表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/41

誓い

本日2度目の投稿です。前話読んでないよって方はお気をつけください。


読んでくださってありがとうございます!!

《過去編》本編完結です!。:゜(;´∩`;)゜:。

あれから軍内はとても慌ただしかった。

夜襲の鎮静化を図り終えたのに、殿下が居なくなっているものだから騒ぎになったらしい。

帰った後も内部深くに間諜が紛れて居るのではという疑心の中、どうにか二日で王都に帰る目処が立った。


私はいつかの小高い丘に居た。

直ぐ側では殿下がもの憂げに、遠くで帰りの準備をしている兵たちを眺めていた。

「……」

「……」

先程から会話が続かない。暫くの間静かなまま時間が過ぎる。

ふと殿下が口を開いた。

「…そう言えばどうやって魔力を消してたんだ?」

「ああ、これのおかげです」

そう言って私は普段は見えないように首元にさげていたペンダントを外した。それを受け取った殿下がペンダントトップについている瑠璃色の宝石を空に透かす。

「これは…守護石か」

「はい」

守護石−守護石が主と認めた者の意思で他者から主への干渉を妨害するもの。所有者の姿、魔力、所持品など様々なものを隠すことができる。その力の程度は所有者の魔力に左右される。

エルフの加護がかかった宝石や石だとされかなり価値が高く希少な物だ。

「…王宮には来ないのか」

じっと守護石を見つめていた殿下が呟くようにそう言った。

恐らく私が魔法使いであるのに野放しにされているからであろう。

私はスッと一度視線を斜め下に逸らす。

「ええ…するべきことがありますから」

守護石から透過した光が殿下の瞳に青を降らす。まるで隠しきれない哀しみが滲み出たように。

私も殿下も癒えない傷がずっとジクジクと痛んでいる。忘れるなとでも言うようにずっと。


−信念を持て


 もしかするとこの言葉は贖罪のつもりだったのだろうか。切りきれない情から来る情けだったのだろうか。

 どういった思いを込めてこの言葉をかけたのか。はたまた特別な意味など無いのか。

…何にせよその答えを知る術はもう無い。


(私がすべきこと…)


「殿下…」

私に呼ばれ殿下がこちらを見る。私はその瞳を真っ直ぐ見つめた。

「…戻ってきます、必ず…今より強くなって」

「…俺の周りは危険だぞ」

「百も承知です」

「…賭け合うのは命だ…」

「分かっています」

私の返答に殿下が目を伏せ、軽く唇を噛む。

「…信じていいか…?」

「ええ…もちろんです。私は…」

私はそこまで言って一旦言葉を切った。そして殿下の前で片膝を付き頭を垂れた。

「主よ、貴方への忠誠を誓わせてください」

そう言った私に殿下が驚き息を呑んだのが分かった。この口上は騎士が主君に絶対の忠誠を誓う時に使うものだ。しばらく逡巡するような間が流れ殿下が口を開く。

「…騎士よ、汝の忠誠は誰が為に誓うか」

「我が忠誠は貴方のために」

小さく呼吸を整え殿下が続ける。

「汝の剣は誰が為の武器だ」

「我が剣は貴方の武器」

次第に確かな熱がこもっていく。

「汝の命は誰が為の盾か」

「我が命は貴方の盾」

すっと顔を上げ殿下を見る。視線が噛み合い殿下が口を開く。

「汝、我に忠誠を誓え」

「我…」

一瞬言葉を切り言い直す。

「…我が忠誠を、主ランヴァルト・フォン・ユ−ジェーンに誓う」

しばらくの余韻を残して私は立ち上がる。

「最後、口上と少し違ったんじゃないか」

少し不服そうに殿下が言う。最後の口上のところは騎士の名も入れなければならないのだ。

「…アコレードもしていませんし…それに何と言うかこれは戒めというか、心の支えにしたかったというか…」

あれこれ言ってみるが纏まらない。なのではっきりとこれだけは口にする。

「ですので、私が戻ってきたらその時また、最後まで忠誠を誓わせてください」

言うべきはずの自分の名…しかしそれを言うことが出来るのは私がユースフィリアとして殿下に忠誠を誓うときだ。

「絶対に戻ってくるという意思を示すための予約です…予約ですが殿下に対する忠誠は変わりません」

真っ直ぐ殿下の瞳を見据える。殿下は何かを考え込むように口を噤む。

「…ユウエス、お前()()()()を持っていたよな」

「はい」

「貸してみろ」

 私は懐から短刀を取り出す。…ローレンに突き刺したあの短刀だ。

 古い時代の騎士は皆騎士の証である短刀を持っていた。その柄にはめた石は誰に忠誠を誓ったか示すもので、我が家では今もなおその伝統が残っている。

それは皇家も同じだ。皇族は一生涯に一度だけ自らの騎士−皇族騎士(ロイヤルナイト)を選ぶ。

 

 殿下がさげていたペンダントから淡く光を放つ紫色の宝石を取る。それを騎士の証の柄にはめた瞬間、呼応するように短刀も淡く光った。不思議で温かな感覚だ。

「…お前がどこにいたとしても俺の騎士であることは変わらない。…必ず戻ってこい、命令だ」

短刀を私の目の前に突き出した殿下の瞳は微かに揺れていた。

「ええ、必ずまた貴方のもとに戻ってきます」

私はゆっくりと微笑み、強く言い切った。


初春の柔らかな風が二人を包むように吹き、空へ舞い上がっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