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フリーダム  作者: 清香
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37 最初の子離れ

 タチアナとマチルダ様が大学に入る前の休みを使って、サムソン様とタチアナ、オルフェウスとマチルダ様の合同婚約式を対外的に開きました。早ければ1年後には合同結婚式を挙げられるからです。サムソン様はオルフェウスの為に待ってくれるそうです。


 最初はオルフェウスとマチルダ様の婚約式だったのですが、シュナイダー様の件を重く見たリチャード様が『内内で済ませた結果、ミランダとシュナイダーが暴走した。チャールズ様のご両親が再教育して下さっているが、正直、アレらの考えは私達もチャールズ様も理解出来ない。チャールズ様をこれ以上苦しめない為にも合同で開きたい。』と申し出てくれたのです。


 マディソン様とサムソン様に、リチャード様の提案を相談すると、『此方こそ喜んでお願いしたい!』と言って頂けました。やはり、シュナイダー様の件は気にしておられたようです。兄様の店でお会いしたチャールズ様の話しでは、ミランダ様と離されたこの3年でかなり常識を学ばれて、自分の過去を反省されたそうです。アレ以降、侍従の働きも有って、タチアナに纏わりつかなくなりましたが、私達はまだ許した訳ではありません。


 婚約式当日は良く晴れて、訪れた皆様も晴れやかでした。双子コーデの衣装を身に纏ったマチルダ様とタチアナを挟んで、オルフェウスとサムソン様が両側に立ち、皆様を出迎えました。司祭様に見守られて婚約届けにサインしたオルフェウスとマチルダ様に盛大な拍手が降り注ぎます。無事に式を終え、ガーデンパーティーになりました。


 友人達に囲まれている子供達を笑顔で眺めていると、チャールズ様と司祭様がいらっしゃいました。カルディロとセシリアに寄り添って?ギルバート様が並んでいるのを確認されたようです。『クライド様、此処はもう一組、ギルバート様にもお声を掛けて頂きたかった。』と司祭様がおっしゃるのを受けて、『私も提案はしたのですが、カルディロ様がお一人浮いてしまう。と申されては、其処を無理強いする事は出来ませんでした。』とリチャード様がチャールズ様を庇うようにおっしゃりつつ、周囲を牽制しておられるようです。


 セシリアはギルバート様に申し込まれたので、進路を上級学校に変えました。最初は楽しげなタチアナに影響されて魔術学校に進学予定だったのに。カルディロは予定通り魔術学校に進学して、聖魔法を研究するそうです。カルディロ自身が司祭様の話しを受けて教会入りを決めたので、司祭様付きとして教会に通い始めてます。毎回ではありませんが、礼拝所の清掃活動をすると高確率で女神様に呼ばれて消えているようで、その為の司祭様付きらしいです。


 今回の合同婚約式もチャールズ様だけのご参加になりました。ミランダ様の洗脳は深刻なご様子で、リチャード様のご両親も参戦しているそうです。ホント、ドウシテアアナッタ?と言うミランダ様の態度でしたから、子爵夫人の悪行は罪深いです。見落としていたご両親が、チャールズ様のご両親に平謝りでミランダ様を嗜めていらっしゃるそうです。チャールズ様のご両親の言い分として『あの人柄では悪意ある者の裏を見落としていても仕方ないだろう。』とお聞きしました。


 盛大に開いた婚約式のお陰で、子供達は伸びやかに学生生活を過ごしているようです。オルフェウスやカルディロに近寄って来るバカな下級貴族子女がいない訳ではありませんが、総て無視されています。悪質な場合は結界で隔離して晒し者にした。と聞き、仕方ないか…と苦笑してしまいました。


 下級貴族の子女教育が必要なのでは?と改めて思いましたが、私はする立場では有りませんし、国としては、『切り捨てる良い目安にしている。』という裏話を耳にしましたので、触らぬ○○に。という事です。そう言えば、シューマッハ様の離縁された奥様の実家も、奥様と次兄を廃嫡しただけでは足りなかったらしく、平民にした二人が更に騒ぎを起こしたせいで爵位を取り上げられそうです。『お陰でパレルと無事に離縁が出来ました〜』と、ワイマール義父様に報告に来たニモ男爵から教えられたそうで、又聞きした話しですが。ニモ様は手芸学校でやらかした奥様と娘の謝罪に来た縁でワイマール義父様と知り合い、世間話しのついでにシューマッハ様の話しを持ち出して、自分も離縁したいのに。と愚痴ったそうです。パレル親子に怒りを覚えていたワイマール義父様は、悪い笑顔でニモ様に力を貸して、離縁に繋げたそうです。


 因みに、例の『本家の伯爵家』とは、あのアルバ様に迷惑を掛けた伯爵の家だったそうです。そうして爵位が下がった男爵が多いから、まともな男爵に皺寄せが行くのですね。と気付き、伯爵位を贈って下さったマーコック様に感謝し直したのは言うまでも有りません!


