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フリーダム  作者: 清香
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29 祝!初産 〜 信賞必罰って基本よね⁉︎

 クライド様に似た男の子を無事に出産しましたが、私はまだベッドの上です?


 オルフェウスと名付けられた息子は魔力量が多く、丸々と太って産まれて来たので、とても難産でした。初産は難産が多いと予めお母さんから聞いていたので、私の心積りは出来てましたけど。『こんなに痛い思いをして私を産んでくれたのね。』と感謝している私をニコニコと見ていた親達と違って、予備知識の無かったクライド様が私より真っ青な顔をして、『死んでしまうかと思った。こんな大変な事をさせてしまって、私は…』と震えていたのが印象的でしたね。


 多少⁉︎出血が多過ぎて自力で後産が出来なかったものの、お医者様が優秀でしたし、こっそり自分にヒールを掛けて回復していたので、生命の危機とは考えてもみなかったのです。でもそんな事を知らないクライド様には、出血量の多さが衝撃的過ぎて、ショックが強すぎたみたいです。


 日常の事はスザンヌにほぼ任せて、私の主な仕事はオルフェウスのお世話です。母乳の出も良く、オルフェウスも沢山飲む為か、余り夜泣きもせず育ってます。何故か出産後暫くは水仕事はしてはいけないしきたりがあるそうで、まだ家事はさせてもらえません。本を読んだり、手芸をする様な眼を使うのも良くない。と言われてベッドでボウっと過ごしてます。楽をさせてもらってます⁉︎


 魔術学校の先生方やカードを贈った級友達が兄様の店で買い物をした時に、私に息子が産まれた話しを聞きつけてたそうで、お祝いに来て下さいました。オルフェウスの愛らしさに盛り上がっていたら、リアージュ様が『私が娘を産んだら、オルフェウス様の元に嫁がせたいわ。』と言ったのを皮切りに、皆様がまだ産まれてすらいない娘さんとの婚約話に盛り上がり⁉︎『これから頑張る!』と謎の宣言されたりとか、賑やかな二週間程をベッドで過ごさせてもらいました。


 …勿論、婚約話に関してはクライド様が猛反対をされて、話しは聞かなかった事になりましたよ。私が『婿に出す訳でも無いのに。』と笑っていると、『本人の意思で決めないでどうする!我が家に政略結婚は必要無い!』と叱られました。クライド様もオルフェウスが愛しくて大変みたいです。



 それから徐々に起き出して日常に戻り始め、1ヶ月程で元気に復活しました。まだオルフェウスが小さいので外出は出来ませんが、定期的に魔力を振り撒いている庭の薬草園から薬草を採集してポーションを作る事にしました。授乳でオルフェウスに魔力を渡すものの、私には微々たる量なので常に魔力過多気味なんですよね。少し魔力多めでポーションを作り始めたら、回復量多めの上級ハイポーションになってしまいましたけど、問題有りませんよね?兄様のお店で『祝出産特別品』として、カード会員様用に売ってもらいましょう。と思って気にせず作っていたのですが、オルフェウスに会いに来たワイマール義父様に見つかってしまい、冒険者ギルドに以前の物より高値で買い取ってもらう事になりました。実はマナ草を使ったマナハイポーションも同じ結果だったのですが、此方は王宮の魔術院に納めている商品が優先として、冒険者ギルドには売られなかったみたいです。


 ワイマール義父様に半分取られてしまいましたが、残りを兄様のお店に卸すと、『久し振りに美味しくて回復力の多いハイポーションが手に入った!』と、優先カードを持つ常連の方が喜んでいたそうです。噂を聞きつけたカードを持たないお客様から、『次に入荷した時には我々にも販売して下さい‼︎』と予約⁉︎が相次いでいるそうです。とは言え、私は本職では有りませんからね?ポーションを作ってばかりはいられませんから『薬草が育つ迄は無理〜』と逃げました。


 そうそう、上級ハイポーション等を納品する為に兄様に来てもらった時に、テレサ義姉様が私のデザインした授乳ワンピースを着て、娘のキャナルちゃんと一緒に実家の訪問をした。と兄様から聞きました。リジー様が結婚されて家を出たそうで、ご両親とお兄様達が喜んで三人を出迎えてくれたそうです。テレサ義姉様の妊娠が分かった時に、手紙でこっそり伝えてあったそうですが、実家に顔を出すのはリジー様が嫁いでからの方が良いかも?という話しになり、それなら、出産後に落ち着いてから子供と一緒に。という話しになったそうです。


 兄様の後見にワイマール義父様がいる事は昔からだったのですが、私がクライド様に嫁いだ事で結び付きが強くなった。と評価されたらしく、強気で言い掛かりを付けていた某伯爵の勢いが落ちて、風当たりが弱まって来たのだそうです。『そろそろ、テレサの貴族籍復帰をしたい。』と相談されたそうです。でも、キャナルちゃんに魔力が発現しなかったので、テレサ義姉様は、『私の魔力は低い上に、シャルもキャナルも魔力が無いわ。このまま平民で居る方が良いわ。』と断ったそうです。


