苛め
声を出そうか、黙っていようか迷っていた。
こういうことだ。
「汚いなー、近づくなよ。」
「うーじ!うーじ!」
「クッサいな。」
数をカサを着た卑怯な苛めだ。
まひるは、多数側にいる。声を出すことはない。そんな酷いことを言っていいと思っていないからだ。
だが、そこを抜け出して、苛めを受けている千代ちゃん側に立つことができない。
「勇気がない。あたしも卑怯だ。」と自己嫌悪に陥るだけだ。
今日もまた、苛めが始まった。
今、勇気を出して「止めなよ。」と言うか。声を出せなくても、せめて、この集団から抜け出して、千代ちゃんの方に行くか。
それとも今まで通り、黙っていて、自己嫌悪に陥るのか。
集団の声は増々、大きく酷くなっていく。もう、止めてくれ。
決断しなければ。
まひるは目をつぶって大きく息を吸った。
「みんな酷いね。千代ちゃん、一緒に帰ろう。」
と、さり気なく声を掛けたのは、まひる。ではなく、智子ちゃんだった。
「止めなよ。」などと大きな声を出すこともない、自然な行動だった。
苛めていた面々は、どう感じたのかそっぽを向いて、それ以上声を出すことはなかった。
それからも苛めが全くなくなったわけではないが、大分下火になった。
まひるは、智子ちゃんの信奉者になった。