 マーコック様と言えば、お気に入りのセシリアをギルバート様に取られ、カルディロを教会に取られてしまったのですが、どうしていらっしゃるのでしょうか?ギフト用に各種ポーションを作りながら、ふと、マーコック様に考えを飛ばしてしまいました。


 帰宅したクライド様にワイマール義父様からお聞きした話しを伝えて、『マーコック様のご様子を何かお聞きになってませんか?』と尋ねると、『タチアナがサムソン様に嫁ぐ事が決定して、今は秒読みの期間だから何の心配も無い。』と笑われました。元々、タチアナはサムソン様が手に入れるからと騒がなかっただけで、お気に入りの孫だし、セシリアを嫁がせる孫は居ないから、手元に置けないと分かっていての対応だったそうです。タチアナも気に入られていると聞いて安心しました。マーコック様は、タチアナにだけは騒がなかったので、嫁がせて大丈夫かと内心心配していたのです。


 用意したポーションを専用のマジックバッグに詰めて、クライド様に託します。メリッサ義母様経由でマーコック様に贈るのです。あ、マジックバッグですが、兄様の店で少量と、ワイマール義父様のギルド用に毎週数点だけ卸してます。ちゃんと兼ね合いを考えた数量と価格設定での販売です。


 一時期凍結していた訳ですが、性能の違いが大きかったみたいで、販売再開の陳情書が商業ギルドに届いたそうです。其処で市場を荒らさない為に商業ギルドが取り仕切る事で販売開始しました。と言っても、私は付与だけですが。バッグ本体からつくるのは兄様の店で売る秘密の分だけです。半分オーダーメイドと言っても間違いでは無いかもしれません。対象はカードの持ち主と、兄様達が許可した相手だけなので。所謂、幻シリーズでの取り扱い品という事です。


 テレサ義姉様プロデュースの『手芸学校シリーズのコーナー』も充実して来て、お店の半分がアクセサリーと手芸品で埋まりつつあります。ザキュにある実家のお店に近付いている気がします。取り扱っている商品は高額な物が多いですけど。


 兄様のお店には学校帰りの子供達も時折り寄っています。休日には、マチルダ様とタチアナが材料を買って、手芸コーナーの一角でお揃いのアクセサリーを作っているそうで、カルディロが居合わせると出来上がったアクセサリーに聖魔法を付与する事もあるとか。お客様から羨ましがられていますが、子供達に強請るバカはジイドさんに叩き出されているそうです。


 子供達の将来がほぼ決まったせいか、穏やかな時の流れになった気がします。目まぐるしい勢いで流されていた10代が遠い昔に感じます。頂いた領地もクライド様が上手く経営しておりますし、広がり過ぎた薬草園は、魔術学校管轄が8割、残り2割を冒険者ギルドが管理して運営しています。野生の薬草との品質の差が広がり過ぎて、冒険者ギルドからクレームと言うか、補填依頼が来たのです。


 私の提案で、薬草採取が格段に進歩したとは言え、薬草園レベルの薬草を採取するには、かなり奥地に入らねば生えていません。そんな危険地域に行けるレベルの冒険者なら、魔獣確保に重きをおきますから、薬草採取なんて依頼は余り受けません。魔術学校の管理している薬草から作られるポーション類は王宮管理になる物が多く、市販に出る量が少ないのです。国としてポーション産業を輸出品の目玉にした事も有り、手に入り難い一般の冒険者から苦情が上がったのでした。


 私が作ったポーションは商業ギルドにも卸してますが、兄様のお店に卸している事も有って、量は少ないです。腕の良い錬金術師は王宮に所属している方が多いですし、個人で作成販売なさっている方を捕まえるのも最近では難しいと聞いてます。…ヴェルムの薬草園に集まった錬金術師の玉子達は、其処で雛となって成長して、ヴェルムの薬草園に居付くか、自分の領地に戻るかの選択をして、薬草園に残ると決めたなら、自動的に王宮所属となるからです。


