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急ですね…(ランヴァルト視点)

読んでくださてありがとうございます!!

「陛下、ランヴァルトです」

扉をノックし、返事が聞こえたため中に入る。

「ああ、おはようランヴァルト。昨夜はきちんと眠れたかい?」

「ええ」

昨夜、父からの言伝があった。その言伝に従い父の執務室にやってきたところだ。

「今日お前を呼んだのは、頼みたいことがあるからだ」

「何でしょうか」

まだ俺に任されている公務は少ない。それに今日は兄たちが揃って学園の入学式に参加するため不在だ。

「…手紙を渡してほしいんだ」

すっと差し出されたのは二通の手紙。皇家の印璽がついていることからかなり重要な内容なのかもしれない。

「誰にですか…?」

「…まあ、お前にも手紙を書いといたからね。馬車の中ででも確認しなさい」

「え…?」

「もう用意してあるから」

すでに決定事項と言わんばかりの態度に唖然とする。それに馬車まで…。

(…!。だから朝食の後でと言ったのか!!)

支度はもうすべて終わった後だ。

「いってらっしゃい。ランヴァルト」

「…はい」

父がニッコリと人畜無害そうな笑顔を浮かべる。しかしそれは上辺だけ。実際は有無を言わさぬような底知れぬ圧を感じる。

圧に屈した俺は、大人しく頷くことにした。



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用意してあった馬車に乗り込み早速手紙を開封することにした。

『単刀直入に言おう。君に護衛をつけようと思うんだ。私の信頼する子だから安心して。今日はその子に手紙を渡してほしいんだ。詳しいことはユヴェリアスにきいてくれ』

思わず裏面の方も確認してしまった。あまりにも短すぎる。あの人は本当に手伝わせる気があるのだろうか。

「はあ」

ため息が出てしまうのも仕方がない。

取り敢えずユヴェリアスさんに事情を聞く必要がある。ならばガレディアス領にでも行くのかと思ったが…よく見慣れたこの景色‐きっと学園に向かっている。



あの終戦以来幾度となくユヴェリアスさんは力になってくれている。もともとガレディアス家は家柄的にも皇家に近いということもあるのだろう。


ガレディアス家特有の青の髪に赤い瞳。側に居てもらえるだけで心強く感じた。それはきっとユウエスのことを彷彿とさせるからだ。

自分からユヴェリアスさんにユウエスのことを訊くことは無かったが、一年に一度、建国祭の日にプレゼントとともに手紙を送り合っている。


…あの日の誓いが違うことはないと確信している。だがただ待っているだけというのも性に合わなかった。

ユウエスはきっと驚くほど成長しているだろう。その時に自分も出来るだけ近くに立っていたい、そう決意してからは剣術も魔法も輪にかけて鍛えてきた。

自衛の術だって身につけた。だからこそ護衛はいらないと言ったのに。


第四騎士団の人たちもあの時の戦争で縁がある人が多い。今までと比べれば苦では無かったものの、やはり人と接するのは苦手だ。四六時中気配がするのにも慣れない。

「はあ…」

二度目のため息をついた。窓の方を見遣れば学園が見えてきている。


「殿下、到着いたしました」

学園の門の前、と言ってももうここは学園の敷地内だ。

御者が扉を開ける。ついてこなくていいと言い聞かせてから馬車を離れる。事前に申告があったのだろう。

特に待つこともなくユヴェリアスさんの元へ案内された。


「やあ、ランヴァルト君。久しぶりだね」

「こんにちはユヴェリアスさん」

にこりと微笑んだユヴェリアスさん。やはり過ごしてきた時間が長いせいか父の笑顔とそっくりだ。

「用件は聞いてるかい?」

「…新しい護衛をつけるとだけ」

「ああ。今年次女と三女が入学するんだけどね、一緒に長女の乳兄弟の子も入ったんだよ。両親とも家で働いていてね。その子の姉もこの学園の出なんだ」

「そうですか。おめでとうございます」

長女は学園には通っていないはず。乳兄弟となれば同い年であることが多いとは思うが・・・。


「その子だよ。ランヴァルト君の新しい護衛」

「…!?」

どういうことだ?確かにガレディアスは武術に長けた家だ。そこに仕えるものの多くもきっと並でない。

「学園にいる間だけでもどうだい?ガレディアス流剣術皆伝も言い渡されてるし、性格的にも護衛としては申し分ない子だ」

「……」

「一度会ってごらん。陛下からの手紙も預かっているだろう?」

そうだった。…ガレディアス家に縁があるものなら信用は出来る。会ってみるくらいはいいだろう。


「分かりました。…入学式の後に会ってみます」

「…?。ああ、あの子は君と同い年だよ。編入生として入るんだ。今日は学園長が案内をしてくれるそうだから学園にも来ているよ。きっとこの下の階の応接室じゃないかな。あの子も入学式が終わるまで暇だろうから相手をしてやってくれ」

「はあ」

思わず間の抜けた返事になった。


「それじゃあ、また」

言うだけ言って立ち上がり部屋を出ようとしたユヴェリアスさんを呼び止める。

「ちょっとまってください」

「どうしたんだい?」

「…名前も、特徴も伺ってないんですが」

わずかばかり目を見開いて驚いた表情のユヴェリアスさん。

…父かユヴェリアスさんか…どっちだろうか、伝え忘れたのは。八割の確率で父ではあろうが。

「…そうだね。伝え忘れていたよ」

二割の方だった。いや父は父でわざと伝えていないという可能性もある。


()()はフィリア・ジェンベル。金髪に琥珀の瞳をした女の子だよ」

「え…」

「あ、あと木登りが好きだよ」

さほど必要では無さそうな情報を最後にユヴェリアスさんは部屋を去っていった。


(彼女…?)

護衛なのだからきっと男なのだろうと思いこんでいた。

「……」

悩んでいても仕方がない。

ひとまず手紙は渡さないといけないのだ。

「はあ…」

また一つため息がこぼれ出た。

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