帰還
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私は木の上でじっと状況を伺っていた。目下ではローレンが地形をうまく利用し敵を翻弄している。道中で敵の姿も死体も見かけなかったが、どうやらある程度撃退しているようだ。もし大怪我でもしていたらどうやって運ぶか迷っていたが杞憂だった。
(あの感じなら私の速度にも付いてこれるな)
辺りに目の前の敵以外の気配は無いが油断はできない。敵は6人。一人3人倒せばすぐ終わる。
「よし…」
私は木から飛び降り、ちょうど近くにやって来ていた一人に手刀を食らわす。一瞬で気絶した敵兵が倒れる前に他の兵にも手刀を食らわしていく。流石に三人目のときには反撃が来た。
「この…っ!」
「………」
冷静に間合いを見極めつつ鳩尾に一発蹴りを入れた。
「ぐぅっ…」
すぐさま別の敵兵が剣を振りかざして来る。鳩尾に一発いれた兵から剣を拝借し受け止める。鋭い音を立て相手の剣を弾き飛ばした。驚きに目を見開いた隙に首に手刀を叩き込んだ。
他にも攻撃が来ないかと後ろを振り向くとローレンが残りは片付けていた。
「…無事ですか?ローレン」
「あ、ああ。…ユウエス一人で来たのか?」
「殿下たちは先に帰ってもらいました」
不思議そうな顔をしてローレンは目を瞬かせた。
「君が一番助けに来ないと思ったんだけどな」
本当に思わず呟いたといった感じだった。なんと返すべきか答えに詰まる。確かにそうだろう。実際私は一度ローレンを切り捨てようとした。
「…ひとまずここから離れましょう」
結局後ろめたさから答えをはぐらかしてしまった。ろくに視線も合わせないままくるりと背を向ける。
「ああ…」
だから私の言葉に返事をしたローレンが嬉しげに微笑んだのに気づかなかった。
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私とローレンは出来得る最大限の速さで森を駆け抜けていた。ちょうど合流地点にしていた所付近に差し掛かったとき僅かに魔力の反応を感じた。
急に止まった私に合わせてローレンも止まった。
「……っまさか!?」
何故か確信があった。馴染みがあるとは言えないが、この独特な魔力はあの人しかいない。
「殿下!!」
私がそう言った瞬間突如として空間から殿下が転移してきた。
「…!?」
ばっちり私と目があった殿下が驚いた顔をする。
(驚いているのはこっちだ…!!)
「殿下!先に待っているように言いましたよね」
「あ、ああ」
「だいたい…」
「ユウエスそこまでにしてあげなよ。殿下もユウエスのことを心配していたんでしょ」
私の説教が長くなると踏んだのかローレンが仲裁に入る。
ここであーだこーだと言うのは確かに得策では無い。
「…すみません。そうですね、ひとまず帰りましょう」
気を落ち着かせてそう言う。少し気まずげに出された殿下の手を取る。そんな私の手を殿下がギュッと握り返した。
「…無事で良かった、ユウエス、ローレン」
いつもの不機嫌そうな顔は鳴りを潜め、心の底から安堵したような声と柔らかな表情を浮かべた殿下。
「……」
ローレンと二人で顔を見合わせる。そんな顔をされたら怒る気も失せてしまった。
私は殿下に視線を戻し自然に笑みを浮かべつつ言った。
「約束でしたから」




