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フリーダム  作者: 清香
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8 卒業目前⁉︎

 サーシャから、今年の文化祭が無事に終わり、次の講習会に叔母さん達と一緒に王都に行くね。と手紙が届きました。私は王都の学校では何の活動もしていませんし、文化祭へもあまり参加せずに済んだので、この秋はお店の裏方がメインでした。ギルド経由で綺麗なレース糸を購入して、ドロテスさんに大量発注したピンとスクルラさんのビーズを使って、キラキラしたレース編みの立体花を使った花簪をコレでもか!と作り、数量限定で販売したのです。お値段お高めのボッタクリ価格に設定したにも拘らず、当日完売してしまいました。予約商品に関しては、お母さんとスターシャ伯母さんの工房にもレシピと材料のレース糸を送って増産してもらってはいますが、年内分の目安を越えそうな段階で一旦予約停止させて頂きました。


 因みにレイチェル様には販売前日に、ネックレス、イヤリング、指輪、ブローチを足した5点セットの特注品を3人分も納品させて頂きました。後見人のシューマッハ家は別枠。という事です。他のお貴族様との防壁を担って頂いている御礼。と考えて作りました。でも、それを乗り越える方はやはりいらっしゃいまして、王妃様と王女様への献上品が発生しましたよ。ナンデオチャカイニナンテツケテイクノカナオクサマ。私、まだ未成年です。もうザキュに帰って良いですか?2度と王都に来たく有りません。と涙目でシューマッハ様に訴えると、今回だけ!2度とこんな依頼はしない!と約束してくれましたけど、もう遅いと思うんですよね。多分。


 ビーズ多めの細工品にし、ワイヤーを駆使して揺れる簪を編み、ネックレスはレース糸を編んでチョーカーっぽく作り、ブローチもビーズでキラキラ感をupさせました。イヤリングも簪のデザインに合わせてチェーン遣いの揺れる花にし、指輪のお花は更に立体的に編みました。正直、疲れました。


 『今回は王家用にデザインしたので、他の方に類似した作品を作る予定は有りません。』と告げると、シューマッハ様は感激して王家に献上してくれました。私は奥様の態度に不信感を持っていたので、今回の品物と交換でシューマッハ様には保険を一筆書いてもらいました。『次回、このような案件が発生した場合、シューマッハ家と、関係する方々への対応はお断りさせて頂きます。』と。  


 正直なところ、ギルマスの言う、王都のギルドで登録する新商品の開発して!とか、貴族への事前販売の斡旋とかは商人として仕方ない強引さですが、今回の奥様のは個人的なわがままというか、調子に乗った奥様の後始末の押し付けでしかありませんから、迷惑としか言えません。大体、お兄様の後見をギルマスに譲ったから、私の後見はウチが。って押し付けられた私個人としては、日常的に成りつつあるレイチェル様への対応とか、迷惑要素が溜まって来ている処にコレが降って沸いたので、もう良いや。全部投げ出してザキュに帰りたい。って気分なのです。一応、ギルマスからはこの対応で良いと言質は貰ってますから、シューマッハ様に書いて貰う事にしたのです。


 今年最後の講習会は、冬休みの初日に設定してあります。そのまま、私もザキュに帰りたいから。久し振り会うサーシャと楽しく話しながらお店に出て、講習会の補助をしながら店内を巡っていると、レイチェル様を連れて奥様が来店されました。お兄様とジイドさんが何時も通りに個室に案内しようとすると、普段していない講習会に興味を惹かれたのか、レイチェル様が此方に来ました。私は『月に1回だけ開いている講習会で、今日の講習はビーズ細工のフラワーリングです。』と説明すると『私も作りたい。』と言い出しました。やっぱりね。と思いつつ、材料のコーナーへ案内し、好きなビーズを選んで買って貰い、個室に案内する事にしました。レイチェル様には『私も講習会場でやりたい。』と言われましたが、『彼方は完全予約制で入れません。』と伝え、ついでに『個室での講習も今回のみの特別で、次回からは受け付けられません。』と言い切りました。そろそろ、お2人の我儘に付き合いきれなくなっているからです。奥様が、『私達はあなたの後見をしているのよ。』と仰るので、『ですから、個室にて特別に対応致します。とお伝えしておりますが?』と微笑んで見せると、後ろで控えていたジイドさんまで『破格の対応を取らせて頂いておりますが、ご理解頂けないのでしたら、これ迄のご縁という事でよろしいでしょうか?』と援護なさってくれました。