 実は、私がクライド様に嫁いだ時点で、『テレサ義姉様の里帰りをしよう。』という話しも有ったのですが、リジー様の言動が読めなかったので遅らしたそうです。其れを先延ばしにされたご両親の思いは貴族籍復帰だったのですね。うーん、私から見たリジー様も、他力本願で考え無しな行動が鼻についていた時期も有りましたが、ご家族から見ても、守らなければならない秘密を漏らしそうに思われているなんて、残念に育ったみたいです。


 まぁ、ご両親から伝え聞いたザック様は、穏やかで真面目な青年で、頼られて嬉しがるタイプだそうですから、他力本願なリジー様にとっては丁度良い相手なのでしょう。末永くお幸せに。と願いますよ。私達の平穏の為にも(笑)



 やっと細かい物を見ても良いと、お医者様から許可が出たので、ビーズ手芸を始めました。クライド様にブローチを作ってます。そこにメイベル様が訪ねていらっしゃいました。アルバ様達の卒業試験の相談に見えたそうです。『私の時は大輪の薔薇のコサージュを作れた方に卒業制作の資格を与えて募りましたよね?今回も同じで良いでしょうか?』との事でした。『私の考えとして、技術の確認レシピに付いては少なくても数年は基準を合わせた方が良いと思いますが、学校長の意見に合わせて下さい。その後の新作レシピで個々の才能の確認が出来れば良いと思います。』と返答しました。


 私がビーズ手芸を作り始めた事で広まって、まだ始まったばかりの、しかも新しい技術を模索中なのですから、ここから基準を作らねばならないと思うのですよ。なので、『毎回基準を変えるのでは無く、前回と同じで良いと思います。』と答えました。ワイマール義父様の考えは知りませんが、多分、そんなには違わないと思います。学生時代の試験でも過去問が使い回されていたのも同じ理由でしょうから、同じで問題無いと思うのですよ。


 メイベル様は相談事を終えると、オルフェウスをニコニコとあやして帰っていかれました。メイベル様の経験談をいろいろと教えて頂いて、貴族としての子育てと平民の子育ての違いを知りました。私がまだ外出出来ないので、学校の話しも聞けて外の空気を吸った気分が味わえて楽しかったです。


 問題のアルバ様ですが、技術的な話しだけなら、前回でも綺麗な薔薇のコサージュが作れた筈なのです。優し過ぎる性格が競い合う場に向かないだけなのですよ。ですので、『課題とは、誰かと競い合って追い落とすのが目的では無く、その個人の技量を計るのが目的です。』と繰り返し伝えておきましたから、今回は大丈夫だと信じて、私はその後の新作に期待しています。


 さて。クライド様のブローチに戻りましょう。革の土台に幾何学模様に刺してクール系に作ってます。ワイヤー細工でも良かったのですが、どうしても甘くなりがちなんですよ。カッコ良いクライド様にクール系のアクセサリー。良いですよね〜(笑) 中心には魔石を入れて結界の付与をかけます。



 オルフェウスが生まれて3ヶ月が過ぎ、スザンヌにお願いして、2〜3時間位は家を空けられる様になったので、学校に行ってアルバ様の指導をする事にしました。何時迄もメイベル様に甘えられないですし、アルバ様の卒業は重要問題なのです。基本の⁉︎薔薇のコサージュは文句無しの出来映えでしたから、後はオリジナル作品になります。


 此処でちょっとした問題が起こりました。ブレスレットの時にも感じたのですが、アルバ様は無意識で付与を発動させていたみたいです。人の気持ちに作用する様ですが、魅了というと聞こえは悪いのですが、想いを増幅するというか、真っ直ぐに伝わる様です。王宮魔術院で調査した結果分かったのですが、気持ちを操作する物では無く、想いを伝え易くするだけなので、処罰対象からは外されました。良かったです。


 …なんで王宮魔術院が出張って来たかと言いますと、例の某伯爵が訴えたそうです。『高い金を払って買ったのに効果が無かった。』と。ホント、馬鹿ですよね!アルバ様から直接買った訳では無くて、噂を聞きつけてブレスレットを探し、持ち主の男爵家子息から無理矢理買い取ったそうです。あのブレスレットって、アルバ様がお一人ずつ願いを聞きながら作ったのですよ。


 ブレスレットの元の持ち主様も王宮に呼び出されて審議を受けたそうで、事細かく聴取されたそうです。結果として某伯爵一人が断罪されて終わりましたが、アルバ様が悲痛なお顔をしていました。『幸せになる助けになったら嬉しい。との思いで作ったブレスレットのせいで、友人に迷惑を掛けてしまった。』とショックを受けていらっしゃいましたが、魔術院の発表で『個人に合わせた願いのついたブレスレットだった。魅了の様な悪しき力のある呪具では無いので、アクセサリーとして販売するなら問題は無い。』とお墨付きをもらえたので、却って良かったのかも?と考えてもらいました。


 この裁判のお陰で、アルバ様の卒業課題はブレスレット以外を参考作品に出す事になり、実質、卒業は決定しました。当然ですが、来期から私の後任講師兼講師長にも決まりました。

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