表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

出発の日


月日が流れるのは早いもので、晩餐の日から一ヶ月が経った。やるべき準備は終わらした。後は出発するだけ。

「お父さんの言うことを聞くのよ」

「わかってます」

「健康には気をつけて…ケガは…出来るだけしないで頂戴」

「はい…」

戦場で健康など気を遣っていられるか分からないし、ケガだってするものだろう。母だってそれは分かっている。けれど心配するのが親心というものか。

そんな心配そうな顔をされると上手く目を合わせられない。


「「お姉ちゃん」」

双子が差し出したのは刺繍入りのハンカチだ。シルビアはミモザの刺繍、シルエルはカエルの刺繍だ。どちらも二人らしい。

「ありがとう」

双子は泣きそうな顔でにこりと微笑んだ。

「お、姉ちゃん」

ユウエスもおずおずと何かを差し出した。

赤いリボンに銀糸の刺繍がしてあるキレイなリボンだ。弟にしてはセンスの良い贈り物に思わずびっくりする。

「かわいいじゃない」

「ルビー姉ちゃんが選ぶの手伝ってくれて…」

「ありがとね」

なおも後ろめたそうな弟の頭をなでる。

「行ってくる」

「うん…」

泣き出してしまった。仕方のないやつだ。

「気をつけてね」

「はい、ママ。帰ったらオムライス作ってください」

母も泣きそうに顔を歪めた。

やはり申し訳なさが勝ってしまう。ぎゅっと母に抱きつく。

私は小柄でまだ母より小さい。

双子も弟も抱きついてきた。そのままみんなでハグをする。


「フィリア」

父がやって来た。どうやら本当のお別れの時間らしい。

「大丈夫。私がいるのだから」

父が母に声を掛ける。母はコクリと頷くと私から離れた。


「…行ってきます」


馬車から屋敷が見える間中ずっと母たちは手を降ってくれていた。

(いよいよか…)

私は一つゆっくりと深呼吸をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