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フリーダム  作者: 清香
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9 落ち着かなきゃ

 レイチェル様は貴族らしく政略結婚の為の婚約をしていた筈。確かマリエ部長は幼馴染のお兄ちゃんと両思いなのが判って婚約した。って言ってた。本屋さんで偶然再会したルーカスさんはまだ彼女居ないそうですし、お兄様もはっきりしない。私の周囲は婚約して無い人が圧倒的に多いのに、何故私ばかりこんな事に巻き込まれたのかな? 成人してからで良くない? クライド様には悪いけど、やっぱり遠慮したいなぁ。お兄様には『ちゃんと考えなさい。』って言われたけど、何度考えてもクライド様との未来が想像つかない。ギルマスに相談し直そうかな⁉︎ 落ち込んで暗くなってしまっていると、アリエス様が店から上がって来ました。『クライドや父が迷惑掛けてごめんね。リルルちゃんが悩む位なら思いっきて、きっちり振っちゃいなさい。ホントショーモナイ男共だわ。私が後できちんと締めとくから安心してね。』思わずアリエス様に抱きついて泣いちゃいました。我慢して婚約を受け入れなくて良いんだ。と分かりホッとしました。


 学生の間は勉強第一。しかも、仕事持ちなのだから、これ以上考えたく無いわ。アリエス様に救われて浮き上がった私は、魔術学校に通うのに使うバッグを作り始めました。持ち手の紐を環に通す事で、バッグにもリュックにも使える様にして、更に、インベントリの布を内布のポケットに使う事で一部だけマジックバッグにして、口の部分は巾着袋になっているので、中の物が落ちないし、可愛いです。だいぶ気分が良くなり出来上がったバッグをアリエス様に見せに見せに下りると、お兄様が叱られている処でした(笑)


 しょげているお兄様が可哀想になって、アリエス様に出来上がったバッグを見せて意識を外らせたのですが、やはり、可愛い!と大ウケで、早速、アリエス様のを作る事になりました。見せてる途中でインベントリになったポケットに気付き、『すぐにアリエス様用のを作りますね!』と慌ててバッグを受け取り、さっさと2階へ戻ってアリエス様仕様にした、インベントリ無しのちょっと大人っぽいバッグを作り、材料費に気持ち上乗せしたお値段でお譲りしました。


 環は、ドロテスさんに硬い針金を折って、丸や三角、四角や半円など、丸や四角の環の真ん中にもう1本針金を渡した物等を、それぞれ大きさを変えて、30種類以上を作ってもらってあります。この環を使う事で紐の長さを調節したり出来るので、持ち方が工夫出来て便利なんです。当然、ザキュの商業ギルドで登録して有ります。ワイマール様が残念がってましたが、仕方ありませんね。あ、ワイマール様は、王都の商業ギルドのギルマスの名前です。『子供達は様呼びなのに、俺だけギルマスってヒドクないか!』って言い出して教えてくれました。その後で『お父様でも良いぞ。』なんて言ってたのは無視しましたけど。


 アリエス様が『お父様に見せびらかして来るわ!』とギルドに向かってしまいましたので、ワイマール様が来る前にレシピと型紙を用意しなきゃですね。さっき迄叱られていたお兄様が苦笑いしながら紙とペンを差し出してくれました。部屋に戻って書いていると、バタン!と大きな音を立ててワイマール様が来店されました。窓から外を見ると、アリエス様が怒った顔で戻って来るのが見えます。下からお兄様が呼ぶ声がします。型紙とレシピを紙挟みに挟んで持ち、アリエス様に合わせる様に下に降りて行くと、丁度、アリエス様とジイドさんにワイマール様がたしなめられている処でした。


