だって好きなんだもんっ〜Dear先生〜
先生を好きになってしまった生徒の話です。
今回は切ない系ではないですが、苦手な方はお戻りください。
一切の責任は負いかねます。
好きになってしまったものは仕方がない。
大好きな、あたしのセンセイ――。
「せんせっ、暑いですねぇ」
部活帰り、校庭沿い、校舎から校門までの路に、トイレからひいたホースで水を撒いている先生を見つける。
それだけであたしは、さっきまでの疲れを忘れてしまうのだ。
なんて単純なんだろう。
未央は小走りに駆け寄る。
置いてきた友達がここへ来るまで、先生と未央の間に与えられた時間は短い。
「おう」
短い返答。
向けてくれる笑顔。
サッカー部の顧問の先生は、この時期どんどん日に焼けていく。
「今年も焼けました?」
分かりきった質問。
それでもいい、少しでも先生と一緒にいられるのなら。
そっと上目遣いで、未央は先生を見上げる。
ただでさえ長身の先生、トイレの入り口に乗っかっているせいで、普段より余計に見下ろされる。
そんな感覚が、未央には愛おしい。
「見りゃわかんだろー。真っ黒だよ」
苦笑いとも取れるそれは、未央にいくらでも力をくれる。
半そでのTシャツをめくったりしながら、ほら、と未央に見せる。
そうこうしている間に、友人たちはあっという間にやってくる。
「未央ぉ、帰るよぉ」
「さよーならぁー先生」
「じゃーなー」
友人たちと先生との会話。
耳にしながら、未央はちょっとたくらむ。
「先生、それ、かけてくださいっ」
「はぁ?」
ホースを指差して未央は言う。
いたって真面目だ。
「は・や・く!」
未央が急かすと、先生も仕方なく了承したようだ。
「おらっ」
一瞬だけ先生がホースを振り上げる。
「きゃー」
未央が飛び跳ねたりするのを見て、友人たちも楽しそうに笑う。
「じゃ、さよーなら、先生」
「おー、勉強しろよー」
「はーい」
スキップしながら辿る帰宅路。
1日がバラ色に、そう、バラ色に変わるきっかけはいつも先生だ。
「未央も好きねー」
「へ?」
「ううん、なんでもない」
いいんだ。
先生が結婚してようが、あたしのことを生徒としてしか見てなかろうが、それでも、好きなんだもんっ。