第18章 『静まり返った家 』(2)
どうにか服を整え、慌ただしく家を出る準備をした。
一階へ降りると、リビングのテーブルの上に温められた朝食が置かれていた。麗華が用意してくれたものだ。
昨日と同じように、そこにはメモが添えられていて、言葉の並びもほとんど同じだった。ただ最後に「ありがとう」がひと言加えられていた。
それだけではなかった。メモの隣には少しの現金が置かれていた。どうやら昨夜の食事代らしい。
眉をひそめる。
あの食事は、居候させてもらっているお礼のつもりで僕が用意したものだ。代金をもらう気などさらさらなかった。
夜に返そうと思い、金はそのままテーブルに残した。
とにかく急いで学校へ行かなければならなかった。朝食をゆっくり食べている時間はない。
それでも、麗華が僕のために食事を温めてくれたことを思うと、テーブルに置きっぱなしで出ていくのがひどく心苦しかった。
手作りかどうかなんて関係ない。疲れ切っているはずなのに、わざわざ僕のために用意してくれた──それだけで十分だった。
台所で見つけたプラスチック容器に朝食を詰め、ハンカチで丁寧に包んで弁当代わりに持って出た。
だが、学校に着いたときにはすでに八時半を過ぎていた。
それでも幸運なことに、校門はまだ閉まっておらず、授業も始まっていなかった。
──運が良かった。
もっとも、その時の僕は知らなかったのだが、その日は奨学生たちの「交流日」だった。
鳳星学園は私立校だが、校長の尽力によって公立の優秀な生徒を対象とした奨学制度が設けられている。
その制度による新入生たちを迎えるため、午前九時から歓迎の講演が予定されていた。つまり、遅刻ではなく、むしろ少し早く着いただけのことだった。
他の生徒たちはみんなそのことを知っていた。
もちろん、僕だけが知らなかった。友人がいない上に、ここ数日学校を休んでいたのだから無理もない。
まさか、この日が僕にとって大きな問題の始まりになるとは夢にも思わなかった。
奨学生の受け入れが原因ではない。
この日を境に、いくつもの出来事が連鎖し──やがて僕は鳳星学園を停学処分になるのだった。




