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重すぎる責任感にただ頭を悩ませる隆彦。
-72 不利過ぎる契約-
隆彦は熟考していた、居住スペースが完成すれば今住んでいる部屋を解約して文香と2人で住もうと。しかし、まさか4人暮らしになるとは思わなかった。
工場で働いていた当時は住んでいる部屋の家賃を払っていると生活費が殆ど無く、文香におもちゃの1つも買ってあげる事が全く出来なかった状態だった。窓の外を見てずっと1人で遊ぶ文香を見て不憫に思っていたのだが、コンビニのオーナー経営者として働き、居住スペースが出来上がると少しは楽になると思っていた。
佳代子は苦労していた、妊娠している為今は無理な話だが、実は工場での給料だけでは全くもって食べてはいけなかったので近くの居酒屋でのアルバイトを掛け持ちしていた。
信三は2人が生きるか死ぬかを彷徨っていた事に本人達よりも早く気づいていた、それが故に2人の負担を少しでも浮かせることが出来たらと思っていた。
信三「隆彦、ちょっと提案があるんだが。」
流石に今の2人の稼ぎでは子供2人を育てるのは無理な話だろうと考えた信三らしい提案だった。
信三「香奈子ちゃんを成人するまで私が自分の娘として育てるってのはどうだろうか。」
この提案は佳代子にとって少し辛くなる話になるだろうが最善策と思っていた、それに信三は妻との間に子供がどうしても欲しかったのでこの表現はあまり良くない気がするが一石二鳥と言えよう。
佳代子「ねぇ・・・、たまには会っても良いの?」
信三「止めておいた方が良いだろう、今は赤ん坊だから大丈夫でも成長した香奈子ちゃんが困惑するはずだ。」
隆彦「一生・・・、会えないという事なのか?」
信三「名乗らなければ、会っても良いとは思うがやはり本人を困惑させない為にも会わない方が良いかも知れないな。」
隆彦「信三・・・、お前。そんな悲しい事、よく平気で言えるな。」
信三「成人してから会えばいい話だ、長い様で意外と短いぞ。それと養育費の為に私が受け取る店の利益の比率を少し上げさせて貰うぞ。」
隆彦「待て!!金の問題じゃないだろう!!」
佳代子「ねぇ、少し2人で考えてもいいかしら?」
信三「分かった、簡単な物だが契約書を作成しながら待っていよう。」
信三はコピー機からA4用紙を取り出して慣れたような手つきで契約書の様な物を描き始めた、その横で再婚を許されない2人はじっくりと考えていた。
隆彦「うん・・・、それで行こう。」
隆彦は契約書を書き終えた信三に1つ提案した。
隆彦「俺も契約書に1つ書き加えても良いだろうか。」
信三「勿論だ、友の頼みは可能な限り叶えようと思っているからな。」
隆彦は信三が書き終えたという契約書に項目を1つ書き加えた。
契約書
甲と乙は生まれたばかりの香奈子について下記の契約を交わすものとする。
一、甲が受け取る店の利益の比率は65パーセントとする。
二、乙は甲が香奈子を成人まで養育するまで香奈子本人と決して会ってはいけない。
三、乙は甲の行う養育に決して意見してはいけない。
四、乙は成人後の香奈子に会ったとしても父親と決して名乗ってはいけない。
甲 山板信三
乙 吉馬隆彦
隆彦「待て、一生名乗ってはいけないなんて、他人のフリをしろだなんて酷じゃないか?」
信三「それが本人の為だと言っているだろうが。」
意外にも信三は冷静に対処していた。
信三「それで?書き加える項目とは何だ。」
隆彦「そうだったな、今書き加えるよ。」
信三「ああ・・・、どんな事でも構わないからな。」
隆彦はペンを取った。
隆彦が付け加えた項目とは。




