殿下の護衛(仮)
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「…私が殿下の護衛をするという認識で大丈夫でしょうか」
「いや、あくまでも提案の範囲だ。皇帝陛下のな」
「……」
殿下はこの提案を受けるつもりは無さそうだ。最近思いついたということは、してもしなくても問題はないということ。
…個人としては受けたいと思う。皇帝陛下もそのつもりだろう。だからこそ説得を頼んだのだ。
「…?。あの、殿下の護衛の方は他にもいらっしゃるんですよね?」
「…いない」
ふいっと顔を背けながら殿下が言う。
いない?そんなことあり得るのか…と言いたいところだが一度も護衛らしき気配は感じていない。
確か暫定的に殿下の護衛は第四騎士団が担当することになったと聞いたのだが…。
職務怠慢か?…いやそんなことは起こらないだろう。皇帝陛下も見逃さないだろうし、第四騎士団の団長はあのカルダンだ。殿下を害することはないと思う。
「勘違いするな。俺がいらないと陛下に直訴したんだ」
「そうですか」
確かに自衛の術は身につけているようだ。しかしここが戦場じゃないからと言って安全な訳ではない。
「殿下はいつこのことを知らされましたか?」
「今朝だ」
「なるほど…ちなみにどの程度お聞きになっていますか?答えられる範囲で大丈夫です」
「…お前が護衛役としては申し分ないから、是非にと辺境伯が言っていた」
父は今回の件にだいぶ加担しているようだな。
「辺境伯からですか…」
「ああ。どうやら娘が入学するらしいな。お前もそのために編入したんじゃないのか?」
「いえ。私は援助はしてもらいましたが、そういう意図で入ったわけではないです」
「そうか」
殿下は当てでも外れたかのような顔をした。
「私は将来、ガレディアス家に仕えるわけではありませんから」
私は学園ではフィリア・ジェンベルとして動かなけれなならないだろう。それがたとえ殿下の前だったとしてもだ。陛下が殿下に伝えていないということはそういうことだ。
まだ本当のことは話せない。けれど私の信念は変わらない。
「殿下、私に貴方の護衛をさせてください」
私は真っ直ぐ殿下の瞳を見る。
殿下はたじろぐこと無くこちらを見据えた。
「何故だ?」
「…非常に名誉なことですから」
「白髪の皇子でも?」
「貴方だからです」
フィリアとして伝えられることにはまだ限りがある。それでも折れるわけにはいかない。
「3年前、戦争から帰ってきた者たちは皆殿下のことを称賛していました。魔法の才だけでなく、そのお人柄をです。私が幼少期から側にいる信頼出来る人たちが、殿下を信頼していた。それだけで十分私が殿下に仕える理由になります。御恩を私も返したいのです」
あの戦争のあと、私は実際兵たちがそう言っているのをよく耳にした。ガレディアス家のものも大半が感化され、いざとなれば殿下の味方につくことを厭わないだろう。
チラリと殿下の表情を伺う。
やはり断られるだろうか…。
「…分かった」
「っ…!」
「ただし妥協案だ。猶予をやる。今学期中に俺を納得させてみろ」
「ありがとうございます」
私は思わず込めていた肩の力を抜く。ふっと自然に笑みがこぼれた。
なぜだかまた殿下が驚いたような顔をした気がした。
「…もうすぐ入学式も終わるだろうから、学園長が案内をしにやってくるだろう」
「殿下はどうするんですか?」
「王城に帰る。もともと今日は来ないはずだったからな」
…今日は新入生以外は原則いないはずだから、殿下は皇族として式に参加しに来たのだろうと、最初は考えていたが合点がいった。もともと参加する予定では無かったのだ。
「…?。では、どうして?」
「お前にその手紙を渡すように言われたんだ。わざわざどうしてとも思ったが顔合わせさせるつもりだったんだろう」
「…そうですね」
多分おおかたそれで間違いはないのだろうが、ちょっとしたいたずら心でもあるのだろう。主に私に対するものだが。
陛下は私が殿下に忠誠を誓ったことを把握していた。だからこその判断でもあるのだろう。今回の提案は。
これからどう転ぶかはまだ分からないが、私は私の信念を貫くために出来ることを成し遂げていこう。




