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5かぼ!


「かぼパンおっはよー」


 朝食の時間、朝から上機嫌でかぼパンの隣に座り頬を軽くつついた。今日も朝から可愛すぎる。


「なんでいちいち僕の頬を触るんだ!」


「そんなの可愛いからに決まってるじゃない!」


「うぐぐ……よくも堂々と……ラン、僕の事を可愛いと言った人を罰する法律を作ってはどうだ?」


 ツンとした顔で言ったが、隣に立っているランは困ったように笑った。


「そうしますと私含め、城で働く者や国民の大多数を罰する事になるかと」


「そ、そんなに僕は可愛いと言われているのか?」


「陛下はご存知ないかもしれませんが、子供の姿になってから更新された王室案内が飛ぶように売れ、記録を塗り替えました。まぁ、今までの王室案内売上歴代一位も、大人のお姿の陛下でしたが」


 ランの言葉にかぼパンはゴン、とテーブルにおでこを置いて動かなくなった。本気で自分の可愛さに気付いていないのか、相当ショックだったようだ。


 暫くそっとしておいてあげよう。


「ラン、その王室案内はかぼパンの写真が掲載されているの?」


「はい。代々マンドローレ王室の歴史と現王のお姿を載せた物を販売しているのですが、子供の姿になったので写真を変更したところ可愛いと大評判で人気商品になりました」


「そうなんだ!私も欲しい。きっと写真も可愛いんだろうなぁ」


 私の一言にかぼパンがむくっと起き上がる。


「ダメだ!」


「えー、そこまで命令される理由はない!」


「はぁ、分かっている。名ばかりが僕の言う事を聞いてくれるなんて一個も期待していない」


 まだ出会って丸一日も経っていないのに、私の何が分かるのかと言いたかったが言葉を飲んだ。


 かぼパンが可愛い顔に似合わない諦め混じりの溜息を吐いたから。


 その溜息すら可愛いくて。

 何故なの?溜息が具現化してグッズになりそうな可愛さと表現したらいいだろうか。とにかく可愛い。


 可愛さに当てられていると、朝食を運んで来た執事がおはようスープでございます。と、テーブルにスープを置いてくれた。


 おはようスープって、名称が可愛すぎない?


「かぼパン、このスープの名前は?」


 一応確認をね。


「聞こえなかったのか?おはようスープだ」


 普通に答えてくれたけど、新たな発見をしてしまった。

 可愛い子が可愛いワードを言うだけで超可愛いになるって事に!


「もう一回」


「おはようスープ」


「優しい感じでもういっか……」


「わざとだろう!もう言わないぞ!」


 かぼパンはぷうっと頬を膨らませた。

 まさか、怒っているアピールをしているの?

 こんな25歳反則すぎる。ああ、可愛い。もっと構いたい!


「スープ食べさせてあげようか?」


「自分で食べられるから不要だ」


「照れんなよ?」


「照れてないっ!どうして、どうしてだ!どうしてこんなのが聖女なんだー!」


 スプーンを握りしめ叫んだかぼパン。

 その姿も可愛らしいが、喉にスープを引っ掛けるかもしれないから食べ始めたら黙っておこう。


 それに、目の前に置かれた白くてクリーミーなおはようスープの美味しそうな事。

 スプーンにすくい口に入れると、想像通りクリーミーなジャガイモの味わいが満ちてゆく。


「うっ……」


 美味い!あまりの美味しさに言葉に詰まると、かぼパンが瞳を大きく開け、驚いたように私を見た。


 おや、もしかして心配してる?


「うぅ……」


 更に声を漏らしてみると、かぼパンはガタン!と、とても心配そうな顔で椅子に勢いよく立ち上がった。


「どうした?!まさか口に合わなかったのか?」


 はあっ、かぼパンなんだかんだ言って優しい!


「ううん、美味しすぎて言葉に詰まったの」


「はぁ、心配して損した」


 ツンとした顔で椅子に腰掛けたけど、優しさにきゅんきゅんした私はすかさずかぼパンの頬をつつく。


「心配してくれて優しいね」


「目の前で倒れられたら気分が悪いからだっ」


「そっか~、やっぱり心配してくれたんだぁ~」


「ニ、ニヤニヤするなぁっ!」


 かぼパンの照れくさそうな表情があまりにも可愛くて、ニヤニヤ顔でおはようスープを味わう。


 すると、かぼパンの隣でランもずっとニヤついている事に気がついてしまった。


 ランと目が合い親指を立てると、伝わったのかランも親指を立て返してくれた。


 きっとランも私と同じ、かぼパンが可愛くて仕方がないんだろう。


 スープ皿が下げられると、パンとスクランブルエッグが出された。執事が言った名称はおはようパンとおはようたまごだ。


 いちいち名称が可愛いのはかぼパンに言わせたい言葉100から選んだとかじゃないよね?


「ねえかぼパン」


「1人で食べられるから手伝いはいらないぞ」


「まだ何も言ってないのに」


「どうせろくな事を言わないと分かっている!」 


 フンッと勢いよく言い切ったかぼパン。

 構いたかったけど、完璧に警戒されてしまったみたいだ。

 ここは諦めて素直に雑談でもしよう。


「ここの料理、名前が子供向けって言うか、全部おはようが付いてるの可愛い。きっと可愛い人が付けたんだろうね」


「…………そ、そうだな……」


 かぼパンの気まずそうな返事に、絶妙な間。

 首を傾げ見ると、立っているランのニヤニヤがさっきよりも大きくなっている。瞳が輝き、私に何かを伝えたいような……


 ま、まさか!

 私が目を見開くと、ランがコクリと頷いた。やはり、可愛い人が付けていたかっ!


「この料理の名前、誰が付けたの?」


「あうっ」


 変な声を漏らし、ビクッと体を揺らしたかぼパン。

 なんて素直な反応。そんなんじゃすぐにバレますよ?


「絶対世界一可愛い人が付けたと思うの。誰が付けたのか聞きたいなぁ」


「……し、しらな」


 すっとぼけようとしたかぼパンの言葉に、堪えきれなかったのかランが大口を開けて笑った。


「アハハハハ!」


「ラ、ラン!ヤメロ!そんなに笑うと……」


 バレるのではとドキドキした表情で私を見るかぼパン。とりあえず笑顔で頷いた。


「バレてますぞ?」


「どうしてだぁ!」


「かぼパンは世界一可愛いから」


「ああああ、もう可愛いって言うなぁぁ!」


 顔を真っ赤にし、必死な叫びが響き渡ったところで朝の愛あるからかいは終了。


 執事さんがシメのおはようプリンを持って来た時に解説してくれた。

 かぼパンは子供の頃、運ばれてくる料理全てに毎日おはようと挨拶をしていたらしい。


「おはよ、シュープ!」

「おはよ、たまご」

「おはよ、パン!」


 と。かぼパンのその究極の可愛さに、朝食に出される料理全てにおはよう~が付くようになったそうな。


 私も究極可愛い、食べ物に向かって挨拶する純粋なかぼパンを見たかったな。中身25歳の今もこんなに可愛いんだもん。


 ……あ、見ようと思えば見れるじゃない!

 

「かぼパン、今挨拶してみて!ほら、プリン来たよ」


「するかっ!」


 ダメだった。

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