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皇帝陛下

1週間後…

私は父とともに王城へ来ていた。


「二人とも面を上げよ」

「「はっ」」

すっと頭を上げた先の玉座には優しそうな顔をした皇帝陛下がいた。

「久しいな()()()()()()()よ」

「はい。陛下もお元気そうで良かったです」

父は陛下に打診したらしい。まあ、そもそもガレディアス家の誓約の根幹は王に対する絶対的な忠誠だ。その点においては忠臣らしい行動だろう。

しかし陛下が許してくださらなかったらどうしたのだろうか。思慮深く慈悲のある御方だ。今回弟を戦場に立たせようとしたのには明確な意図があったはず。

・・・許可は出たっぽいしこれ以上考えるのは無駄か。

陛下はニコニコと紫の瞳を薄めてこちらを見ている。

今の私は軍服を着ていて、髪の長さも肩につくくらいにして一つにくくっている。他人が見れば私と弟の区別はつきづらいだろう。なんなら双子の妹たちよりも私達のほうが双子のようだ。

よくよく考えれば、陛下には遅かれ早かれ気づかれていただろう。これでも割と世話になっている。はじめから陛下を欺くなんて無理な話だった。

「戦場はお主が思っているよりも過酷だ。無事に帰って来なさい」

「はい!ありがとうございます」

陛下は私にとって第二の父のような存在。もちろん心配はかけられない。

私は元気よく返事を返し、父とともに謁見室を後にした。



「ああ、そうだ。言い忘れていた」

帰りの馬車で父がそう言う。こういう言い方をするときは大抵わざとだ。なんらかに対する意趣返しか、はたまた言いにくいことなのか。

「今回の総指揮は第三皇子が執るらしい」

「えっ!?」

事も無さげに笑う父を見て確信する。これは絶対意趣返しの方だと。

(なんてムカつく笑顔なんだ…)

ユースフィリアは知らない。最近父以外の家族がユースフィリアの作り笑顔が父親に似てきていると言っているのを。


ユースフィリアは窓の外を見てぼんやりと考える。


この国の第三皇子…名前は思い出せないがその容姿だけは知っている。

彫刻のように整った顔と、陛下と同じ紫の瞳。そして帝国で忌避される白髪を持つということを。

(実際に会ったことは無いが…そんな美人なら会って損はない)

ユースフィリアはのんきにそんなことを考えた。

(それに前から会ってみたいと思ってたし)

彼は類稀な魔法の才を持っている。これは逆に帝国で重宝されるものだ。魔力を持っていると分かった者は例外なく帝国直属の機関で保護され育成される。

数が少ないことと、大きな戦力となるからだ。

巷では死ぬまで酷使されるのなんだのという噂もある。それは保護された殆どが国から出ることをしないし、出た極少数の者はすぐ死んでしまっていることからだろう。

私は陛下を尊敬しているし、会ったことのある魔法使いは皆いい人たちばかりで苦労している風もなかった。


(そもそもまずは目先のことから手を付けなくちゃ)

私は思わずため息をついていしまった。

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