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フリーダム  作者: 清香
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4 王都にて シャル視点

 ザキュの街と違って王都の学校は大きく、生徒も先生もたくさんいる。僕のいる平民コースは30人程のクラスだが、貴族はもっと多い。先生にも貴族と平民が居るが、学校内は特別ルールで、身分は隠されるのだそうだ。まぁ、表向きには。って事らしい。寮の部屋は2人部屋で、僕のルームメイトは王都の商人の子だった。うちの店というか、ビーズ細工の事を知っていて、凄く興奮して自己紹介をしてくれた。僕はつい後ずさってしまったけれど、彼は一向にめげずに友人申請してくれた。彼のお陰で休日の王都散策が充実し、休暇前にお土産も買い揃えられた。のだが、何故か、お土産は配達に回され、僕の初めての夏休みは彼の家で過ごす事になった。


 『なぁ、カルスト。僕はなんで君のフォローをさせられているのだろう。衣食住付き。の衣って君の家の店の制服だし、コレって単なる店員のバイトだよね!』確か、『両親がどんな子と寮生活を送っているのか知りたがっているから、実家に付き合って欲しい。』と言われて帰省の前にちょっと寄っただけの筈だ。それが、店番を頼まれたカルストが怒らせた客を宥めて、機嫌良く買い物をさせて見送ってしまったばかりに、親御さんから泣きつかれ、カルストの店員教育を頼まれてしまったのだ。『だって、シャルってさぁ、頭良いし、顔も良いし、性格も良いし、俺、シャルの友人って事が1番の自慢なんだぜ。そしたらさ、親に自慢したいじゃん。で、連れて来たら、案の定、両親に気に入られたし。』『あのさ、何処を突っ込んだらいいか判らないボケは辞めてくれる⁉︎ ホントにもう家に帰りたいんだけど。兎に角、冗談抜きで店内の商品と価格は覚えろ。』


 さっさと帰りたかったのに、あっという間に夏休みが残り10日になってしまい、カルストに出した課題は残っているが、いい加減面倒見切れないと判断し帰省した。待ち疲れた〜と嘆かれたが、馬車で片道2日掛かるので、ほんの少ししか一緒にいれない。と話したら、リルルがくっついて離れなくなった上、帰寮の際にも泣かれてしまった。両親とも相談して『家族で王都見物をしようか。冬休みに王都でデートしよう。』とリルルと約束した。僕も2学期を頑張るご褒美が欲しかったのだ。


 寮に戻ったらカルストが部屋で不貞腐れていたが、僕の方が怒っているのだ。ワザと無視して夕飯を食べに食堂に行くと、慌てて付いて来た。僕はこんなペットを飼った記憶は無い。と思いながら、夕飯を食べていると、あの後、家でしごかれたとポソポソ喋り出した。『跡取りの長兄はしっかりしていて安心、長女の姉は穏やかだが的確に状況を判断して嫁ぎ先の店で采配を振るっている。次兄も鋭い感覚で商品の目利きが出来るって両親は言うんだ。僕にはスペアになる必要も無いのに、なんであんなに叱られなきゃならないんだ。』とグチるので、『僕は跡取りの長男だから、同じ年ではあっても、君と基本的な心構えが違う。』と指摘し、『自分を甘やかすのを辞めて、自分の出来る事を頑張れ。としか言えない。』と言って席を立った。僕の貴重な夏休みを返してくれ!と言いたかった。

部屋に戻り、リルルに貰ったループタイを眺めて心を落ち着ける事にしよう。


 これ以降、カルストの事は最低限の対応のみにして、干渉しないようにした。親切にし過ぎたから異常に付き纏われるのだと気付いたのだ。彼が頼るべきは他人の僕ではなく、実の家族にするべきだ。何より彼の僕に対する執着心は異常としか思えない。


 冬休みになり、手紙で知らされた通りに家族が王都にやって来た。2泊3日で帰る予定で、今日はリルルと王都のデートをする。の前に、リルルお手製のマフラーを貰った。王都でも見た事のない手の込んだ編み模様で、すれ違う人の目を引いていたが、リルルは気が付かない。僕は嬉しいのとリルルが誇らしいのとで顔が緩みっぱなしだ。『ね、リルル。王都の本屋は凄く大きいんだよ。楽しみにしていてね。』リルルが喜ぶ処を考えてみたが、カフェより、雑貨屋より、本屋だろう。と思い、最初に本屋へ向かった。のだが、道順を選び間違えたようだ。気付かずにカルストの実家の店の前を通っていたのだ。リルルと話しながら歩いていると、僕を呼ぶ声がした。