 ヴェルムの領地の隣り、小高い丘の向こう側にも荒地が広がっていたのですが、業績が認められたのと、ポーション製作所が狭くなって来たのを見かねたクライド様の上司の奏上に依り、丘の向こう側の荒地を領地として加領されました。元はチャンパギという街を治めていた伯爵の領地でしたが、本人が男爵に落とされた時に、領地経営を疎かにしていたせいで開発されずに放置されていた土地とバレたので、取り上げられたそうです。


 加領を聞いたシックギター先生が駆け付けて、さっさと冒険者を集めて魔獣を捕獲して荒地を制圧すると、職人を集めてポーション製作所を中心に住宅まで建ててしまいました。規模としては町でしょうか?半年程の期間しか無かったと思うのですが?そして、看板には『魔術学校・第3支部』の文字が掲げられてます。ま、良いんですけどね。私よりクライド様の方が乾いた笑いをしています。


 製作所の開所式にはシックギター先生を従えて、タブロイド様が来賓にいらっしゃいました。なんと、製作所の一部にポーション用のマジックバッグ制作所を併設するそうです。輸出先の王家を含む貴族から、『貴国では専用のマジックバッグまで販売していると聞いた。国同士の通いバッグでは無く、専用のマジックバッグを含んだポーションの販売を求める。』と訴えられたそうです。幾らポーションの性能を落とさない為とは言え、性能が良いマジックバッグが販売され無いのは酷く無いか?コレでは単なる見せびらかしでは無いか!と多数の声が上がったそうです。


 時間停止と容量が大きいから通い袋にしたのです。流石にあの性能だと、私以外ではタブロイド様と、シックギター先生がぎりぎりでしょうか?でも、容量の少ない時間停止なら何人か作れる人がいる筈です。…因みに、あのバッグはシックギター先生が時間を掛けて、マジックポーションを飲みながら作った事になってます。私ですら、1日1個がやっとでしたからね。


 久し振りに慌ただしい日々を過ごしましたが、間に合わない時だけシックギター先生が魔石を持って来て、隠れて付与する事を約束して、私の手からは離れました。



 待ちに待った?合同結婚式です。晴れ上がった空の下、2組の新郎新婦が教会に並んでいます。司祭様の差し出す婚姻届けに神妙にサインする4人。皆、幸せに輝いています。


 何処からとも無く祝福の花が舞い落ち。って、カルディロの聖魔法でした!驚く4人と、集まった人達の顔を眺めて悦に入ってます。嬉しいサプライズですから怒る人は居ません。カルディロの後ろにうっすらと女神様が見えた気がしましたが、きっと、覗きにいらしてましたね。


 結婚式の披露宴にはチャールズ様とシュナイダー様の姿が有ります。この1年、同じ大学で接したマチルダ様の許可が出たので招待しました。…サムソン様に謝罪されたのが決定打でしたね。『本当にタチアナを好きだった。』と告げて、『タチアナへの恋心は封印した。』と宣言されたそうです。サムソン様も、『今のシュナイダー様なら、次は良い恋が出来るでしょう。』と励ましたそうです。


 恋と言えば、セシリアはギルバート様から贈られた、ギルバートカラー満載のドレスとアクセサリーで、ギルバート様の隣りに居ます。家に迎えにいらした時からずっと、片時も離されません。意外と、執着なさる方なのでしょうか?と怪しんでいると、カルディロがそっと教えてくれました。


 セシリアはね、末っ子で皆が甘やかすから、人の悪意に気付けないんだよね。と言うか、かなりの数の子息に言い寄られているんだけど、気が付かないから流しちゃう。セシリアは、『私にはギルバート様って言う婚約者が居るからモテないよ。』って言うけど、正式には届けを出していないから、男性陣からすれば違う訳。だから、隙あらば!って狙われて居るんだ。ね、ギルバート様が焦っていても当然でしょ?


 あ、なんか耳が痛いかも⁉︎結婚した当初、良くクライド様に言われたセリフです。セシリアの鈍感さは私の遺伝かも…?


 兎も角、無事に式が終わり、其々、旅行に出掛けました。タチアナが旅先から帰る家はサムソン様の住んでいる、王都のタウンハウスです。暫くは二人で暮らして、タチアナの卒業を待って領地に戻るそうです。今、サムソン様は王宮に出仕していますが、将来的にはマディソン様の補佐をしながら領地経営をするそうです。3年後を考えると少し寂しい気がします。


 オルフェウスも新たにタウンハウスを建てて、新居で二人暮らしです。ゆくゆくはヴェルムで暮らしますが、マチルダ様が学生の間は好きな事をして欲しいです。オルフェウスもまだ学生ですし。

 

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