32 貴族って凄すぎる…
オルフェウスが3歳になって、妹のタチアナが産まれました。タチアナもそこそこ魔力は多い方ですが、取り敢えず通常の範囲内を掠めていたのと、オルフェウスが目立ち過ぎたので、騒がれずに育ってます。因みに、女神様に紹介させて頂いて、同等の加護を頂いておりますので、魔力暴走の恐れはございません。(笑) オルフェウスの時に懲りたので、お披露目も家族で済ませ、友人と言う名のお貴族様方へはお手紙で知らせるに留めました。…産まれてから半年後に。
もう、お叱りの嵐でしたよ!(泣) 何故、出産を隠していたのかと。リアージュ様やソリアス様は勿論、何故か、チャールズ様やリチャード様から迄、お祝いの品を持って、押しかけて来られました。オルフェウスの時の様にタチアナを抱き回して泣かせてしまい、婚約云々の話しは有耶無耶になりましたけど。…こうやって、婚約騒ぎをするから隠していたんです!とは言えませんでしたけど。
後日、ポーション類を納品にお店に行くと、疲れた顔のシャル兄様やテレサ義姉様、アリエス義姉様、ジイドさんが居ました。皆様が買い物にいらした際に、『何故、タチアナ嬢の事を内緒にしていたのかな⁉︎』と愚痴愚痴と責められたそうです。『こんな処に迄余波が!』と驚き、皆さんに謝り倒しましたが、納得いかない私が居ましたよ。
因みに、クライド様は職場でかなりのブーイングが有ったそうで、『次の子の時は、諦めて、直ぐに、発表する。』と言質を取られたそうです。それを聞かされて、『もう、意味が分かりません。笑うしかありません。』と返事してしまった私は可笑しくありませんよね?
魔力重視。と迄は言いませんが?貴族にとって魔力が多いのは良い事なのだそうです。私は平民と言う身分が隠れ蓑だった様で、クライド様とワイマール義父様の陰謀も合間って気付かれずに済みました。でも、オルフェウスは貴族籍に生まれ、豊富過ぎる魔力の存在で一気に話題になって悪目立ちしてしまった。という事みたいです。しかもミタチアナと二人で公爵家の二家から繋がりを持たれたがっている事がバレたので…
リチャード様の長女のマチルダ様がタチアナと同い年で産まれていて、ワイマール義父様を通して、オルフェウスとの婚約の話しが出ていますし、昨年誕生されたチャールズ様の嫡男のシュナイダー様にタチアナ嬢が欲しい。とつい先日、婚約の申し出が有りました。家格の問題で我が家からはお断りし辛いので、本人同士の意思を優先する事を明記した、婚約者候補。と言う立ち位置でお願いする事を家族会議で決めたばかりです。
なので、クライド様の同僚の方々は、『まだ産まれていない第三子を狙え!』と言う事らしいのですが、ホント、何を狙っているのでしょうか。
取り敢えず、婚約フィーバー⁉︎が収まった様なので、日常生活を取り戻すべく、地に足をつけた行動に戻りました。オルフェウスはカーディナル様の指導が合っている様で、4歳になった今では、既に魔力操作が完璧に出来ます。私が薬草に魔力を振り撒いて育てているのを見て育ったせいか、何の疑問も持たずに薬草に魔力を放出して、カーディナル様を慌てさせていますが、お蔭で、薬草園は盛大に育ち過ぎてます。(笑) 魔力過多の薬草という意味で。
タチアナの3歳の誕生会に招かれたチャールズ様の嫡男のシュナイダー様が、初対面のタチアナに『僕だけを好きで居ないといけないからな!』と挨拶代わりに言い捨てる事件が有り、怒ったオルフェウスに結界で隔離されてしまいました。タチアナはというと、『私は兄様の様な優しくてしっかりした方が良いです。』とさらりと言い退けて、オルフェウスの後ろに隠れてしまいました。
チャールズ様がワイマール義父様に、『まだ、婚約者候補でしか無い。と伝えたので、シュナイダーは焦って言っただけなのです。此れから教育して行きますので、お見逃し下さい。』とお願いしてます。クライド様は『コレミタコトカ!』と言う顔付きで薄ら笑ってますねぇ。ミランダ様は隔離されて泣いているシュナイダー様に寄り添って居ますが、オルフェウス達の事を睨んでますね。
リチャード様のご息女のマチルダ様はオルフェウスの事が好きらしいのですが、オルフェウスがタチアナばかり構うので面白くなさそうにしてます。でも、タチアナはマチルダ様が気になる様子で、なんとか話し掛けようとしているのですよね。マリアン様がそれに気付いた様で、お菓子を持って二人に近付くと、マチルダ様に何やら話しています。あら。マチルダ様がタチアナにお菓子を渡して話し始めました。
マリアン様はそっと私の隣りに来ると、『オルフェウス様が好きなら、オルフェウス様の大好きな妹のタチアナ様と仲良くならないと、マチルダの事を見てもらえませんよ?マチルダもシュナイダー様のように隔離されても良いのかしら?と伝えたのよ。』と笑ってます。将を得んとすれば先ずは馬から。という事ですよね?流石です。
えっと、マリアン様、もしかしてミランダ様と仲が良く無いのかしら?そう言えば学生時代に、ミランダ様は筋金入りのブラコンと言う噂をお聞きした記憶が微かに有りましたね。私は勘違いで無ければチャールズ様に守って頂いていた様で、接点が無かったので直接は存じ上げませんでしたが、当時、リチャード様に言い寄った令嬢は悉くミランダ様に虐められて諦めた。と聞きました。まぁ、当時のリチャード様はマリアン様一筋でしたから、ミランダ様が出しゃばって来なくても、結果は同じだったと思いますけど。
