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苦いものには甘いもの

空き時間に急いで書いているので,おかしい点もあると思いますが温かな目で見ていただけると嬉しいです。

「報告は以上です。…そちらの方はどうでしたか?」

「ああ、悪くは無いが…このままだとまずいな」

日が暮れた天幕の中、私は父に今日の報告を行った。殿下が直下2メートルの穴を開けてきた件を言うか言うまいか迷ったがやめた。さしたる問題は無い。

それよりも父の発言が気になったため続きを促す。

「何故です?」

「お前も上位の魔法使いがいると言っただろう?」

「ええ」

今日一日見て確信は得ている。こちらの魔法使いは殿下一人であるが十分に対応できているはずだ。

「恐らくだが…あちらの陣営にはあちらに王子が参戦している」

「………」

戦場に両軍の王族が揃っている…ということは、実質的にこの戦争の決着がついてしまうということだ。

そもそもこの戦争は8割型相手方に非がある。

平和協定は結んでいなかったが隣国として互いに過干渉を避けていたのを、今代の敵国の王が壊したのだ。

野心の強いらしい敵国の王がこちら側の警告を無視し領土侵犯を行い、そのまま戦争まで発展してしまった。ここまでゴタゴタなためどこかで折り合いをつけなければいけない。

「なるほど…だから私は護衛役なんですね」

「ああ、絶対に気を抜くな」

もちろんです。と頷き、周りの人達に挨拶をして私は軍議用の天幕を出た。




天幕の外には小さなテントが幾つも建っていて、その周りで兵たちが休憩している。中には火の番や、警戒のために外にそのまま寝る者も多い。

そんな兵たちの間をすり抜け自分のテントの方へ歩いていった。

「…?」

途中ちらっと白髪が視界をよぎった気がした。

(そういえばかなり疲れているようだったな)

魔力切れとはいかないものの、1度に多く使いすぎて気分が悪いのだろう。恐らく天幕内で回復薬を飲むつもりだろうが…最上級のものが用意されたいたとして、乱用すると副作用も出るし効き目も薄くなる。

(それにアレ苦いんだよね…)

控えめに言って不味い。苦いのが得意な私でもそうなのだ。殿下は甘党らしいと小耳に挟んだので感じる苦みも倍増だろう。

「………」

私は一瞬立ち止まってから歩みを速くした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「殿下」

「……!!」

驚かさないように声をかけたつもりだったのだが…逆効果だったろうか。

「…なんだ」

少しいつもと違ったジト目で睨まれた。私は笑顔を添えて片手に持っていた皿を見せる。

「ベリー…か?」

「多分そうですね」

怪訝な表情をした殿下に肩を竦める。

「私も何かは存じ上げないのですが、味は保証します。小さい頃よく食べていたので」

本当に懐かしい。昔よく連れ出された森に生えていたの木の実で、ピンクの可愛らしい見た目をしている上味も美味しい。

「あ、安全も保証します。私が摘んできましたし、毒見もしましたよ」

なおも渋っている様子の殿下にそう付け足す。

私はチラリと殿下の机に置いてある回復薬を見た。まだ中が入っているので飲んでいないはずだ。

「…どうして持ってきたんだ?」

呟きとも問いかけにも捉えられる言葉。心底不思議そうな声だ。

「…いえ、回復役を飲まれると思ったので…これを食べると苦みが引くんです」

「本当か…!」

瞬間、バッと顔を上げた殿下の目が合った。思わず瞬きをしてその瞳をじっと見た。

「いや、その…」

殿下が恥ずかしそうに顔をそらした。雪みたいに白い肌なので紅潮するとよく映える。

(照れてる…?)

不機嫌そうな顔以外というか、年相応らしい表情を初めてみたので意外に思った。

「殿下は甘党と聞いたので」

「そうか…ありがとう」

「……!?」

殿下が感謝?それこそ初めてじゃないか?

考えていたことがバレバレだったのかまたジト目で見られる。

私は誤魔化すような笑顔を貼り付けて皿を殿下の机に置いた。

「では、失礼します殿下。いい夜を」

「ああ」


天幕を出るとちょうど三日月が雲間から顔を出していた。

(なんというか臆病な猫がやっと懐いてくれたみたいな感覚だな)

そうふと思って、また失礼なことを考えていると悟られぬように足早に自分のテントへと帰った。

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