 結局、個室に向かい、自分で選んだビーズを使って指輪を作り、レイチェル様は機嫌を直して帰られましたが、奥様は… ジイドさんがシューマッハ様にお伝えして、後見から外れて貰う事になりそうです。私が後見を希望していない事を都合良く忘れている奥様が原因ですから、一筆書いて下さっているシューマッハ様なら、諦めてくれるでしょう。一応、ギルマスにお手紙を認めて、お母さん達と一緒にザキュへ帰りました。


 サーシャがウチの工房に材料を持ち込みで来て、私と一緒に花飾りを編みながら、王都の話しで盛り上がっていると、職人さんがポソリと呟きました。『リルルちゃんはあんな我儘なおばさん相手に商売してるんだねぇ。此処であんな態度とる大人は見た事無いから驚いたよ。』『でしょ。お貴族様って威張ってるよね〜』とサーシャまで加わって来て、『非常識な大人だよね〜』と盛り上がってしまいました。シューマッハ様は私の後見人を名乗ってますが、ようは、王都の学校に編入する口利きをしてくれただけだと思うのですよ。学費の件をお父さんに聞いたら、私の収入から支払える額だったので断ったそうだし、貴族への牽制って言われても、レイチェル様が纏わりつくので、却って学校内でのイジメはあるし、商売はギルドの管轄だからシューマッハ様には関係無いし、うーん、やっぱり迷惑なだけだと思うのよね〜と、みんなの会話を聞きながら思ってました。


 さて、私も加わった事で、予約数が作り終わり、お父さんと王都に納品に向かいました。帰宅は新年の予定で、日持ちするお祝いの料理も一緒に持って行きます。お兄様から聞いた上級学校は魅力が乏しく、お母さんやお父さんとも相談して、私は魔術学校に進学しようと思っています。魔法や魔道具作成に特化した学校の方が私に向いているように思うのです。此方も魔力の関係から貴族が多いと聞いてますが、個性的な人が多く、実力主義な為、貴族と平民の垣根がほぼ無いとか。つまり、シューマッハ様の管轄外。って訳ですよ。さて、初めての新年の売り出しにお父さんも加わってくれると言うし、インベントリに貯め込んだ一点物のバッグなども使って福袋を作るぞ!


 新学期になり、周りが上級学校への入試で盛り上がっている中、私はこっそりと魔術学校への入試を受け、無事に合格しました。合格通知が学校に届いてしまい、上級学校に入れたがっていた先生が残念がってましたが、私の人生です。シューマッハ様へはギルマスを通して連絡して貰い、後見人も外して欲しい。とお伝えしました。奥様が喚こうが、レイチェル様が泣こうが、私の知ったこっちゃありません。と、ギルマスには暴露しましたが、『シューマッハ様には感謝しております。とだけお伝え下さい。』とお願いしました。 案の定、何様⁉︎とばかりにお店に怒鳴り込んできた奥様は、ギルマスに捕獲され、シューマッハ様経由で出禁にされました。王家案件だけで無く、他のお貴族様へも『私の店』として自慢なさっていたそうで、『奥様の紹介状』とやらを手にした傍若無人な方々の来店が相次いでいて、お店に少なからず被害が出始めていた為、ギルマス自らが巡回していた時だったので、対応が早かったです!温厚なシューマッハ様は、実情を知って後見人から外れてくれた上に、困った時には絶対頼って来なさいね。と、紋章入りのハンカチを下さいました。


