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3回 4

作者: 柿畑 紫慧

3回 4


朝起きたら、暇つぶし機能付き目覚まし時計に見慣れない通知が入っていた。送り主は『Saori』。蓮見さんからだった。どうやら昨日僕が寝た後に送ってきたらしい。ベッドに入ったのが確か日付変わって少し後だったのだけれど、よくもまぁ起きていたものだ。内容を確認するか少しだけ迷って、結局そのまま画面のロックを解除することなくポケットに滑り込ませる。大して興味も湧かなかったし、それに何より。

学校に間に合わなくなる。


自転車の前カゴにカバンを放り込み、スタンドを蹴り上げる。さっきチラリと見たリビングの時計では、いつにも増して余裕がなさそうな時刻だった。もういい加減、白川先生の説教は聞きたくない。あの人本当に、自分より弱者をいじめたいから学校の先生になったんじゃないか、と思えるほどネチネチと言葉を投げてくる。一言で言うと、かなりウザい。僕は自転車のギアを6に入れると、駐輪場を飛び出した。



「…聞いてるのかい?君はほんっとに……。」


国語科準備室。端っこに置かれたパイプ椅子は簡単な仕切りで区切られていて、他の先生方の気配はするものの姿は見えなかった。


「私もいい加減こういう話は飽きてきたんだけどね……」


昼休みに説教をされるメリットその1。あの教室で時間を潰さなくて済む。もうすっかりこの椅子にも慣れてしまった。薄いクッションのせいで尾骶骨に負荷がかかっているのだけれども、そのおかげで説教中に寝ないで済んでいる節はある。


「だからさ、寝坊しちゃうのを『仕方ないから』で済ませちゃいけないと思うわけよ……」


昼休みに説教をされるデメリットその1。お腹がすく。いつもだったら早弁でお腹にものをためておくのだけれども、今日は運悪く移動教室続きのせいで食べることができていなかった。もう話なんて最初から耳を通り過ぎている。お腹が鳴らないようにするのに必死。


「何か対策は考えたのかい?前回考えるように言ったよね?」

「はぁ……。」


適当に頷く。チラリと腕時計を確認したら、昼休みは残り半分だった。まだ話は続くらしい。よく飽きないものだな、てか白川先生もお腹空かないのかな。


「…いいかい、明日までにきちんと考えておくこと。朝しっかり起きるというのは、社会人に必須のスキルなんだからね?」

結局、方眼紙を1枚渡されてその日の『お話』は終了となった。で、何書けばいいんだろうか、コレ。



教室に戻ると、クラスは割と空いていた。男子のウェイ集団はバスケでもしに行ったんだろう。いつもより少しだけ息のしやすい環境でひとり、弁当の包みを解いた。今日はちゃんとイヤホンを持ってきたのだけれども、クラスが騒がしくないからわざわざ耳を塞ぐ必要はないだろう。そう思って箸を持ったのが間違いだったと、ものの数秒後に気づくことになる。


「ここ、空いてますか?」

顔を上げる。蓮見さんがお弁当の包みを持って、僕の目の前に立っていた。


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