3 3年生になりました
私の通っている学校は街中に在るせいか、計算や読み書きが重視されていて、その上、歴史まで教えています。とは言っても、王様の偉業とか貴族は偉い。って話しが多いのですけど。でも、時々、神様が遣らかした〜とかいう話しも合って、この世界の神様は自由に顕現するもんね。と洗礼式に来てくれた技巧神様を思い出したりしながら授業を受けています。そうそう、魔法ってね、やっぱりお貴族様がメインに使うそうで、私達平民⁉︎はあまり使えないらしいです。身体強化とか気配察知とか、冒険者ギルドに入っている人は使える人も多いらしいけど、攻撃魔法の遣い手は少ないようで、もっぱら身体強化して武器を使うらしいです。なんで『らしい』ばかりかと言うと、ヤンチャな男の子達の話しをこっそりと聞いているだけだから(笑) 私の創造魔法なら、武器の製造も出来そうですけど、お貴族様に目を付けられたく無いからしませんよ!どうせ創るなら可愛いものや綺麗なものの方が良いですからね。大体、自分が使わない物に興味が無いのですよ。だから、お兄ちゃんが使う必要性が出て来たら考えるかも⁉︎
何事も無く年が過ぎ、ついにお兄ちゃんが王都の学校に入学してしまいました。6年間首席を通したので街長の推薦も合って、貴族も通う上級学校に入学したのです。お兄ちゃんは、『平民は1組しか無いし、学校内の住み分けはされてるから、お貴族様から理不尽な扱いはされないと思うよ。』と言うのですが、ちょっとだけ心配です。お兄ちゃん、格好良いし、王都の女の子達に捕まって帰って来なかったら、私、泣いちゃうかも。『例の件でお小遣いはいっぱい有るからね。お土産を期待してね。』とギルドカードを見せて、王都へ旅立ちました。
そして私は3年になって少しだけ変化が有りました。図書委員になったのです。サーシャも誘ったのですが、『手芸は好きだけど、読書は遠慮。』って逃げられちゃいました。私と一緒に図書委員になったのはトマス君です。トマス君家はこの街唯一の本屋をしていて、彼は私と同じ位の読書家です。トマス君情報では、6年生の委員はトマス君のお兄さんのルーカスさんが入っていて、委員長に決まっているそうです。ルーカスさんは図書室の本は全部読み終えた。と噂される程の読書家です!お兄ちゃんの次ぐらいに好きな人かも。相手にもされてませんけど。1年間、同じ委員会活動をするので、トマス君の同級生から脱却して、名前を覚えてもらおう。と言うのが私の野望です。私の知らない本の中からお薦めを教えてもらったり、同じ本を読んで感想を語り合ったり、まぁ、夢ですよ。ささやかな夢ぐらい見てもいいよね。
サーシャは美化委員会に入りました。『刺繍をするにも、ビーズ細工をするにも、実際の花を良く観察すると綺麗に作れるよ。』と私がアドバイスした事を覚えていて、花壇の手入れをする美化委員会を選んだそうです。サーシャは『学校を卒業したら、そのままお母さんの工房に入って仕事覚えてお店を継ぐから、今からアイデアの引き出しを沢山用意するの!』とやる気満々です。私もお母さんの工房に入り浸っているし、お父さんから支店を1つ預けてもらって手芸店を経営するのも良いなぁ。自分のお店だったら、インベントリの材料使いたい放題⁉︎出来るし、女神様との約束も果たせるから、私のスローライフの目標はコレで決まりですね。
『手芸倶楽部に入って欲しいの!』 委員会が決まったのでサーシャと帰ろうとしたら、ルミエールちゃんに声を掛けられました。3年生になったので、放課後の倶楽部に入会出来るのだそうです。サーシャと私は其々の家の工房で作品を作っているので、放課後に暇な時間は在りません。『私達は入らないよ。』と言うと、ルミエールちゃんのお姉さんが入っている手芸倶楽部に絶対入って欲しいから、誘って連れて来る様に言われたのだそうです。私達が行かないとお姉さんに怒られる。と泣き出してしまいました。ルミエールちゃんは大人しい優しい女の子で、余り自己主張が出来ない子なので、お姉さんに逆らえないみたい。サーシャに目で合図して、『ルミエールちゃん、その倶楽部に連れて行って⁉︎ 私達、2人とも入れません。ってルミエールちゃんのお姉さんに直接話すから。』と言いました。
