懐刀
遅くなってすみません!!
いつもより少しだけ…本当に少しだけ長くしてあります(╹▽╹)
読んでくださってありがとうございます!
「殿下!!無事ですか!?」
私は殿下に駆け寄る。
あたりには怒号と剣の交じり合う鋭い音が聞こえる。
「ああ…それにしても派手にしてくれるな」
私はそれに頷きつつ辺りを警戒する。
夜、人けが一番少ない時に捕虜や敗残兵が夜襲をかけてきた。まれに爆発音もする。
(見張りも居たはずなのに…どういうこと?)
横から迫ってきた剣を弾く。そのまま剣圧で敵兵を吹き飛ばす。
(今、悩んでる暇は無い…取り敢えず殿下を安全な場所に…)
「殿下!走りましょう」
「分かった」
乱戦の中を駆け抜ける。殿下は今魔法が使えない。剣の心得はあるだろうが心許ないのも事実。
「っ…!」
敵兵の数が多くなってきた。まだ捌き切れるがそれも時間の問題だろう。数が多いために一人一人に負わせる傷は浅いものになる。
「っ殿下!!」
唐突な魔力の気配に嫌な予感がし殿下の肩を掴む。
瞬間、景色が変わり私たちは地面に投げ出された。雪のおかげで痛くはない。
「転移か…」
「おそらくそうかと」
周りは緩やかな高低差のある雪原が広がっている。まれに枯木が立っている他には、明らかに味方でない者たちが周囲を囲みに来ている意外特筆すべき点はない。
「話している余裕はなさそうだな」
「…何もないわけないですものね」
一体どうすべきか…。刺客の数はおよそ30ほど。流石に一人では守りながら闘うことは出来ない。
「ユウエス、森の方角はあっちの方だよな」
「ええ」
遠くの風景などから方角を割り出し、殿下が小声で訊いてきた。
「…取り敢えず森まで走ろう」
「…大丈夫でしょうか?」
殿下の足の速さも気にはなるが、森で待ち伏せされている可能性もある。
「…取り敢えず森に入れば魔法の方が有利だ…中級程度の魔法なら使っても大丈夫だろうし」
「分かりました…一応ききますが剣術の心得は?」
「これでも王族だからな、近衛騎士試験を通るぐらいの腕前ならある」
意外ではあるが好都合だ。
「八割私が引き受けます」
殿下が頷く。互いに背を合わせるようにし剣を構えた。
距離を詰めてきた刺客の中でも司令塔らしき男が前に出てくる。
「ブリュノール帝国の皇子、ランヴァルトだな」
「ふんっ…そうだが?」
殿下が煽るように鼻で笑う。顔色を変えることなく男は剣を抜いた。
「…そのお命…頂戴します」
瞬間、周りの刺客たちが一斉にこちらにやってきた。
私はそれを剣圧で薙ぎ払う。吹き飛ばされた刺客の中には気を失ったものもいるだろう。
「…流石はガレディアス家…子供であってもここまでの実力があるとは」
男が呻くように声を出す。
「ですがこちらにも事情がありますので…手加減は致しません」
男の言葉に呼応するように、まだ意識のある刺客たちが先ほどよりも警戒しながら攻撃を仕掛けてくる。
様々な向きから攻撃をされるので無闇矢鱈に剣を振るうことが出来ない。下手をすれば殿下に当たってしまうからだ。
優先すべきは逃げること。致命傷は与えられずとも相手に出来るだけのダメージを与えていく。
殿下はおそらく生け捕りを命じられているのだろう。相手は殿下に対し奥手に見える。それに多数で囲んで攻撃をしないところをみる限り、この刺客たちは騎士なのだろう。
…わたしの方は多数で囲まなければ無理だと判断したのか?
(…正しい判断ね)
私は敵の隙をつくように、一瞬だけ速度を上げ周りの刺客たちをそれぞれ気絶させる。
仲間を殺されて逆上されたら撒くのが難しくなるからだ。
「くっ…!」
「っ…!殿下!」
殿下が雪に片足を取られ、劣勢に追い込まれていた。私はすぐに駆け寄り、真横から蹴りを入れて周りの刺客を蹴り飛ばす。刺客たちが呻いている中殿下に駆け寄った。
「殿下お怪我は…」
「大丈夫だ。取り敢えず軍に戻ろう」
「はい」
私達は辺りを警戒しつつ走り出した。もう真夜中であるが雲一つない空と明るい満月、そして降り積もった真っ白な雪のおかげで足元もよく見える。長く、くっきりとした影が後ろにまっすぐ伸びていた。
「っ―!」
もうすぐ森の入口だというところに差し掛かったとき、森の影に紛れるような人影がこちらに向かっているのが見えた。殿下の前に出て剣を中段に構える。
「…ユウエスか?」
「…!ローレン」
月光に照らされた人物はよく見知った顔だった。張り詰めていた空気が少し緩み剣先も無意識に下がった。
「良かった。割と近くに飛ばされていたんだな」
「ええ。転移した先で待ち伏せされていましたけど…逃げるのを優先したのでまだ追ってきているはずです」
「…殿下はまだ魔法は使えませんか?」
「ああ…まだ魔力が少ししか回復していない。魔力消費の少ないものなら大丈夫だが…転移とかは無理だ」
「なるほど…」
ローレンは何かを考え込むかのように黙る。
「…ローレン、森の中で敵の気配はありませんでしたか?」
「…大丈夫だ。来る途中で確認したけど罠の類も無かったよ」
「そうですか…それにしてもよく私たちを見つけれましたね」
私はそこまで言って何かが引っかかった。
(そうだ…どうしてこの場所だとローレンは分かった?それに…あの乱戦の中、私たちが飛ばされるのを見てたということ?)
「…いや、勘だったんだけどね」
はにかむように言うローレンの笑顔がいつもと違い異質に感じる。
(考えすぎだろうか…こんな状況だから全てが怪しく思えてくる)
「……」
「ユウエス…?」
黙り込んだ私を不思議に思ったのかローレンが首を傾げる。
「…すみません、考え事をしていて」
「…そう」
「取り敢えず急ごう。今は時間が惜しい」
殿下もローレンと合流して気が緩んだのだろうが、まだ安心出来ない状況であることを思い出しそう声を上げる。
「そうですね」
(きっと考えすぎだ…切り替えよう)
すっと意識を集中させ追手の気配を探る。
(…?追ってきていない?)
おかしい。まだ数人は動けるものも居たはずなのに。彼らの目的は殿下を捕まえることじゃないのか?
もしかして…彼らは誘導だったのか?私たちをこの森に誘き寄せる。
「っ…!!」
何か確信めいたものに近づいた瞬間、殺気を感じ反射で剣を構えた。
瞬間、剣同士がぶつかる鋭い音が響く。
「へぇ、この距離でも防いじゃうんだ」
「っ…ローレン!!」
私の叫びにローレンは薄っすらと口元に笑みを刻む。
しかしその瞳は笑ってはいなかった。




