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フリーダム  作者: 清香
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24 新生活での日常

 ギルド主宰の手芸学校も手探りながら始まり、私の生活はすっかりビーズ手芸に埋もれています。ところで、私のインベントリの中には布地もかなり有ります。この世界では見られない柄も有り、せっかくなのでその柄に沿ってビーズ刺繍をしてみました。刺し方によっては別布でアップリケした様にも見えますね。絵柄が下絵の様にも取れるので誤魔化し易く?なりました。この刺繍を加えた布でポーチなどの小物に仕立て、刺繍した魔石ビーズに付与して空間を広げてマジックポーチにしましょうか。端切れ程度の大きさの布が多いので、一点物として作りましょう。柄が珍しいし、同じ物が無いので、旦那様経由で依頼の来る事が多い、お貴族様用の限定販売品にどうかな?と思ってます。


 でも、アリエス義姉様やテレサ義姉様に、『貴族相手に売れるでしょうか?売るなら値段設定はどの程度にしましょうか?』と相談したせいで、シャル兄様の店で売る事になりました。私個人でしか作れない為、『一点物で同じ物が無く、数量限定な上に予約も出来ない。』としたので、最初の売り出しに気付かず、後から噂を聞きつけて押し掛けた方々がいらして、ちょっとした⁉︎騒ぎになったらしいです。その為、不定期で卸す事になりましたが、水面下で順番待ちが始まっているそうで、表に出せない商品かも?とビクビクしてます。


 家に居る時の余暇で作っているのですが、旦那様の隣りに座って作業をしています。細かく刺された花のビーズ刺繍を見ていた旦那様が『母は花が好きで、父は良く母に花を贈っていました。リルルも花が好きなら私も贈りたいけど、悔しい事に私は父ほど詳しくないのです。今度、一緒に花園か花屋に行きませんか?』と聞いて来ました。私も図鑑の花の絵や、野辺の花は知ってますが、栽培された花はあまり知りません。喜んで連れて行ってもらう事にしました。


 …連れて行かれた先は、王宮の花園でした。何故?お花屋さんは何処⁉︎


 よく考えれば、貴族の家には花園があるもので、人に見せて自慢する事もステイタスの筈です。王宮は最たる物でした。我が家の庭は小さい上に私の薬草が占領していますので、庭師を雇うまでも無く、時折、ワイマール義父様の家の庭師さんが手入れと指導に来る程度です。前世の植物園の様な場所を想定していたのもあり、王宮なんて思いも寄りませんでした。因みに、ワイマール義父様のお家の庭には見事な花園がありましたね〜先に此処を思い出せば良かった!


 呆然としたまま旦那様の職場に案内されて見学をしました。職場の先輩の皆様には、インベントリからこっそり見繕ったポーションの差し入れをして、味の良さに大変喜ばれました。お買い求め先にシャル兄様のお店をお薦めしましたとも!旦那様が頼まれそうですが、王宮にはギルド経由で卸してますから、私は知りません。その後、一般(?)に公開されている王宮庭園に向かい、約束通り⁉︎花園の綺麗な花々を堪能して帰って来ましたよ。


 旦那様はずっと、とても機嫌良く過ごされてましたが、何がそんなに嬉しいのか私にはさっぱり解りませんね!精神的に大変疲れきって家に帰った私は、『今後旦那様からお誘いを受けるとしたら、計画書を提出してもらってから検討する事に致します。』と告げると慌ててましたが、私からすれば当然だと思うのです。花を見たいからと言って、フラッと王宮に行く平民が何処に居ますか⁉︎


 ブチブチ?言いながら帰宅しましたが、折角なので、ワイヤービーズで花を再現し、一輪でも華やかなコサージュに仕上げました。レシピもきっちり作成して、手芸学校の講師講座の課題として活用する予定です。ただ精神的に疲れただけでは勿体ないですから、他の花も忘れないうちにスケッチして彩色し、形に残しました。


 花の種類に拠って、全てをビーズで作っては重くなり過ぎるので、ワイヤーに布を貼って立体的に作る花も作りました。此方は数本を束ねてレースで飾ったブーケにして、小籠に盛ってお店で売りに出します。此方のレシピは、『ワイヤーに布を貼って加工する。』事をギルドに登録して、花びらの型やレシピをザキュのお母さんの工房に送り、商品作成の依頼を出しました。


 冬でも枯れない鮮やかな花束は各方面に受けた様で、ザキュのお母さんの店でもかなりの数の依頼が来たそうです。ドロテスさんにもあらかじめ話しを通しておいたので、ワイヤーの太さを微妙に変えて試作してもらい、お花用に登録し直したそうです。此方は『短い長さで揃える為、比較的に楽に作れる。』とドロテスさんが言うので、ワイマール義父様に話しておきました。すると、『王都の鍛冶屋に指導に行く事になった…』と報告⁉︎が来ました。頑張れ!ドロテスさん。


 『ドロテスさんのお弟子さんに王都でお店を出してもらった方が早いのでは?』との意見がチラホラ聞こえて来てます。主にワイマール義父様の付近から。手芸学校が始まってしまいましたからね。材料が地元の王都で揃わない事にイラついているみたいなんです。別に手芸材料はザキュの特産品という事でも良いと私は思うのですが、王都が一番!と思っている人達には違うようです。


 妙なライバル心を持っているみたいですが、ドロテスさんのお弟子さんなら、生粋の王都産にはならない。と思うのは私だけでしょうか?仮に、お弟子さんが来るなら、造花用の太いワイヤーより、ビーズ用の細いワイヤーを先にお願いしたいです!



