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第8章 『 起きて待たないで 』(2)

麗華の視点


何を言えばいいのか、まるでわからなかった。


頭の中はぐちゃぐちゃで、罪悪感と気まずさと、そして自分への苛立ちでいっぱいだった。


少し、考える時間が必要だった。


ピザをテーブルに置き、できるだけ穏やかな声で言った。


「少し出かけてくるわ。食べて。それに、心配しないで。あなたのことを迷惑だなんて思ってない。」


落ち着いてから、どうするか考えよう。


海斗は一瞬ぽかんとしたまま動かなかったが、

私が視線を向けると、その瞳がわずかに揺れた。


まっすぐ見られるのが苦手なのだろう。


それでも彼は、勇気を出して口を開いた。


「ど、どこへ行くんですか?」


ためらいがちな声。


正直、私自身もどこへ行くのか決めていなかった。

ただ、少し頭を冷やしたかっただけだ。


「気にしないで。」


そう答えるしかなかった。


彼はまだ何か言いたげに唇を開き、そして閉じた。

言葉を探すように視線を泳がせ、やがて絞り出すように言った。


「話が……したいです。」


――ごめんね。

今の私じゃ、何を言っても空回りするだけ。


私は曖昧な言い訳を口にしながら、鍵を手に取って立ち上がった。


「海斗さん。」


名前を呼ぶのに少し迷いがあった。

それでも、振り返って彼の目を見て言った。


「起きて待たないで。」


それだけ言い残し、リビングを出た。


少しでも冷静になりたかった。

そして、今の自分を「馬鹿な大人」から、ちゃんとした大人に戻したかった。

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