⑨
互いの告白が嬉しかった2人。
-⑨ 涙ながらの初めて-
2人同時での突然の告白に嬉しくなった好美には生まれて初めての感情が芽生えていた、何となく今言わないと後悔する気がしていた。
好美「ねぇ・・・、「守」って呼んでいい?」
まだ付き合う事が確定している訳でも無いのにもうその気になってしまっている、ただ守も同じ気持ちでいた。
守「俺の方こそ、「好美」って呼んでいい?」
先程から顔を赤らめていた好美に加えて守も顔を赤らめ出した。
守「これから俺達、恋人同士で良いんだよな?」
好美「それ以外にどう表現すればいいの?」
好美は涙を流しながら質問した、質問の答えに困った守は好美の手を掴み人気の無い場所へと誘導した。反射的に行動したが故にずっと考え込んでいたからか、静寂がその場を包んだ。
守「大好きだ・・・。」
好美「私も・・・。」
良い大人と言える年齢の大学生が2人もいるというのにちゃんとした感情の表演方法をずっと探していた、決意を固めた守は好美の手を掴んでいた方の逆の手で拳を握った。
守「多分、これしか無いよな・・・。」
かなり深めの深呼吸をした守は好美の唇に自らの唇を重ねた、好美も目を瞑り応えた。
数十秒もの間、2人はずっと接吻を続けた。
守「何となく、甘いな。こんな気持ち、初めてだ。」
好美「私の「初めて」を奪っておいて感想がそれ?」
守「ごめん・・・。」
好美「何それ、謝罪なんて・・・、欲しくない!!」
好美は少し怒りながら無理矢理唇を重ねた、数分にも及ぶ先程以上の本気のキスだった。
守「好美、大好きだ・・・。」
好美「それが聞きたかったの・・・。」
そう言うと改めて唇を重ねた、今度は唇を重ねるだけでは無く舌を入れる「大人のキス」だった。2人共、初めての感情に動揺していたからか呼吸が荒かった。
好美「嬉しい・・・、ボールペンを落としてからずっと守とこうなりたかった。」
守「俺は松龍の前で目が合ってからずっとだ。」
好美「ずっと覚えてくれてたんだ、嬉しい・・・。」
かつての記憶を取り戻した守に対して好美は涙を流しながら再び唇を重ねた、守は全力で好美を抱きながら応じた。
2人とも未だに呼吸が荒かった、ただ2人での「初めて」の時間は突然終わりを迎えた。
橘(電話)「お前何処にいるんだ、授業始まるぞ。」
守「分かった・・・。」
桃(電話)「好美ー、皆が探してるよ。」
好美「うん・・・。」
一言で答えた守は改めて好美の目をしっかりと見た、好美も同じ様に行動して聞いた。
好美「また、会える?」
守「今日は、バイト休み。」
好美「私も・・・、後でまた会いたい・・・。」
2人は再び唇を数十秒ほど重ね、その場を離れた。
授業のある教室に入った守を見た橘が爆笑していた。
守「何だよ。」
橘「お前、顔が赤いぞ。もしや、好美ちゃんと何かあったな?」
守は持っていたペットボトルの麦茶を一気飲みした。
まだ興奮が覚めていない様だ。




