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夜勤族の妄想物語2 -5.あの日の僕ら-  作者: 佐行 院


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買い出しを急ぎ終えた好美達。


-④ 面接-


 好美達は商店街での買い出しを済ませ、好美宅の冷蔵庫へと入れると桃の住む親戚宅へと向かった。鍋などの細かい荷物は実家から送るなり先に購入して配送するなりで間に合っていた、後は荷解きをするだけ。正直、その荷解き自体忙しくなりそうだが。

 桃の叔父である和多和樹わだかずきは温かな笑顔で好美を迎えた、奥で妻の芳江よしえが料理を作っている。好美の好みを予め桃から聞いていたからか今夜は肉料理中心にするらしい、まだ未成年の好美達の為に白飯もうんとたっぷり用意していた、ただこの後蕎麦も食べるので炭水化物だらけにならないかと心配していたのだが。

 和多邸は好美の住むマンションから歩いてすぐの場所なので帰りは桃が送っていく事になっている。


桃「ただいま、好美来たよ。」

和樹「いらっしゃい、遠かったでしょ。ゆっくりして行きなさい。」


 和樹は冷蔵庫から冷えた瓶ビールとコーラ、そしてグラスを4つ取り出して乾杯を促した。芳江が用意した肉料理がその場を温かくした、白飯もどんどん進んだ。

 引越し蕎麦含めて飲み食いを大体2時間位楽しんだ後だっただろうか、桃は好美を連れてマンションまで歩き始めた。


桃「ごめんね、付き合わせちゃって。遅くなったから迷惑だったかな。」

好美「ううん、そんな事ないよ。美味しかった、ありがとう。」

桃「それを聞けて嬉しいよ、次会う時は入学式かな。」

好美「ふふふ・・・、楽しみだね。あ、もうここで大丈夫。」

桃「そっか、じゃあ私コンビニで何か買って帰るね。」


 1号棟のコンビニでアイスとジュースを購入した桃は足早に家に帰った、これからの学生生活を想像すると楽しみで仕方が無かった。

 自宅に戻った好美は求人雑誌を開いた、そこにはまさかの「松龍」の名前と「可愛い女の子大歓迎」の文字。飲食店だからか、時給も悪くない。

 好美は早速店に電話をして翌朝に面接の予約を取り付けた、聞き覚えのある店主の声はどこか嬉しそうだ。

 念願のアルバイトが来たからか、それとも可愛い女の子からの電話だからか。


店主(電話)「明日楽しみに待ってるからね、おやすみなさい。」

好美「こちらこそ、よろしくお願いします。おやすみなさい。」


 翌朝、約束の時間の5分前に松龍に到着した好美は早速引き戸を開けた。


好美「おはようございます。」

店主「おはようございます、ただまだ開店前でして。」

好美「いえ、私昨日面接の電話をした倉下です。」

店主「嗚呼、楽しみに待ってたんだよ。こちらへどうぞ、履歴書は持っているかい?」


 好美はむしゃくしゃしながら何回も書き直してやっと出来上がった履歴書を取り出した、店主は妻に店の準備を任せると奥のテーブルで面接を始めた。


店主「はいどうぞ、お座りください。緊張しなくて良いからね。私、店主の松戸龍太郎まつどりゅうたろうです。というかもうほぼ合格だからね。」

好美「よろしくお願いします、失礼します。えっと・・・、はい?」


 龍太郎の最後の言葉を聞き逃した好美は緊張しながら椅子に座った、昨日の美味しかったランチを作った店主が自分の書いた拙い履歴書を眺めているのを見てまだ緊張していた。


龍太郎「えっと・・・、倉下好美ちゃんね・・・。ふんふん、今年からそこの大学に入学するんだね。ここではよくある事なんだ。お・・・、この上に住んでいるんだ。」

好美「はい、昨日からですけど。」

龍太郎「じゃあこの後、ご近所さんに挨拶回りって訳か。うちに先に来てくれたんだね、ありがとう。シフトはどれ位入れそう?」

好美「まだ授業が決まって無いので分からないですが、基本土日は入りたいです。」

龍太郎「そうか、じゃあ授業の日程決まったら教えてね。うん、やっぱり合格。」

好美「良いんですか?」

龍太郎「俺正直者だからさ、ほら「可愛い女の子大歓迎」って書いてあったろ?もう好美ちゃんは俺の娘同然だ。」


 すると奥から中国出身の妻、王麗ワンレイが出て来て拳骨した。日本での生活が長いので日本語はペラペラだ。


王麗「このド変態!!好美ちゃんだっけ、こんなエロ店主でごめんね。」

好美「いえいえ、楽しい方で嬉しいです。」

王麗「ありがとう、これからよろしくね。」


これからが楽しみで仕方ない好美。

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