうか。こんなすごいものをいただいても。ああ、パソコンが俺の手に!」


トマスさんは落ち人マニアだ。落ち人の記録が読みたいばっかりに漁師なのに日本語を覚え、読み書きが出来るようになったぐらいのマニアだ。落ち人が時々「ここにパソコンがあれば良かったのに・・」と呟いていたのを読んでいただろう。


アーヴィンさんが当初パソコンを渡すことで不正されたり悪いことに染まったりしないだろうか心配していたけど、思っていた以上に落ち人効果があるみたいで、落ち人のスキルの恩恵を受けられることがどれだけ栄誉なのか。絶対にこれは裏切ることないだろうっていうような感じにほっとする。

ゾイドさんはちょっと危ない感じだったけど、町を繁栄させるのが自分の欲より上に見えたから大丈夫だろう。


アーヴィンさんから世話役には、毎年金貨10枚は助成金として渡すことになった、日本円にして金地金価格で換算されるので650万円ぐらい。このお金で魔物除けの除虫菊の追加や、野菜や小麦の種籾の購入、各種調味料や食材、お酒やお菓子を買ってそれで町や村の特産物の開発をする許可を出された。

出来た上司だ!カッコいいアーヴィンさん。

スマホだけでも感謝していたのに、パソコンまで。世話役たちはアーヴィンさんからの信頼に対して忠誠を返そうと心に誓ったっぽい。目がうるうるしている。

6人の世話役とアーヴィンさんが言葉もなく見つめ合っている。

美しい情景なのかもしれないけど、そっとしておこう。


プリンタや周辺機器、ソーラー発電機などもセットして魔法袋に入れていく。接続も1回教えたからね。でも念のため設置方法の載っている本や表計算のわかりやすいおすすめ本も入れておくね。いざ何でも買えるとなっても、何を買っていいのかわからなくなるのが一度は通る道だ。頑張ってね。


パソコンの入っている魔法袋を大事に抱えて、祭りの屋台の収入も大事に抱えて世話役たちがそれぞれの町と村に帰っていった。また収穫祭に遊びに行くから!!


「「「「「「はい!ハナ様お待ちしています!!」」」」」」


南と西に分かれて馬車はそれぞれの町と村に帰っていく。お祭りは終わってしまった。少し寂しい気持ちを抱きながら、お見送りの後で、アーヴィンさんと領主家ご家族とまだまだ見ごろの桜を一緒に見に行く。てくてくと馬車道の横の遊歩道を歩く。ソメイヨシノはちらほら散りかけだ。八重桜はこれから次々と咲いていくだろう。


「ハナ様、綺麗ですね。これが日本の桜ですか。」


見上げるほどもないひょろひょろの枝に必死で花をつけた健気な様子が愛おしく感じる。


「ええ、アーヴィンさん日本の桜です。出来れば次の落ち人が来るまでこの地に桜を維持してもらえると嬉しいです。たくさんの苗の入った魔法袋は公爵家の庭師に預けています。ナナシーノさんとも協力して毎年200本ずつ増やしていきたいと思っています。来年も再来年も一緒に桜を見ましょう。」


「ええ、ハナ様ぜひ毎年一緒に見ましょう。領民たちが、祭りが終ってからも桜を見に来ているようですよ。今後どんどん増えていったら見事になるでしょう。今から楽しみですね。」


「ハナ様、似た木はありましたが、ここまで見事なものは見たことがありませんでした。桜って美しいですね。」


「ほんと、根付いてくれて感謝しています。桜は日本の心です。この桜があればこれから落ちてくる落ち人たちも心が慰められるんじゃないかと思うのです。桜の管理は難しいのですが、こっちの世界、魔法があるのでなんとかなると思います。これからもよろしくお願いします!」


「一緒に大事にしていきましょう。」


1年目ひょろひょろの桜の木も、10年もすれば大木になるだろう。20年、30年後もこうして花見が出来ますように。青空の広がる少し肌寒い春の日、久しぶりに日本に思いだした。来年は桜餅も作ってみようかな。




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