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フリーダム  作者: 清香
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27 結果発表

 メイベル様の提出された、ネックレス。イヤリング。ブローチ。ブレスレット。簪。の花の5点セットはダントツで優秀でした。侯爵家に嫁がれた縁で、王妃様に贈られたアクセサリーを見る機会があったそうで、何時かは!と目指していたそうです。今回、花のコサージュを学んで、このモチーフでセットを作る!と決めたそうです。私やワイマール義父様を初め、審査した全員一致で合格です。


 他には、サーシャと仲の良いレイラさんの布の花のコサージュ付きネックレスとか、ヘルナさんのビーズ編みの飾りが付いたポーチ、コーディさんのビーズ刺繍トートバッグがメインに見えるブレスレット型バッグチャーム、ミュウトさんの外せるコサージュを二つ繋げた替え衿が合格になり、ギルドに展示、投票される事になりました。


 卒業レベルとして、ギルドの専門職員と商店主達のポイントを20以上集める事。工房主から最低でも1つは指名される事にしました。商店主は一人だけを選んで3ポイント入れられますが、ギルド職員は全員を其々評価して、一人に付き最高3ポイントまで入れられるので基本的にクリア出来る筈です。工房主の指名を入れたのは卒業後の進路の為です。


 これだけでは勿体ないので、単純な人気投票も用意しました。一般の方の投票数を知って、自分達の作成がどれだけ素敵なのかを自覚してもらいたいと思ったからです。別枠で投票箱を設置した処、お祭りの様な盛り上がりになってしまいました。


 …正直、想像以上の騒ぎになってしまい、考えが甘かったと言うか、一般の方の関心の高さに驚きましたね。本当にメイベル様のビーズアクセサリーのセットは、商品としての出来の良さから、充分過ぎる目玉商品の価値を示していた。という事に他なりませんが、凄まじかった!レシピは当然ギルドで登録しましたが、レシピを買ってもメイベル様以外で何人出るか?と言う内容に、メイベル様は侯爵家に守られなければ、工房の取り合いで揉みくちゃにされる処でした。


 因みに、他の4人も無事にそれぞれ複数の工房から指名されましたので、卒業後の進路に困る事はありません。最もレイラさんは講師として押さえさせて頂きましたけど。数字としての順位は付きましたが、優秀作品である。という意味では同等の評価で良いと思います。4人のレシピも登録しましたし、手芸学校としても、幸先の良い船出になりました。


 5人の卒業式はギルドの一角で華やかに行われました。でも、ワイマール義父様は、『手芸学校は今後も人材を育成して行きます。今回は初めての卒業生という事で、晴れやかなセレモニーにしましたが、今後は淡々と行う事と思います。何故なら、職人として生きて行くのに、卒業は通過点でしか無いからです。卒業を目標と勘違いされない為にも、粛々と行われるべき。と私は考えております。』と、祝辞を締められました。


 式には、メイベル様は侯爵様が、レイラさんは講師として学校に残るので父親が、他の3人は契約した工房主が参列しました。皆さんワイマール義父様の言葉に頷いて賛同している様です。…実は、今回はメイベル様の為の卒業式と言っても過言ではありません。でも、そんな事を正直に話す必要は無いので、初回だからとしました。だって、職人を増やしたい目的で商業ギルドが始めた学校なんですから、講師を目指すのも平民が殆どなのです。講師の資格の免状は出しますが、工房を立ち上げるよりは、工房に雇われる人の方が多いと思うのです。ですから無駄なやっかみをされない様に、注目され過ぎない程度の式を考えているのです。


 今現在、手芸学校はビーズがメインに活動しています。というか、ビーズ手芸しか活動していません。最初の構想では、私の登録レシピを基本として、応用出来る人材育成を考えていたそうで、トートバッグなどの縫製関係の講座も併設する筈だったのです。ビーズ刺繍を増やした時に、服飾の講座に繋がれば。と考えていました。


 校舎は同じですが、『布小物』と称するバッグ系の講座と、服飾品の講座を開設したいのです。お母さんが兄様のお店で何回か開いて、生徒さんが集まる手応えはあったのですが、講師が王都の工房などから見つからず、現況として開校が延期されているだけなのですよ。手芸学校が、いざ開校!と話しが進んだ時に、ワイマール義父様のツテで来てくれる筈だった方が、『引き抜きを止めてもらいたい!』と賛同していた筈の工房主から待ったが掛かってしまい、只今説得中なのだそうです。


 私はお母さんやスターシャ伯母さんしか知りませんから、口を挟みません。元々、ワイマール義父様の立ち上げた学校ですから、頑張って下さい。としか言えません。でもこの間、アリエス義姉様が小耳に挟んだ噂では、私やお母さんの下に付きたくないから反対している。と徒党を組んでいるらしいのです。『ビーズこそはザキュに一歩出遅れているかもしれないが、それ以外なら王都の方が上だ!なのに、なんでザキュなんて田舎者の下に付いて頭を下げなきゃならんのだ!』と、声高に文句を言っているそうです。私はビーズだけで手一杯ですし、お母さんもザキュに店を持っていますから、レイラさんが講師に慣れる迄は補助に残りますが、それ以降はザキュに戻る予定です。そんな忙しい私達が布小物や服飾まで統括すると、一体誰が考えたのでしょうか?