 卒業式を終え、難問ばかり当てて来て嫌がらせばかりされていた。と思っていた先生から、実は好意を持っている。と告白されて、速攻でお断りしたのを皮切りに、何故か告白の嵐に曝され目を回している処を、お兄様に付いて来たクライド様にまで『リルルは僕のものだ!』と宣言されたり、訳が判らないままお兄様に救い出されて帰宅しました。『えっと、この1年間、学校内ではイジメしか受けて無かったと思うし、一方的なレイチェル様からの交流以外、友人も出来なかったと思ってた私が間違っていたのでしょうか?唯一、クライド様だけはお兄様に会いにいらしたついでに私にもお土産を下さいましたけど…』と、お兄様にぼやいていると、『リルルは悪意には敏感だけど、好意には鈍感だったから、クライド様は苦労していたよ。』と笑って教えてくれました。私がお貴族様を始めとする女の子達からイジメを受けたのは、レイチェル様案件より、男性から人気が有るにもかかわらず相手にしない孤高の麗人だったからで、イジメをしている女の子達自身が私の気を引きたいだけ。と言う面があったそうです。ホントかな?『取り敢えず、独り立ちする迄は恋愛は要らないかな?どちらかと言うと、お兄様の恋人になる方に興味があります。私の義姉となる方はどの様な方でしょうか?』と言うと、『そのうちね〜』と笑ってはぐらかされました。


 ところで、クライド様は本気だそうで、ギルマスを連れてザキュまで挨拶に行ったそうです。私が魔術学校への入学準備で買い物をする為、お父さんに連絡すると、『クライド様をどう思う?』と聞かれ、慌ててしまいました。流石に、『私抜きで進まれても困ります。』と苦情を入れましたよ!クライド様は『婚約だけでもしておきたい。』と申し込まれたそうですが、『今の私は、お兄様の友人でギルマスの息子さんと言う関係でしか捉えていませんので、保留して頂くか、諦めて頂くのどちらかでお願い致します。』とお返事したら、『魔術学校を卒業時に婚姻若しくは婚約で良いですね。』と言う返事があり、お兄様が呆れてました。ギルマスに『コレって、諦めて頂く。って選択肢が正解だと思ってしたお返事だったのですが、どうしてこの様な解答が返って来てしまったのでしょう?』と慌ててお伺いに行った処、『見た目、性格、知識、才能。どれを取ったってお買い得だ。ってわかってるか?クライドはザキュで会った時に一目惚れした。って言ってたし、俺も正直言ってリルルを娘に欲しいから、クライドを応援しているぞ。』『だって、私、平民ですよ⁉︎』『だから?クライドは次男だし、仮に爵位を継いだとしても、リルルなら貴族の夫人位熟すだろ⁉︎』『だって、まだ恋もしてないのに将来が決まるなんて、平民の感覚では無理!大体、貴族は怖いから近付きたく無かったもん!』気持ち的に追い詰められた感じになり、ポロポロと涙が溢れて理性的?に話せなくなってしまって、どうしようと思った処にお兄様が迎えに来てくれました。ギルマスがお兄様に、『年齢相当の珍しいリルルを見られたよ。』と話し、クライド様に待ったを掛けてくれると約束してくれました。


 家に帰るとお兄様が『僕の事をお兄様って呼ぶ様になったり、話し方や態度が大人っぽくなったから、まだ12歳の子供だって忘れていたかも。ごめんね。でも、クライド様は良い人だから、お断りするにしても、キチンと本人を見てから断るんだよ⁉︎』と静かに諭してくれました。『今はクライド様が気に入って下さっているけど、3年後も同じ気持ちである保証は無いですし、私が成長してどう変わるかもわかりませんし、お兄様の言う様に、いろんな方を良く見る様にします。』と答えて話しは終わりました。

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