秘話① 見えざる哀しみ
お久しぶりです!
読んでくださってありがとうございます!!
「少しいいですか?」
私は暗闇に向かって声をかける。返事は無いが確かに気配を感じるのでここにいるはずだ。
「シャルシャスさんに許可も取りました」
「…何の用だ?」
途端に天幕内が明るくなりアグレイが姿を現した。
「…今回の襲撃の件、あなたはどう捉えていますか?」
「…僕の憶測で構わないのであれば話そう。まずは、そこにでも座ってくれ…でないと話しにくい」
私は頷き椅子に腰掛ける。
「…今回の襲撃は一種の口実づくりのようなものだろう」
「……」
「今回僕が連れてきたのは忠臣たちだと言ったが…中には兄上たちの手駒も紛れているだろう。僕の立場を一層悪くするためか、手柄が欲しかったかは定かじゃないが、今まで様子見をしていた半ば好意的な貴族も鞍替えをするために加担しただろうな」
「なるほど…ではそこに殿下の暗殺まで加わることはあると思いますか?」
「…そこまでの危険を冒す馬鹿はいないと思うが…まあ、十中八九兄上たちの差し金だろう」
「…そうですか」
あの襲撃にはいくつかの思惑が重なっていたとして…利害が一致したもの同士が襲撃を企て、その騒ぎに隠れるようにして殿下の暗殺を遂行しようとしたとするのなら敵が少人数であったことにも納得する。
「もう用は済んだか?」
すぐに帰れとでも言わんばかりにアグレイが催促する。
「…最後に一つだけ」
「なんだ…」
私は一つ息を吸い真っ直ぐアグレイを見た。
「ローレン・レビノス…彼をご存知ですか?」
瞬間アグレイが息を呑んだのが分かった。いままでの投げやりな態度が一変し、表情が強張っている。
「…ああ」
自分でもあからさまに動揺してしまったと悟ったのだろう。アグレイは短く肯定の意を示した。そして硬い声で続けた。
「どうしてそんなことを訊く?」
「…彼が殿下暗殺の実行者だからです」
「…そうか」
アグレイはまた一言短く返した。
「……」
「では私はこれで」
私は黙ってしまったアグレイに背を向け天幕の入口へと向かう。
「君が殺したのか…」
アグレイの呟きに思わず足を止める。
問いかけた訳では無いだろう。だから私の返答もいらないもの。
だけど私はアグレイの瞳を見据えて言った。
「そうです」
そのままろくに反応も見ず天幕を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(*アグレイ視点)
一人残されたアグレイはまた天幕内を暗くする。
できる限り外界と遮断された静かな環境が欲しかったのだ。
「…馬鹿なやつだ」
思わず呟いた言葉と頬を伝う涙。
(また一人友を亡くしてしまったか…)
ローレンは気兼ね無く接することの出来る数少ない同年代の一人だった。
きっと僕達の間を結んでいたのも忠義ではなく友情だったのだろう。
(…あの子も泣いているだろう)
アグレイは溢れる涙を拭い漠然とそんなことを考えた。
「…ああ、そうか」
ローレンはランヴァルトを気に入っているようだった。騙しているのが心苦しいと言うほどに。そんなローレンが自ら今回の戦争に参加すると言ったのだ。
「…脅されていたのか」
僕がこの戦争で勝っていれば…僕に力があればローレンは違う選択を取れただろう。
僕を裏切るという選択も取れたのにそうはせず、自らを犠牲にし妹を守ろうとしたのだ。
自身の不甲斐なさにまた涙が溢れる。
ローレンがどんなことを思い死んでいったのか…それを考えるだけで胸が痛む。
(だが…)
ふと天幕を出る前、ローレンを殺したのが自分だとはっきりと肯定したユウエスの表情を思い出す。
(青色の髪に赤い瞳…彼女が恐らく…)
「アグレイ…変わりはありませんか?」
「はい」
アグレイの思考は戻ってきたシャルシャスによってそこで途切れた。
闇の中で静かに目を閉じ、アグレイは友の冥福を祈った。
番外編はたまに更新しますが、新章は更新までにまだ時間がかかります(;^ω^)
…恐らく数カ月ほど。
頑張ります…(ヽ´ω`)
ぜひ、他の作品も読んでみてください!!




