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実はですね

遅れてごめんなさい(´;ω;`)

読んでくださってありがとうございます!

翌日の朝、軍のほとんどが集められた。私はその様子を眺めながら天幕の中の殿下を見遣る。

「緊張しているんですか?」

いつもよりさらに不機嫌そうな顔をしている。実際は体が強張っているので緊張しているのだろうけど。

「…バカ言え」

そんな小さな声で言われても説得力が無い。


父たちはこれ以上持久戦に持ち込む必要は無いと判断し、これから総力を持って敵を潰しに行くと宣言した。

まあ、しかしそれは上層部の中だけであって正式に軍全体に宣言するのは殿下の仕事だ。


「はぁ」

私は小さくため息をつく。この皇子はいつもは誰からの視線も、陰口もどこ吹く風だというのに…今さら何が緊張するというのか。

「………」

私のため息を聞き逃さなかったのかジトッと睨まれた。

「…はぁ…いいですか?殿下、貴方は皇族です。この国で明らかに偉い。だから堂々としていればいいだけです」

「…分かってる」

 ここは戦場だ。森を越えた先には殿下を狙う敵がわんさかいる。王宮にでも籠もっていたほうがそんな敵は襲ってこれない。

 だが皮肉なことにここに居る味方は、自軍という意味でなく本当の意味での味方というのは戦場(こちら)の方が多いだろう。


白髪に対する忌避は確かに感じる。中には明らかな嫌悪を殿下に向けている者もいた。

しかし、殿下の戦場での魔法を見たからか、それとも王族らしくなく率先して危険を受け負う姿を見たからか、次第に視線の種類が変わった。


 兵の中には死ねと同義で送り出された者もいる。貴族であれば戦死すれば国に貢献したとして報奨金がその家に払われる。戦功をあげれば尚更だ。

 そんな者たちが肩を組み合い今日も生き残れたと涙する姿を幾度か見た。

 今回の戦は人死が少ないらしい。それは明らかに殿下が居たからこそだ。

 少なからず恩義を感じる者も、評価を改める者も少なくはない。


だから堂々としているだけで十分なのだ。

…どうすれば伝わるのか。


「…殿下」

自分でも思ったより柔らかい声音だ。スッと殿下と視線が合う。

「私初めて貴方に会ったとき思ったんです…期待ハズレだと」

一旦言葉を切ってから切り出す。殿下の顔が僅かばかり強張ったのを感じた。視線を逸らされ、その瞳のハイライトも心なしか翳った気がした。どこか分かっていたとでも言いたげな、諦めとも取れそうな表情だ。

「噂を聞いてどんな人物なのか…陛下の血を引くならばどれだけ素晴らしい方なのかと…まあ、勝手に理想を作って、落胆したんです。…ですが、全部私の早合点でした。お詫び申し上げますね」

少しだけ殿下の瞳に光が戻ったが、何かに恐れるかのように頑なにこちらは見ない。

「全てを拒否して、諦めて、前を向かず、ただ己の人生を悲観して、斜に構えてるだなんて流石に失礼ですもんね」

「…………」

()の私が知っている殿下は…そうですね…確かに警戒心が強い気もしますが、他人を本気で心配できる人です。毎日報告される訃報の数に眉をしかめて、戦場にも自ら赴いて、一番危険なことに率先して突っ込む…のは辞めてほしいですけど、とにかく他人のために全力を持っていくことが出来る人です」

「…そんなこと」

「魔力がなくなる寸前まで魔法を使うのは危険なことです。それを毎度…危険だということを知らない人の方が多いでしょう。必ず見返りが貰えるわけじゃない…むしろ逆のこともありえる。そのことは重々承知のはず」

たとえ手を貸したとしても好意的に受け取るどころか、敵意を剥き出しにして来る者もいるだろう。…しかも白髪の皇子というだけで。

「皇族としては…というよりも人として殿下は優しすぎるんです。こちらが心配になるくらい…」

私はふっと力を抜き微笑んだ。

「そんな殿下を私は好ましいと思いますよ」

視線の合った瞳は探るように、縋るようにこちらを見る。

「…俺もお前は…嫌いじゃない」

すっと顔ごと逸らされたが、その頬と耳が赤く染まったのに気づいた。

「ふっ…光栄です」

殿下は私が笑ったのに対して睨もうとしたようにも思えたが、ふっと脱力し笑った。

「…ありがとな、ユウエス」

「いえ」

「まあ、少し言い過ぎだがな」

「…気をつけます」

「ハハッ」

殿下は可笑しそうに声を軽く上げて笑った。それを見て何となく殿下の頭を撫で回す。

「…っなにするんだ…!」

「いえ、何となく」

またもや、顔を赤くさせて照れた殿下。長子だからか、はたまた常人より強いからか昔から庇護欲をそそられるものに弱い。守ってやりたいと思ってしまうのだ。

「よくカルダンさんもやっているじゃないですか」

「そう、だが…」

「髪が乱れたとか言うんだったら私が結びますから」

そう言うと不思議そうな目で見られた。

「…髪を結ぶのは下手だっただろう?」

「自分のはです…女兄弟が多いので他人のを結ぶのは得意ですよ」

これは事実だ。昔よく双子に結んでとせびられたので練習した。

「じゃあ、はい」

「ええ」

躊躇いなく髪紐を解いた殿下は私にその髪紐を渡してきた。

これはいつかの日と逆だなと思いつつ殿下の髪を結う。

下手したら妹たちよりも綺麗な髪だ。白髪が不吉だとか言うがとても綺麗な色だと個人的に思う。雪のような白さだ。

「どうした?」

いつの間にか止まっていたらしい。

「いえ、綺麗な髪だなと思いまして」

「…変わったやつだな」

そう言った殿下の耳はやっぱり赤く染まっていた。

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