 『シャルさん!そのマフラーをよく見せて頂けません?』ナント、カルストのお母さんだ。『こんにちは。ご無沙汰しております。えっと、ちょっと急いでおりますので、今日は遠慮させて頂けるとありがたいのですが。』と答えたが、『そう仰らずにお願いします。何でしたら、そのマフラーを貸して頂くだけでも。』と、捕まってしまった。と、リルルが『おばさま、申し訳ありませんが、それは私が兄の事を想って編んだ物なのです。そのようなイケズをなさらないで下さいませ。そのマフラーと似た様な物でしたらザキュの街の商店で販売しておりますので、そちらでお求め下さいな。それでは、待ち合わせに遅れては大変なので、此方で失礼させて頂きます。』と答え、僕の手を引いて歩き出してしまったのだ。ナイスジョブ!カルストのお母さんは幼いリルルの姿から出たとは思えない大人びた物言いに順応出来なかったらしく、ポカンッと口を開けて見送っていたが、ハッとして『シャル君の妹ちゃん⁉︎』と叫んでいた。


 本屋でのリルルはもう兎に角可愛いかった。アッチキョロキョロ、コッチキョロキョロ。少しも落ち着かない。さっきの大人びた態度は何処に落として来た?と言わんばかりの喜び様に、僕のチョイスは正解だとホッとした。『リルル、どんな本が欲しいんだ?一緒に探してあげるよ。』と声を掛けると、『たくさん有り過ぎてわかんない!幸せ過ぎる〜』と満面の笑みを浮かべる。と、此処でまた声が掛けられた。『シャル君?その可愛い子は誰?紹介してもらえるかしら?』振り返るとクラスメイトが数人集まっていた。『お兄ちゃん、この人達は知り合い?』とリルルが聞いて来たので、『お兄ちゃんのクラスメイトだよ。』と答えて背中に隠した。『僕の妹だけど、怖がるから囲まないでくれるかな。』ナンデ⁉︎級友とは普段本屋で会った事なんて無いぞ!と思っていると、『カルストがさ、シャルが可愛い子を連れて歩ってるのに紹介してくれなかった!って騒いでるから皆に声を掛けて探しに来たんだよ。』と、面白がって集まった事を教えてくれた。『皆、家の手伝いしてないのか?ってか、噂が回るのが速過ぎる!』と呆れてつぶやくと、カルストの次兄が皆の後ろから顔を出して、『妹って事はそのマフラーを編んだ本人か?まだ小さいじゃないか⁉︎シャルの兄妹って天才揃いなのか。』と余計な事を言い出した。マフラーやループタイを見て集団で騒ぎ出したものだからお店から追い出されてしまい、リルルはガッカリして苛立ち始めたようだ。『お兄ちゃんのご友人様方は買い物をするお店でのルールをご存知無いのですか?王都の上級学校でこんな初歩等は教えていないかもしれませんが、通常、幼少の頃に家庭内で教育されますでしょう?私は兎も角、兄が本屋さんを出禁にされでもしたら如何なさいますか?必要な本が入手出来なくて不利益を被るのはなんら失点の無い私の兄なのですよ!』本屋の店を出て道の端に除けると、リルルは静かにでも透き通った声で畳み掛ける様に話し出した。滅多に見ないブラックリルルの降臨に、僕は苦笑するしかない。こうなったリルルは相手が非を全面に認め謝罪するまで容赦なく切々と責め立てるのだ。


 両親がたまたま通り掛かり、『本屋の店主は知り合いだから一緒に謝りに行ってあげようね。』となだめてくれたので、その場は解散になった。自分より年齢も体格も上の連中を捕まえて、理路整然と嗜めるリルルは格好良く、僕は気分が良かった。後日カルスト兄弟が、『リルルを紹介して欲しかっただけ。』と謝りに来たけど、アイツらに紹介するなど絶対に有り得ない。父さんから『リルルを嫁に出す予定は無いし、無能な奴を受け入れなければならない落ち度などリルルには無い。と宣言しておいてくれ。』と便りが届いた。マフラーを買い付けに行ったカルストの親からは、カルストを婿に出す話しまで出たらしいが、夏休みに僕が帰れなかった理由を知っている両親は、『リルルに不良物件を押し付けられる謂れは無い。今後、シャルとの付き合いも遠慮したい位だし、今回の取引もうちが望んで申し出た取引では無いし、縁が無かったという事でお引き取り願いたい。』と、出禁宣言をする程に激怒したらしい。リルルはザキュの街の商人達に愛されてるから、父の出禁宣言を伝え聞いた他の商店からも取引の縮小やら何やらあったようで、間に人を挟んで謝罪が来た。と、わざわざ寮の部屋替えを申請しに来た父に聞いた。あの親あってあの子有り。って事だな〜と納得した。僕も自習室に籠らずに勉強したいからルームメイトの交代は嬉しい。学校は後2年で卒業。学べるだけ学んでザキュに帰るぞ。

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