偉大な魔法使い
読んでくださってありがとうございます!!
「シャルシャスさん、ユウエスです。殿下をお連れしました」
「どうぞお入り」
柔和な声が帰って来る。天幕の入り口の幕を上げ殿下を先に通す。
「幕は下ろしてちょうだい」
「分かりました」
中は奥になるほど薄暗く異様な雰囲気だ。
(魔法をかけてるのか…?)
「久しぶりですシャルシャスさん。お元気そうで何よりです」
「あら、ありがとう。皇子も見ない間に大きくなりましたね」
殿下が敬語を話すことに驚きはあるが違和感は無い。陛下がシャルシャスさんに対し敬語を使っていたのを見たことがあるからだろうか。
殿下は魔法を学ぶ際にお世話になったのだろう。
「…ユウエスも久しぶりですね。最近はめっきり顔を見せなくなっていたから心配してたのよ」
「すみません…今度他の皆さんにも挨拶に行こうと思います」
「そうしなさい。みんな喜びますよ」
昔と変わらない落ち着いた笑みだ。だからこそ表情が読みづらい。…一体今日は何のために呼び出されたのか。
「ほら、二人ともそこの椅子にかけなさい」
「「はい…」」
「慌ただしい時に呼び出してごめんなさいね…まずは皇子、右手を出してごらんなさい」
不思議そうな顔をしながら、言われたとおりに殿下が右手をだす。
その手を両手で包みシャルシャスさんが魔力を巡らしたのが分かった。何かを確かめるようにゆっくりと循環していく。
「やっぱりね…あなた魔力がほとんど戻っていないじゃないの」
「……」
「そう間隔を開けずに何度も魔力切れになったわね。回復が遅くなっているわ」
「すみません」
「しばらくは魔法を使わないように…。回復薬もよ。効き目が薄くなるから」
シャルシャスさんの前では殿下も一人の子どもだ。珍しく素直な態度で頷いている。
「そして、ユウエス」
スッと視線がこちらに向いたので思わず姿勢を正す。
「…感心ね。言いつけ通り魔力の読みを怠っていないようでよかったわ」
「ありがとうございます」
何か小言を言われるかと思ったがそうじゃないようだ。
「でも、やっぱりまだ未熟ね」
「?精進します」
何やら少し含みを感じた。それにまだ本題に入ってはいない。
シャルシャスさんはじっと私たちを見つめたかと思えば、スッと視線を逸らし持っていた杖で床を叩く。
老練の魔法使いがよくやるもので、予め発動している魔法の切り替えを即座にするための動作だ。
瞬間天幕の中が一気に明るくなった。その落差に目が慣れず視界が数秒ほどぼやける。
明るさに慣れ始めた瞳が捉えたものは意外なものであった。
「なんでお前がここに…」
殿下の呟きはもっともだった。
なぜならそこに居たのは黒髪に紫色の瞳を持った少年‐
敵国の第四王子アグレイ・フォン・ヴィレノースその人だった。
すみません!後付けで申し訳ないですがシャルシャスさんはユースフィリアだと分かっています。




