プロローグ 再会した二人
一体どうしようか。私は心の中でため息をつく。今私は1本の木の上に隠れている状況だ。いや、バレてるので隠れてるとは言えないか。目下には高貴な紫色の瞳で鋭くこちらを射抜く青年がいる。
ものすごい美形だ。麗しいという言葉がふさわしい。
(この状況は流石にやばいよなあ…)
私は心のなかで思案する。明らかに怪しいはずだ。意味もなく学園の木に登っている物好きなど貴族の多いここでは珍しいだろう。
まあ、私は平民枠であるからそこはどうにかなる。問題なのは気配を下手に消してしまったことだ。迂闊だった。気づかれないと思ったのに気づかれてしまったからややこしい。
「誰だと訊いている…さっさと出てこい」
私は観念して下へ降りる。何か予想外なことでもあったのかわずかに青年は目を見開く。
「無礼をお許しください殿下」
この国の第三皇子である彼はなおも威圧的な様子で私を見下ろす。
「名は」
「フィリア・ジェンベルです」
「編入生か」
どうやら知ってはいるようだ。
そのまま黙ってしまったので皇子の顔を見る。
シルクのような白髪に私なんかよりも透明感あふれる白い肌。そして何より不機嫌そうな顔。
(変わっていない)
私は3年ぶりに会った戦友の相変わらずぶりに思わず口の端を緩めた。