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4かぼ! 

「コントラーバ王に」


 マシューが水晶に向かって告げ、ブツブツ呪文を唱えると、輝く霧が水晶を包み隠した。この霧はさっき聞いた魔力だろう。


 魔力の霧が青に染まりサッと晴れると、水晶には黒のサングラスにゴツい金のチェーンネックレス、宝石がゴテゴテ装飾された派手な王冠をかぶった30代くらいの男性が映し出されていた。  


 なんと言うか、キャップの代わりに王冠被ったラッパーみたい。金のマイクを持たせたらとても似合いそう。


「オイオイもう夜だよアダムゥ~!子供は寝る時間じゃないのか~?ハハハハハ!」


 底抜けに明るい声のコントラーバ王は笑い方も豪快だ。


「夜にすまないが僕は子供じゃないと何回言えば分かる!」


「ハッハッハー!子供じゃなくてベイビーだったな!」


「ううぅ……せめてあと5歳大きければ……」


「そう泣くなよ!で、どうした?」


「言われた方法で聖女を召喚したんだが、聖なる力が全く使えないんだ!間違えていないか確認したい」


「ハ?ハーッハ!本当に呼んだのか!?やるなアダムゥ!ハハハハハ!ハーッハハッハハ!」


 やたらと大爆笑しているコントラーバ王に不安しか感じない。キャラが濃過ぎるし、全魔力を引き換えにしたかぼパンは藁をも掴む気持ちだっただろうに、本当に呼んだのか?は酷すぎる。


 若干引き気味に見ていると、前に出るようにランから合図され、気は進まないが水晶の正面へと歩み出る。


「お話中失礼致します。彼女が聖女様なんですが力の使い方が分からないと言って……」


 ランが説明しようとすると、コントラーバ王が突然手を振って話を止めた。


「おっおー!聖女いいね、美人だねぇ!黒くて長い髪が艶やかだねぇ!ウチ、来る?」


 ヒュゥ!と最後に口笛まで吹いたコントラーバ王。


「こんなに美人ならウチに召喚すれば良かったなぁ!惜しい事をした!ハハハ」


 ヤバイ、軽い、軽すぎる!

 褒められてちょっと嬉しいけど、もしコントラーバ王に呼ばれていたら訳がわからないまま組み敷かれ、ベッドで寝技でも掛けられていたかもしれない。


 安全安心なかぼちゃパンツ陛下に呼ばれて良かった。ありがとう、かぼパン!


 コントラーバ王の態度を見たかぼパンは困惑しているのか、不服そうな表情で私を後ろへと下がらせた。


「そんな事はどうでもいい!彼女が聖女で間違いないなら聖なる力の使い方を教えてほしい!」


「全くアダムは固いなぁ!呼び出しの儀式でその子が来たなら聖女に間違いないさ。聖女の力はあれだ、コントラーバ神殿東の聖なる泉の水を浴びて、女神に祈ってから使えるようになるらしいよん!」


 コントラーバ王の軽い言葉にかぼパンは大いに狼狽えたようだ。今にもひっくり返りそうな声で叫んだ。


「「はぁあ!?何故そんな重要な事を先に言ってくれなかったんだっ!」


「本当に呼ぶとは思わないだろ?魔力失っちゃうし」


「ど、どうすればいいんだ……」


 ガッカリと全身で項垂れたかぼパン。コントラーバ王は悪気なさそうに笑った。


「おいおーい、子供の姿で落ち込まれると俺が悪い事した気分になるだろぉ?!とりあえず聖なる泉の水をひと樽送るから心配するな。運が良ければ3、4ヶ月後には届くだろ!聖女ちゃんがウチに来てくれても良いけどね!ハハハ」


「切ってくれ」


 かぼパンの一言でブツッと一方的に切られる映像。

 この場にいる全員無表情で無言。皆気持ちは一緒だろう。


 コントラーバ王、人生を賭けていたかぼパンに対して人としてどうなのか……


 さすがにかぼパンに同情するわ。それに聖なる泉の水を樽で送るって、それ届いた所で効き目あるの?


「樽を待つより私がコントラーバに行って泉で祈ってくる方が確実じゃない?」


 静寂の中ようやく声を上げると、ラン、かぼパン、マシューも正気に戻ったように目に光が灯った。


 かぼパンが小さく首を振る。


「それが、ダメなんだ」


 暗い雰囲気の中、ランがかぼパンを補うように口を開いた。


「……コントラーバに行くまでに超えねばならない難所があるのです。まず悪魔の岩山。名前から想像出来ると思いますが、崖が多く道が細いので馬車移動は命懸けです。陛下のお父様が事故で亡くなった場所でもあります。そこを抜けると魔獣の森、奥に行くほど凶暴な魔物がいます。命からがら抜けたと思ったらはぐれ者と呼ばれる人々の集落があり、下手すると身包み剥がされ命まで盗られる場所です。この3箇所さえ通過すれば後は平穏な旅路なのですが」


 何その地獄。


「ちょっと、悪魔の岩山は自然だから仕方ないとして魔獣の森とはぐれ者の集落は国でどうにかできないの?」


「魔獣の森から向こうは隣国の領土なんだ」


「あー……樽届くの待つわ……」


 それまで本当に名ばかり聖女になってしまうけど仕方ない。できる事をやろう。


「もしかしたら異世界の知識で力が無くても大人に戻せるかも知れないから頑張ろうねっ、かぼパン!」


「不安しかないが頼む……」


「大丈夫大丈夫!力が使えるまでは私の事は秘書だと思って。では早速」


 私はしゃがんでかぼパンを抱き上げる。


「早速で抱っこする意味が分からないんだが?」


「私達の世界では秘書は主人を抱っこするのよ」


「そうなのか」


「知らんけど」


「ううう~、この名ばかりめぇぇ」


 悔しそうに唸るかぼパンを抱っこしたまま、ランと共に部屋まで送ってあげた。


「おやすみなさい!あ、せっかくだから一緒に寝る?」


 冗談ぽく言うと、かぼパンは漫画のように一瞬で頬を染めた。


「ねっ、ねっ、寝るわけないだろう!この、名ばかりめーっ!」


 あー、耳まで赤くしてんの、超可愛い。別に子供だから一緒に寝ても平気なんだけどなぁ。残念。

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