ルミエールちゃんは同級生だし、友達だから、誘ってもらうのは嬉しいけど、相手の都合を考えずに一方的に呼び付けるのに使うのは、たとえお姉さんでも間違っていると思うのですよ。サーシャも私と同じ意見で、ちょっと怒っています。手芸倶楽部の使っている教室に着き、ノックをしてドアを開けると、お店の講習会に来ていた子が何人か居るのが見えました。『ようこそ、リルルちゃん、サーシャちゃん!待っていたわ!』教室の奥の黒板の前から声が掛かりました。『済みません。私達が行かないとルミエールちゃんがお姉さんに怒られるそうなので、直接、入部のお断りに来ました。私達2人とも放課後は家の手伝いがあるので、倶楽部で遊んでる暇は無いのです。』サーシャちゃんが一気に宣言すると、『話しが違うじゃない!』とか『誘われて喜んでいる。って聞いてたけど、嘘だったの⁉︎』とか、ザワザワしだしました。講習会で一番熱心だったので記憶に残っている子が出て来て、『私達は2人が入部希望者だと聞いていたの。リルルちゃんもサーシャちゃんもビーズ細工や刺繍が上手だから、一緒に活動して、いろいろ教え合っていける。って待っていたのに。』と言われ、ため息を吐かれました。『済みません、そう言われても、手芸倶楽部の話しはついさっき、ルミエールちゃんに初めて聞いたばかりですし、放課後の時間については家族に相談しないと、勝手に予定は組めません。私もサーシャちゃんもお家の手伝いが優先事項なんです。』一方的に決め付けられて、サーシャちゃんはお怒りモードなので、私が説明すると『行き違いが有る事は判ったけど、あなた達にだって遊ぶ時間はあるでしょう?その時間に倶楽部活動をするのはどうかしら?』と対応が変わって来ました。サーシャちゃんは『正直に言って、此方の都合も考えずに一方的に呼び付けられた印象があって、そんな人達と一緒に居たくない。って思ってお断りに来ました。でも、毎回は出席出来なくて、しかも私達の都合の合う時だけ来ても良いのなら、『もちろん!大丈夫よ!毎回来て先生役をしてくれたら凄く嬉しいけど、時々でも教えて貰いたいわ!』サーシャちゃんが話している途中から割りこんで来た人にルミエールちゃんがこそッと『お姉さん…』とつぶやく声が聞こえました。先程の人がコホンッと咳払いをして『私が部長のマリエです。あなた方の入部を歓迎します。発表会用の大作を作る時は全員で作品に取り組む事もあるけど、基本的には個人の作業だから、毎回でなくても大丈夫なの。だけど、アデニールが暴走したらごめんなさいね。アデニール!2人とルミエールちゃんにきちんと謝ってね。ルミエールちゃんを泣かさないように!』小さい⁉︎雷が落ちましたよ。
思いの外時間が取られましたが無事に話しがまとまり、私達は急いで帰りました。ナント!部長さんはルミエールちゃんのお兄さんの婚約者さんだそうで、アデニールお姉さんの暴走を何時も抑えているのだとか。恋バナ満開、違う意味で倶楽部活動が楽しめそうです。お母さん達からは、週に2回程度なら楽しんでおいで。と言われ、サーシャちゃんと相談して正式に入部届けを出しました。倶楽部の日には材料を持って行くので荷物が増えます。ロッカーの中を整理して仕舞えるようにしなくては。
何を作ろうか悩んだのですが、ちょうどレース編みにハマっていたので、ビーズを編み込んで襟飾りになる替え襟を編む事にしました。この街はシンプルなブラウスが多いので、襟を変えるだけでも華やかになるのですよ。皆はワイヤーを使うビーズ細工を期待していたらしく、最初のうちは皆さんの作っているアクセサリーへのアドバイスが多かったのですが、いつの間にか周囲もレース編みに。夏休みが開けて2学期になり、王都の冬は寒い。と聞いたので、今度はお兄ちゃんにマフラーを編む事にしました。かぎ針編みは綺麗に見えないので棒針で変形ゴム網を編み、途中で模様を入れて…と編んでいたら、何故か他の人達もマフラーを編み出して、今度はマフラー祭り状態。文化祭の出品は1学期に編んだレースの替え襟と、今編んでいるマフラーに決まりました。え⁉︎全員で作る大作は何処の行ったの?と思っていたのですが、お母様方に大受けでした。『売って欲しい。』とのお声も掛かったので、『替え襟はサーシャのお母さんのお店で販売されてますので、そちらへどうぞ。』と小声でそっとお知らせ致しました。マフラーはうちで売り出す予定で今、大量に編み溜めている処なので、まだご案内は出来ないのです。




