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リボン

ちょっと寄り道気味な小話を投稿していきます。(*^^*)

ちゃんと話の展開もあります…


8月頭あたり10日間はちょっとした事情でSNSにアクセスしづらくなります。ですので投稿は無理だと思われます。(´・ω・`)

それまで出来る限り頑張ります。m(__)m

 

「あっ…」

ここ数日は大きなことは起こらず一段落していた。だから少しテントの中を整頓することにしたのだ。寝るためだけということもあって、あまり頓着しなかったためかなり煩雑としている。

「……」

隅の方に置いってあった箱を取る。

(…もう1ヶ月か…)

1月末に招集されてから今日は2月の最終日。1ヶ月経ってしまった。

そっと箱の蓋を開け、中身を取り出す。妹たちからもらったハンカチとリボンだ。ハンカチは毎日洗えるわけでもないし、私はちょっと粗雑なところがあるのでしまっておくことにした。リボンは…なんとなく一緒に置いておこうと思ったので入れている。

「ユウエス、ちょっといいか?」

「…大丈夫です」

外から父の声がしたので、とっさに内ポケットにリボンを入れて外に出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「森の偵察を頼む」

端的に切り出された言葉は面倒なものだった。

「一人ですか?」

「ああ、そっちのほうがお前も気負わないだろう」

確かにそうではあるが、何故このタイミングなのか。もうすでに派遣された部隊もいるはずだ。

「最近どうもあちら側が大人しくてな。何か仕掛けていても不思議じゃない」

私に頼むということは魔法の(トラップ)が仕掛けられている可能性を見込んでだろう。

「分かりました、昼から行ってきます」

「助かるよ」

誰かがしなければならない仕事であろうし、役に立つのだから文句はない。

(久しぶりに動くな…)

「ではまた」

私は父に挨拶をしその場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


森の中は割と明るい。葉が落ちている木のほうが少なく、鬱蒼としている。

私は木から木へと移動を繰り返していた。

(…異常は今のところ無し)

異常は見当たらない。強いて言うならば生き物の気配がないことか。まあ、ここらは北寄りであり、土地が痩せていることから食料が少なく、動物は住み着きにくいらしい。まだ冬といえば冬であるし…。

(それにしても…心地いいな)

辺境伯領は森がたくさんある。屋敷の裏山もそうだが、遊びといえば山を駆け回ることだった。

自分でも気づかないうちに気詰まりしていたのだろう。こころなしか体が軽く感じる。

「……?」

何かの気配を感じた。止まって気配を探る。

(魔力の気配だ…)

木から下り、慎重に近づいていく。三人分の人影を捉えた。


「…ここで」

「…はい、…大丈夫かと」

何か話しているようだがここからでは聞き取りづらい。もう少し近寄り耳を済ませる。


「…よし…これで」

「…アグレイ様、早くなさった方が…」


アグレイ…。もしかしなくても敵国の王子の名前と同じだ。そう言えば末の王子であるアグレイは魔法の才に優れていると聞いたことがある。

何か仕掛けに来たのだろうか。

(一体どうするべきか…っ!?)

やばい。今確実に勘付かれた。皆ローブを目深に被っており判断はつかないが一番背の低い者だ。

「誰だ!!」

男の叫びが衝撃波となり襲ってきた。咄嗟に防ぎつつ走り出す。ちらっと後ろを伺ったときローブが外れた黒髪の少年と目があった。叫んだ男に庇われるように守られていた少年の瞳は高貴な紫色。間違いない。敵国−ヴィレノース王国の王族の特徴だ。

悠長に見ている暇は無かったが確かだ。速度を上げつつ考える。今は取り敢えず逃げたほうがいい。三人とも魔法使いであろうから圧倒的不利だ。


幸いなことに追っては無く無事帝国側の陣営に戻ってきた。

「父上!!」

一目散に父がいるであろう軍議用の天幕に駆け込む。

「ユウエスか…早かったなって何があった?」

振り返った父が驚いて目を開く。全速力で駆けてきたため息が上がっている。それに道を選んでる暇もなかったので所々擦ってしまった。

「敵と遭遇しました」

父のもとに駆け寄り言う。

「三人です。全員魔法使いで…王国の第四王子がいました」

「そうか、ヴィレノースの末っ子王子か。辻褄が合うな」

周りの上層部の人たちもざわめきが大きくなる。

「何か他に分かったことは?」

「すみません。気づかれてしまいそれ以上は何も」

「いや十分だ。下がって休め」

「ありがとうございます」

父の言葉に従い私は天幕を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は空を見上げていた。人気の無い静かなところにいると自然と心が落ち着いてくる。日が傾き茜に染まった空を夜の闇が侵食していっている。

「……」

まだ肌寒い風が頬をなで、髪を舞わせる。後から気づいたのだが髪をくくっていた紐が千切れてしまっていた。

すっと目を閉じ風に耳を澄ませる。私の耳は近づいてくる足音も拾った。

「…どうしました?殿下」

「やっぱり気づくのか」

素人丸出しの気配の消し方じゃ気づくなという方が難しい。

「当たり前です」

淡々と返す。この前素で接するということで、貼り付けた笑みも、ワントーン高い声も出していない。

殿下はスッと私の横に腰をおろした。

「今日は偵察に行ったんだろ…?」

「お聞きのとおりです」

「わざわざ一人で行く必要は無かっただろ」

「私がそれで承諾したんです。…何にせよ殿下はお留守番ですよ」

殿下は納得のいかないような顔をしつつも、私と同じように空を見上げた。しばしの沈黙が流れる。

「…ユウエス、髪は括らなくていいのか」

「ああ、どこかで切れて落ちたみたいで」

「代わりになるものは無いか?…リボンとか、いや…」

私がリボンなどは持っていないとでも思ったのか殿下が一人で首を振る。

(何か代わりのもの…あ)

そう言えばユウエスにもらったリボンは内ポケットに入れたままだった。

「ありますよ、リボン」

「そうか。じゃあ、貸せ」

「?…ええ」

よく意図も分からないまま殿下にリボンを手渡す。

「センスがいいな」

「貰い物なんです、姉弟からの」

「なるほど…お前と同じ真紅だな」

そう言いつつ立ち上がった殿下は私の後ろに回った。

「いつもと同じ高さで結ぶがいいか?」

「え?自分でしますよ」

「……」

「…お願いします」

なにやら圧を感じたので大人しくお願いする。確かに私は髪をむすぶのが得意なわけでもないし…殿下ならいつも自身の髪を結んでいるから問題ないだろう。

「終わった」

「ありがとうございます」

ぼーっとしていたら結び終えたらしい。

「また解けたらいつでも言え」

「…まあ、気が向いたら頼みます」

殿下は私の言葉を肯定と受け取ったのか満足気に笑い、また空を見上げた。私もそれにつられて空を見る。

もう星が瞬き始めていた。

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