 アリエス様にバッグを奪い返されたワイマール様は、クライド様の件を詫びて下さり、自重させる。と約束して下さいました。交換条件では無いからな!とアリエス様に言い訳⁉︎をした上で、バッグの登録を言い出したので笑ってしまいました。アリエス様に『頭脳派ですね。』と言うと『まさか!リルルちゃんがこんな素敵なバッグを作るからよ。だから私は見せびらかしただけよ。』と笑ってます。ワイマール様は金具にも気付いていて、『どうせ、これ以外にも作らせたんだろう?他の金具をも使ったレシピをよこしなさい。』と言うので、『ザキュで登録してある環なので、使い方はお母さん達と連名で登録する予定です。』と伝えると、お母さん達を王都に呼び出すと言い出すので、『次の講習会の時にして下さい!それ以上は譲歩しません。』と怒ってしまいました。アリエス様と、ねぇ〜と顔を見合わせていると、お兄様が『リルル、ギルマスだって忙しい方なのにわざわざ来て下さっているのだよ?』と恐る恐る話し掛けて来ました。アリエス様がお兄様をキッと睨み付けると、ワイマール様が間に入って『取り敢えず、このバッグのレシピだけなら、リルルちゃんだけの登録でも良くないか?こんな使い勝手の良いバッグは絶対に人気が出るから、うちのギルドの目玉商品にしたいんだよ。』と頭を下げるので、ギルドに飾る見本として、大きさは大人用と子供用で2種類、更に男女別で合計4種類の発注を受け、ワイマール様には登録用のレシピと基本の型紙を渡して、この場はお開きになりました。


 早速お母さんに講習会の連絡をした際に『ドロテスさんに頼んでる環の使用例を作って送るから、何時も通りに連名登録をお願いしますね。またオーダーが沢山入ると思うので、バッグのレシピも送るから、工房でのバックアップをお願いします。』と伝えると、『スターシャ姉さんの工房も、うちの工房もザキュで人気の高い工房だから従業員の希望者は多いの。任せてね。』と朗らかな声が帰って来ました。スターシャ伯母さんの名前を聞いて、バックルを思い出し、ドロテスさんに新規依頼を出しました。


 そう言えば、アリエス様の嫁ぎ先の親類に、メイファの街の織り物工房の工房長が居るそうで、ワイマール様を通してお母さんに紹介状が届いたそうです。生地はスターシャ伯母さんのツテで服地を融通して貰ってましたが、革製品の裏地に使うには良いのですが、バッグを作るには薄い生地が多く、お母さんの工房でキルティングに加工して作っています。でも、此方の工房ではいち早くレシピを購入してキルティングを増産されたそうです。ワイマール様に話しを聞くと、糸の太さを変えて丈夫な布地も作れると言う事なので、無地で少し堅めな生地を色違いで作って貰う発注を掛けました。これは前世で言う帆布のような布で、此方ではテントだったり椅子の背に張ったりするのに使われているので、直ぐに手に入りました。切り替えにして下側を此れで、上側と裏地を鮮やかな布でバッグを作って店に出すと、講習会の依頼が殺到しました。当然⁉︎ワイマール様がレシピを登録しに突撃されましたよ。王都で私がギルドに登録しに行ったのって有ったかしら?と遠い目が久々に出ました。


 魔術学校の入学式も迫って来てますので、必要な本と文房具を買いに今日はお兄様とデートです。本屋さんで店長さんから説明された本を購入し、雑貨屋さんで文具を買っているとクライド様に会いました。アリエス様から叱咤されて、『取り敢えずオトモダチにしてもらいたい。』とお願いに来たそうで、お兄様が『私の時には一方的に扱き使われた強制主従関係から始まったのに。』と苦笑してます。お兄様もアリエス様に叱られた1人ですからね(笑) 私が『取り敢えずお兄様からお願いします。』と答えると、お兄様は笑い出し、クライド様は『お友達より近い距離なのか?それとも余計に遠くなったのか?』と呟いてましたが、私としては最初に戻っただけだと思うのですよね?


 講習会に来たお母さんとスターシャ伯母さんに相談して、今回の環を使ったバッグ類に関しては王都のギルドで登録して、バックルを使ったベルトはザキュのギルドに登録する事にしました。バッグに使えない事も無いのですが、ベルトは圧倒的に被服で使うと思うので、伯母さんの名義で登録してもらった方が良いと思ったからです。なので、バックルはザキュでの認知度が定着してから私も使う方針で、ワイマール様には内緒!が合言葉になりました(笑)

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