ワイマール義父様に諭されたオルフェウスが渋々ながら結界を解き、シュナイダー様はミランダ様に抱き付いて泣いていますね。ミランダ様は何故オルフェウスが隔離したのかを説明する気は無さそうです。更にマチルダ様と話しているタチアナの事も睨んでますね〜今からコレでは、安心してタチアナを嫁がせる事は無理そうです。チャールズ様には申し訳有りませんが、縁は無さそうですね。
実は、メリッサ義母様の実家の侯爵家からも、タチアナにはお話しが来ています。『従兄になるサムソン様はタチアナの5歳上なので、候補の一人にカウントしておいてね。』といった軽い物ですが、オルフェウスがサムソン兄様と呼んで懐いているのもあって、仲が良いのですよ。今回はチャールズ様御一家を招待しない訳にいかなかったので、忖度して呼べませんでしたが。
気が付くと、タチアナがマチルダ様と楽しげにお喋りしている横で、オルフェウスが見守っている状況ですね。シュナイダー様はミランダ様の膝で寝ているみたいです。リチャード様とチャールズ様はクライド様と仕事の話しの様ですし、マリアン様は私と一緒に⁉︎子供達を見守って居ます。
鮮やかな薔薇色の夕焼けと共にお誕生会がお開きになり、タチアナと仲良くなったマチルダ様が、公爵家に誘って下さいました。タチアナも『兄様と一緒なら。』と答えていますし、オルフェウスも『タチアナ一人では粗相があってはいけないから。』などと答えて、大人達から暖かい笑みを得ています。私は心の中で策士マリアン様と呟いてしまいました。(笑)
子供達をスザンヌに預けて、今日のシュナイダー様やミランダ様の態度に付いて家族会議を少しだけしました。四人一致で、現時点では婚約者候補でも有り得ない。となりましたよ。オルフェウスが4歳の頃を思い出しても、シュナイダー様は考えが幼過ぎるし、上から目線で傲慢過ぎます。チャールズ様のお子様とは思えないとガッカリしました。今日の言動を見るに、多分、ミランダ様の悪い処に影響されたのでしょう。『まだ幼いですし、単なる候補ですから。』とメリッサ義母様が、猶予を与える提案を出したので、一応、候補の解消を告げずに様子を見る事になりました。
学校に入れば、皆、学生時代が被ります。様々な交友関係を経てからでも婚約は遅くは無いと私は思うのですが、貴族は違うみたいですねぇ。…クライド様が私と出逢うまで婚約者が居なかった理由が知りたくなりましたよ。
オルフェウスが糸を通した針を持って、タチアナが大きめのビーズを使ってブレスレットを作ってます。マチルダ様とお揃いのブレスレットを作って、プレゼントしたいと言い出したので、材料を用意しました。ビーズ用の針はドロテスさんに頼んで、針先を丸めて作ってもらいましたので、手には刺さりません。刺繍よりも安全なのですが、それでも心配な男性陣に囲まれてタチアナはちょっとだけ不満気味な顔付きです。(笑)
私はマリアン様用に花のモチーフを連ねたブレスレットを作ってます。タチアナの作るブレスレットと色を合わせているので、少し可愛いですが、『マチルダ様とペアでお使い下さい。』と渡してもらう予定なので、喜んでもらえると思います。…マリアン様は可愛い方ですから似合う筈ですし。
オルフェウスが新しい針と糸を取りに来ました。タチアナのを見ていて自分でも作りたくなったそうです。寒色系のビーズを添えて渡すと、私の隣りで作り始めました。オルフェウスが色の順番を考えながら板に置いています。板には大中小の三個の円が彫られていて、誰が作っても同じ大きさになる様にしてあります。
昔、技巧神様が作ってくれた物をドロテスさんに金属で複製してもらって、ザキュで使っていたのですが、それを見つけたワイマール義父様が、『金属では重いので手軽に持ち運べない。』と木材工房に依頼して手芸学校用に作り、今ではギルドでも販売してます。ネックレス用のと、ラリエット用のと、三種類とも登録はザキュでしてあったので、悔しがられたのを思い出しました。…私はインベントリに入れていたから重さは気になりませんでしたし、ザキュでは工房に置いてましたから金属でも問題無かったのですよ。
オルフェウスが自分用のブレスレットを完成させて、腕に付けて見せてくれました。配色に凝っていて素敵に出来てます。タチアナが欲しがってますが、『我が儘を言ってはダメよ。それよりも兄様にタチアナ用の配色を選んでもらって一緒に作ったら如何かしら?』と言い聞かせます。多分、タチアナはマチルダ様の配色で疲れてしまって、自分用のブレスレットを作る気力が無くなったのだと思うのですよ。配色さえ決まれば、ビーズを糸に通すだけですからね。
オルフェウスにも、『一緒に考えようね。』と促されて戻って行くタチアナは、まだ3歳なのにしっかりしていると、嬉しくなりました。クライド様もタチアナとオルフェウスの態度に感心してます。二人を見ながら、『やっぱり、シュナイダー様の態度は残念過ぎますよね?チャールズ様がこれから〜とはおっしゃってましたが、三つ子の魂百まで。とも言いますし、間に合うでしょうか?』と小声で話し掛けると、『無理じゃないかなぁ。私ならサムソン様を推すよ。5歳離れている。って言うけど、私達の間柄とそんなに変わらないでしょ⁉︎ 似合いの夫婦になれると思うよ。』と言いますけど、それって惚気かしら?私の顔が赤くなってしまいました。




