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消滅の宇宙~現在改変中・カルメン編まで~  作者: 万世 千秋
あらたな冒険
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プロローグ2

登場人物紹介


天富奏護テンゴ

 百万石高校3年生管弦楽部に所属しておりヴァイオリンを演奏している。

 今度の県大会で3位まで入ると全国大会に出場可能な為、日々努力している。

 VRMMORPG「ラニアケアオンライン」通称LKOはチヒロからやろうと言われて以来ずっとプレイしていた。 だが部活が忙しくなり仮引退状態に入ってしまっていた。最後の日だからログインする必要が

あると考えている。


東矢千宙チヒロ

 百万石高校3年生 元ピアニスト、数年前まではピアノを弾いていたが現在はやめている。

 主人公、天富奏護とは石川県音楽堂にて出会い、それ以降、友達関係となっている。

 本人は奏護の事を気にかけているが本人は気づいてはいない。LKOを奏護に勧めた張本人。

 父譲りの大の宇宙好き、幼少期から天体観測を趣味としている。



 自宅に着くと、ただいま、と奏護はドアノブを掴みドアを開け入る。玄関に飾られた模造品のヴァイオリンと下駄箱に飾られた花が奏護を出迎える。


台所には明かりがついており、誰かが足音を立てて玄関の方へと近寄る音が聞こえた。


「お兄ちゃん、お帰り~」


 奏護の妹の奏音かなねが、居間のドアを開けた。

中学の制服も脱がないで、スマートフォンを片手にながめている。


「お前さぁ、また変な踊りをやっている動画を見ているのか?」


「これ、料理動画だよ? こないだ、お母さんの実家からフカヒレが届いたでしょ、これ参考になるかなと思って……お母さーん、お兄ちゃん帰ってきたよー」


奏音は声を上げながら居間へと戻って行った。


「あら、奏護、ヴァイオリンの練習どうだった?」


夕飯の準備をしていた母親が、声をかけた。台所からは良い匂いが漂ってくる、今日のご飯の内容を妄想してしまいそうだ。


「あぁ、まぁまぁだよ」


奏護は、冷蔵庫から出したお茶をコップに注ぎながら言った。帰宅した際のお茶は言うまでもなく旨い。


「お、奏護、今度のコンクール、金賞取れそうか?」


 お茶を飲んでいると、父親が、居間でテレビのリモコンを操作しながら言った。テレビのなかでは有名な作曲家が、20世紀のクラシック音楽について話をしている。


「だと、いいだけどな。頑張ってはいるけど、後半のアレグロ部分が、ちょっと難しいんだよ」


「あぁ、あの、クライスラーの『前奏曲とアレグロ』か、あれは難しいな」


「あそこ、アレグロ部分からいきなりスピードを上げないといけないから、ちょっと焦っちゃうんだよな」


「なるほどな。わかるよ、お父さんも昔は苦手だったからな、指が付いていけなくて」


うんうん、と父親はうなずいた。……実は、天富家はこう見えて先祖代々音楽一家。奏護の父親もプロのヴァイオリニストだが、若いころはなかなか苦労していたのだ。


「まぁ、頑張りんしゃい、コンサート当日は観に行くわ」


「お、おぉそうか、是非来てくれ……」


 父親の言葉は、どうも冗談なのか本気なのか、奏護にはわからなかった。もしかしたら、奏護がどんな曲を弾くのか楽しみで仕方ないのかもしれない。照れ臭い気持ちを悟られたくなくて、奏護は「荷物置いてくる」と急足で、自分の部屋へと向かった。


 荷物を片付けていると、ベッドに置いてある「ADD」が目に入った。正式名を「Awareness Dwelling in Dream(夢のなかの意識)」という。自分の意思を電脳世界に飛ばすことができるアイテムで、2040年の日本では大人気のVRゲーム機だ。奏護と千宙はこれを使って、例のVRゲーム『LKO』を一緒にプレイしている。


今日が最終日ということを考えると、懐かしい思い出が次々とよみがえる。そのとき、ご飯よ、と母親の声がした。空きっ腹を抱えて、階段を下りて行った。今は母親が丹精込めて作ったご飯が先だ。

奏護は居間に顔を出す。


「今日の晩飯は?」


「アジフライよ、それとエビフライとフカヒレの唐揚げよ」


母親はもうそろそろ料理が終わりそうなのか、お皿に食べ物を乗せていた。


「お兄ちゃん、少しは手伝ってよ……」


そう言う奏音はご飯をよそったり、おかずをテーブルに並べたりしている。


「あぁ、疲れた……もう体が動かねー……後は頼んだ」


「奏護、みっともないわよ、しゃきっとしなさい、そんなので演奏できるの?」


「今日はもう無理、飯食べたら風呂入って寝る」


「あら、そう」


奏護がわざと大げさに言うと、母親は呆れたように返した。――これは、奏護が堂々と『LKO』をするためについた嘘だった。実際、学校でもヴァイオリンの練習をしてきたのだ、疲れは溜まっている。それにご飯を食べて風呂に入るところまでは正解だ。


