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領主館へ戻る時、行く時はテンション高くて気が付かなかったけど、馬車の道すがらは両端何も無い。街から領主館まで何も無いのは馬車が横から狙われたらダメだからだろうか。見晴らしは良い。
何もないところのどこかに桜の木を植えたいなと思った。
わたしがこっちの来た初日、日本食が出て本当に嬉しかった。過去の落ち人たちの恩恵だ。じゃ、わたしが次の世代の落ち人に何を残せるのかといえば、インターネットに繋がっている今、日本にあるものを未来の落ち人の彼、彼女たちが懐かしいと思えるものを残してあげたいな。
街から領主館までの間で桜並木を作りたい。
もちろん、人が潜んで馬車が狙われてしまわないようなところを確認してからだけどね。
わたし自身もこの地で生きていくことになるのであれば、毎年桜を見たい。地に足をつけるって、ここで生きていくっていう覚悟が桜かもしれない。アーヴィンさんに、植えていいか聞いてみよう。
領都から戻ったらアーヴィンさんが迎えてくれ少し応接間でお話することにした。
「ハナ様、領都は如何でしたか。」
紅茶を飲みながらゆったり会話をするのは好きだ。特にイケオジが一緒だと嬉しくなる。日本にいた時はこんなに自分がイケオジに心奪われるとは思ってもいなかったわ。
「とても楽しかったです。お話で聞いていたより活気があって、人々も元気そうでした。後、落ち人効果も見てきました。」
「それは良かった。落ち人様のお陰で領都に活気があるのは嬉しいことです。」
にこにこされるアーヴィンさんに、
「アーヴィンさん、領都から領主館へ帰る時に、道沿いになにもなかったので、少し寂しかったのですが、領主館と道沿いのどこか邪魔にならないところに、桜を植えてもいいでしょうか。」
「桜とは、淡い白い花の咲く木のことでしょうか。落ち人様の記録に時々出てくる日本の懐かしい花のことですね。構いませんよ。前庭から東側に植えても大丈夫です。わたしも落ち人様が懐かしいと思われる桜の花を見てみたいです。」
アーヴィンさんを始め、落ち人の記録を隅から隅まで読んでいる人って多いのだろうか。桜のこともご存じだと思っていなかったけど、許可していただいてかなり嬉しい。
大阪の某所の通り抜けのような感じにしたい。何百本も違う品種の八重桜を植えたい。ああ、吉野の山のように小高い丘を桜で埋め尽くしてもいいかも。少し悩もう。