 ワイマール義父様に、『ギルド所属の工房主に呼び掛けて会合を開き、『布小物講座』と『服飾品講座』の『責任者を含む立ち上げメンバー』を募集している事を改めて説明して、講師を募集してはどうでしょうか?』と提案してみました。つまり、校舎は同じでも、私の下に付く訳ではない。別系統な事を明言すれば良いと思ったのです。


 私の提案を聞いたワイマール義父様は目から鱗が落ちたかの様で、キョトンとしてましたが、『ああああああ⁉︎そんなバカな?アイツらは勘違いしているのか?リルルを学校長にしたからか?そうなのか?』と絶叫してギルドに飛んで帰り、工房主に集合を掛けていました。


 それからは早かったですねぇ(笑) あっという間に開催の目処が立ち、生徒の募集が掛かりました。布小物の講師長には老舗のバッグ工房から来たジュリさんがなりました。私のレシピを多く買って頂いていて、それをアレンジして販売しているのが決め手だったそうです。アレンジ出来る才能が有るなら、オリジナルも出来る筈。とワイマール義父様が話してました。服飾品の講師長は最初に話しを通してあったリカルド様がなりました。アリエス義姉様の嫁ぎ先の親戚筋の方ですが、法衣男爵の貴族籍を持っているそうです。此方が軌道に乗ればビーズ刺繍講座を移す予定なので、クレーマー貴族対策もあって、ワイマール義父様は最初から爵位持ちの方を探していたのです。


 ジュリさんは兄様のお店で見掛けた事もあり、アリエス義姉様の友人でもあるので、私も安心して話し掛けられるのですが、リカルド様はチョット苦手かも。まぁ、講座の移動などはワイマール義父様が動いてくれるでしょうし、移動によって講師を移動するかは其々に決めてもらう事になるでしょうから、私が表立って相対する事は無いですよね?其々の講座の講師も、ジュリさんとリカルド様が引き抜いて⁉︎確保する事になり、王都の各工房からの売り込みが大変だった。とお聞きしました。


 新学期からは新体制を発表して、私の肩書きもビーズ講座の講師長になりました。全てを統括する学校長はワイマール義父様です。ジュリさんもリカルド様も講座を3つに分けて、初級は初心者のみにするけれど、最初の中級と上級の生徒さんは、希望者に課題作成の実技試験を課して決めるそうです。私も5人が卒業して、講師講座の人数が減ったので、中級のクラスから上がる生徒さんの選抜を掛けてあります。


 さて。ビーズ刺繍講座の元取り巻きクレーマー夫人達ですが、改心なさったそうで、ビーズ細工の初級講座に戻って来たそうです。元々アクセサリーを作りたかったそうで、彼女はメイベル様に感化されたそうです。『ビーズ刺繍は元々刺繍が得意だったのもあって簡単に熟せたわ。』と自信たっぷりに自主卒業されて、意気揚々とビーズ細工の教室に向かわれたそうですが、果たして大丈夫なのでしょうか?彼女達が目指しているメイベル様は才能もさる事ながら、兄様のお店時代から5年近く習っていた結果なのです。彼女達がそれを理解した上でなら良いのですが不安です。…入講契約を交わすので、今度騒ぎを起こしたら退学な事を弁えて下さると信んじるしかありません。


 ビーズに関しては2年目の学校の開始。布手芸に関しては初年度の始まりです。私の二足の草鞋は今年も脱げませんでしたから、学校に問題が有った時は全面的にワイマール義父様に丸投げですね?


 あ、初級講座を任されると勘違い⁉︎していたレイラさんは、お母さんが助手について中級講座の教室に行ってます。若干涙目ですが、初級講座は間に合っているので、諦めてもらいましょう。基礎が出来ている人に教える方が楽。というアドバイスも有り、お母さんがザキュに帰る為にも必要な人事なのです。…私が旦那様と結婚した事で、お母さんだけがザキュの田舎者呼ばわりされている現状もあって、ちょっと嫌な雰囲気が有るのは否めません。クレーマー程酷く無いので対応に困っていますけど。実は、メイベル様が侯爵家に嫁がなければ、メイベル様に任せて私も解任して欲しかったのですよね〜王都に思い入れ⁉︎の強い方が多いのは地域性なんでしょうか?


 という訳で、講師講座の育成には力を入れて行きます。前回は合格ラインにギリギリ届かなかった方の内、アルバ様に注目しています。子爵家の御子息で幼い頃から病気がちだった為、家の中で出来る事しか許されず?魔法に興味があって、ポーションを求めて兄様のお店に辿り着いた方です。たまたま開催していたビーズの講習会に参加して作ったブレスレットを、気になっていた御令嬢に贈った処、それが縁でお付き合いに繋がり、結婚された方です。


 アルバ様は御子息の一部に、良縁を結ぶブレスレットの作り手として注目されていて、何回か私も相談を受けています。優しい性格なので、押しに弱いのが欠点かもしれませんが、上に立つ人材として私は見ています。メイベル様と同じ位の技術をお持ちなので、そこには心配無いのですが、独創性に欠けるというか…型にハマり易いのですよね。殻を破って成長されればダントツで講師長に推せる方なのですが。


 この件はワイマール義父様にも相談してあります。この1年を見て来て、成人したての小娘が上に立つ大変さと、ポーション作成などの二足の草鞋が大変なのはしっかり伝わったので、替えが効く方を取り替える事には了承してもらいました。正直なところ、王都のギルドにレシピ登録してそれを学校で使うだけで、私の存在意義は成り立つのでは?と気付いたのですよね〜


 という訳で、アルバ様を陰に影に指導して、次回の卒業制作には自信を持ってオリジナルを発表して頂く様にします!…贔屓では無いですよ⁉︎

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