「さて、じゃあ俺も食べますか……」


 そこに奏護の目の前に座ったのは父親だ。父親もちゃっかり、食べる準備をしている様だ。テーブルに料理が並べられ、家族4人は食事を取ろうとする


「フカヒレを唐揚げにするって、珍しいと思ったが、なかなか美味いじゃないか。料理上手な母さんのおかげだよ。ありがとう」


 珍しい料理に、父親と奏音は舌鼓を打っている。奏護は目を輝かせ、早くもおかわりをお皿によそおうとする。


「気にしないで。あなただってお皿を並べたり、調理道具を片付けたりしてくれたじゃない。奏音は付け合わせのサラダも作ってくれたわ。忙しいのに、ありがとうね」


「お母さん、中華にかけては誰にも負けないもんね」


まずは母親が作ったアジフライから手に付ける。マヨネーズを付けた奏護はアジフライを口に運ぶ、その次にほかほかのご飯を口に運んだ。

 それもそのはず、奏護たちの母親は料理人だ。かつては都内の高級中華料理店で修行したこともあり、食材のアレンジはお手のもの。加えて今日は店が休みだったこともあり、早くから準備をできたのだ。


 そういえばさ聞いてよお母さん、弥生ちゃんっているでしょ、近所のイタリアンのお店の子。今日ねぇ、学校で弥生ちゃんが筆箱を忘れてね、それで、取りに帰るとか言い出すのよ~、もう授業始まりそうなのに……」


奏音は笑いながら母親に話しかけた。


「もうね、何をしに学校に来たのか分からないから、私がペンを一日中貸してあげたの……っはっはっは! ちょ~面白い~」


奏音はいつも通りの雰囲気で、食べもせずしゃべってばかりいる。


「お前さぁ、もうお腹いっぱいなの? 箸止まってるぞ。何ならお兄ちゃんが、奏音の分のアジフライ、食べちゃうぞ?」


「えーっ、やめてよお兄ちゃん! あたし、アジフライが一番好きなんだから!」


皆は箸を動かしながら、楽しく語らっている。これが一家団らんというものだ。幸せな家庭である事に変わりはないだろう、何時までも続けば良いと父親も母親も思うに違いない。


◆◆◆


ご飯を食べ終えた奏護は自分の食器を台所に持って行く。そしてテーブルの上に置いてある携帯電話携帯端末の着信を見る。すると誰かから着信が入っていた。


(あたし今からログインするから早く来てね)


千宙からだった。もう、準備はできているらしい。奏護はこの後お風呂に入ってからログインするつもりだった。多少遅れるが、サービス終了は本日の24時なので、それに間に合えば問題ない。


「じゃ、風呂入るわー」


奏護は自室からタオルと着替えを持って、1階の風呂場に行った。今はまだ19時、風呂に入ってから髪を乾かしたとしても後4時間以上はまだ余裕があった。


◆◆◆


風呂から上がった奏護は髪を乾かすと、さっそくベッドに行き、体を横にした。

 手に取ったADDを頭に被り、機械に付いている電源ボタンを長押しすると。一瞬意識がふわっと飛び、奏護は電脳世界に移動していた。このまま、千宙が待っているであろう『ラニアケアオンライン』を始めるのだ。


もう、最後のゲームプレイの時間だ。


「この時まで、色々なことがあったなぁ」


 今までのことを、奏護はしみじみと回想する――当初のサービス終了予定は6月30日だった。しかしそのあとすぐに開発元の会社『ソウルメア』から、世界中のファンからの要望で、7月7日に延期された……と発表がなされたのだ。

 それまでと同じく、経験値の3倍獲得イベントやレアアイテムドロップ率3倍など大変なものだった。ドロップチャンスがずっと続き……奏護は今日までの2週間以上はログインしなかったが千宙と二人の属するギルドの仲間たちも、ここぞとばかりにレベル上げやアイテム集めに興じたものだった。


3年前、千宙に『LKO』をやろうと誘われてから、いろいろな出来事があった。いろいろなプレイヤーに出会った。色んな奴がいて、色んな出来事があった。忘れる事が出来ない思い出で、永遠の仲間だ。


「さぁ、最後のログインだ」


 奏護は目の前に現れた『LKO』の画面をタッチする。するとふわっと一瞬飛んだ様な感覚に陥る。冒険ガイドの女性アンドロイドの音声が流れた。


「広大な宇宙へようこそ、大冒険が君を待っているよ!」


 宇宙の冒険へと誘うかの様な、元気いっぱいの声を聞くのも今日が最後である。


◆◆◆



























父親 天富 奏士(そうし) 2000年生まれ

母親 天富 静音しずね2004年生まれ

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