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好美の提案に抵抗する守。
-⑮ 母の素性と彼女の意見-
守は真希子に好美を会わせる事に少し抵抗していた、理由は真希子の素性である。
これは2人が付き合いだしてからまだ間もないある水曜日の事だった、教員免許取得に必要な単位となる授業のテストに向けて教え合いながら一緒に勉強していたが故に守と正は松龍に入ったのがランチタイム終了ギリギリになってしまった。
ピークタイムが既に過ぎてしまっていたのか、好美はお冷を持ってきながらチラチラとテレビを見ていた。どうやら、流れているニュースが気になっているらしい。
守がテレビに目をやると、「有名大手ファンド、元本割れと多額の借金により倒産」とあった。
テレビのキャスターによると、とある印刷会社の重役が会社の利益から3割程を自らの所有する口座に横流ししていた事が発覚したためその会社の株が大暴落したのが今回の事件の発端だという。
好美「私、投資家とかギャンブラーとか言う人達の気が知れないんだ。正直言って今でさえこうやってアルバイトしているからそうなんだけど、必死に働いて稼いだお金をもっと自分の為に使えないのかなって思っちゃって。それにこの辺りって走り屋も多いって言うでしょ、ああ言う人達もわざわざお金使って騒音とかで他の人に迷惑かける様な車を作るなんて私から見るとガラの悪い人ばっかりだなって。」
すると、好美の言葉を聞いた龍太郎が黙っていなかった。
龍太郎「好美ちゃん、それはちょっと違うな。確かにこの辺りやバイクの暴走族や違法改造の車を走らせるガラの悪い走り屋も居たりするけど、逆に警察に協力して自ら山へ出向き、悪い奴らを一掃してしまう良い走り屋も居たりするんだぜ。それにそいつらはボランティア活動に積極的で、定期的に山の上やそこら辺の公園を掃除している所を見かけるからな。ほら守、覚えてるか?伝説の何てったかな・・・。」
正「「赤鬼」じゃね?ほら、数年前に峠から車ごと落ちて亡くなったって言う奴だろ。そう言えば、お前んちの近所に住んでいなかったか?」
近くすぎる、お隣さんだ。
龍太郎「今は娘の光ちゃんが意志を継いで走ってるって聞いたけど、守は何も聞いてねぇのか?そう言えば守・・・、お前のか・・・。」
守「好美、のど乾いたから水のお代わりくれ。」
好美「う・・・、うん・・・。」
龍太郎「おいおい、話を逸らすなよ。」
守(小声)「ごめん、ただ好美に母ちゃんの事はただのパートだって言ってんだよ。本人も結愛ん所の筆頭株主だって事は隠しているみたいだし、それに今の流れで母ちゃんの事がバレたらまずいだろ。」
龍太郎(小声)「そうか、悪かった。」
守本人にも言いづらい事があった、大学の学費含め殆ど真希子が株で儲けた金で生活をしている事だ。一応は自分達の為に使っている事になると思うが流れが悪すぎる。
それから数日経ったある日、遂に好美が守の家に行く日となった。大学を出る直前、先程真希子から携帯にメッセージがあった。
真希子「総会があるから遅くなるので、ハヤシライスを温めて食べてね。」
守「今日母ちゃん、遅くなるみたい。」
一瞬ホッとする守、しかし安心できたのも束の間。
好美「何をジロジロ見回してんの?」
守「いや・・・、この辺り変態多いからさ。」
好美「それ守もでしょ。」
彼氏の咄嗟の冗談に思わずジト目をする好美、そんな中で何点か確認する事があった。まずは1点目、今までは電車通勤をしていた光だが、満員電車が嫌になり最近は愛車で通っているそうなのだ。それが故に「カフェラッテ」は止まっていなかったが、ただ・・・。
守「わ・・・、忘れてた・・・。」
総会の日、真希子はいつも結愛の指示で来るリムジンで行くので真希子の「スルサーティー」はその場にあった。
好美「あれ・・・、ガラ悪そうな車だね。走り屋の人のやつかな。」
守「誰のだろうな、ほら着いたよ。」
玄関の鍵を開けて彼女を家へと迎え入れると守はすぐ近くの部屋にあるパソコンの画面を確認した、真希子がデイトレーダーの顔をも持つのでパソコンには常に各企業の株価が表示されていた。守は急いでパソコンの電源を切った。
危機一髪・・・。