 私のもう一つの仕事として、シャル兄様の店用にポーションを作ってます。学生時代に知り合った方々に優先カードを配ったので、予定より多く納品する事になってしまいました。その為、庭?畑?で足りない薬草を月一位で採集に行きます。間に合わない時は一般用の商品用に冒険者ギルドに依頼を出す事も有ります。味の差が出ますけど。神様案件のインベントリのお陰で仕方ないのですけど。初級ポーション用には時間停止のマジックバッグを活用します。効能が付き過ぎるので。ただ、薬草採取の依頼を出しに冒険者ギルドに行くと、『リルルさん、冒険者ギルドにも登録しませんか?』と勧誘が来るのは何故でしょう?『私は商業ギルド員なので…』と流していますけど。


 …想像はつくのですよ。多分、学生の頃。私だけで森に採集に行くのを良しとされなかったので、実際は不要でしたけど、ギルドでレゾルブ様に護衛の指名依頼を出していたのです。つまり私が一緒の時だけ、レゾルブ様の採集品の品質が良かったので、その所為だと分かってはいます。でも、高品質の薬草が欲しいなら、冒険者に対するそういう指導ってギルド員の仕事だと思うのです。私はちゃんと採取の仕方の指導書も学生時代に発表して配布してありますからね。


 結婚してからも採取には旦那様と一緒に行きます。レゾルブ様が旦那様にくっ付いて一緒に来る事がありますけど、旦那様がお友達として連絡を取り合っているだけなので、ギルドは無関係です。冒険者ギルドに依頼を出しに行く必要が無くなりました。煩い勧誘が無くなって清々しました(笑)


 今回は二人で門を出て森へ向かいます。気配察知と鑑定をマップに掛けるサーチを使いながら森へ入ると、マップのあちこちに薬草が点滅します。魔獣を警戒している旦那様は一応剣を腰に差してますが、私と同じで魔法攻撃がメインです。私がサーチを掛けながら薬草を採って、インベントリとマジックバッグに入れていると、辺りの警戒をしながらも『近くに獲物が来たら教えてね。』と言いに来ます。自分でも察知出来るのに、なんか二人で居ると甘えたさんになるのです。取り敢えず、薬草採取の手伝いはしてくれるのですが、イチャつきたい空気を出すので困ってしまいます。あ、旦那様には時間経過無しのマジックバッグを新たに進呈してあります。職場の先輩方への分は、旦那様が集めた薬草の分だけ引き受ける事にしましたので。


 因みに、薬草採取に行くと、最低でも一角兎やボアなどが数匹は獲れるので、採集の後はお肉が食卓に多く載ります。一角兎の革と角は私が使いますが、お肉はシャル兄様などにもお裾分けします。テレサ義姉様の作る一角兎のミートパイが美味しくて、弟子入りしちゃいました。ボアなどの解体が面倒な大型魔獣は、ザキュに行った時にギルドに依頼します。王都の冒険者ギルドは煩いですからね。


 朝早くから森に入り、予定していた体力ポーション系の薬草を採取出来たので、お昼を食べて、マナ草を探しに奥へ向かいます。オークやディア等の大型魔獣の居る地域になるので、少し慎重に歩きます。旦那様も気配察知を途切らせない様に注意しています。


 私はマップの表示に従ってマナ草の群生地を目指します。最短で辿り着くとさっさと採取に入ります。旦那様も丁寧に採取して手伝ってくれます。此方は王宮にも卸しているマナポーションの材料なので、大量に欲しいのです。マナポーションは王宮に卸すので、旦那様の職場用にはしません。その為、旦那様の採取した物も私のインベントリに仕舞います。


 採取していると、マップに嫌な気配が近付いて居るのが浮かびました。『クライド様、ゴブリンが群れで近付いて来てます。此処のマナ草を守りたいので、彼方の空き地で迎え撃ちますね。』と告げて、30メートル程離れた位置に走りました。


 私を見つけたゴブリン達は嫌な笑いを浮かべて突っ込んで来ます。私は範囲に入るのを待ってフリーズで凍らせ、一瞬で生命を断ちます。魔石と討伐部位は旦那様にお任せして、アースホールで穴を開けると、処理されたゴブリンを次々と投げ込み、ファイヤで燃やした後、穴を埋め、クリーンを重ね掛けしました。以前は水魔法で窒息させていたのですが、時間が掛かるので、瞬間凍結に換えました。旦那様と二人だけだからしますが、他の人が居る時は無難な水魔法にしますよ。


 『流石に、13匹のゴブリンの群れって多く無いですか?』旦那様が採取した魔石を数えて呟きました。『リルルの魔法が強いから簡単に処理出来たけど、普通は一人1匹だって大変だからね。この数に対応するなら、高ランクか、人数が多くないと無理だと思う。今日はもう帰って、ギルドに報告した方が良いと思うよ。』と旦那様も答えます。多分、一番後ろで威張って居たのはホブゴブリンに進化した個体だと思います。一つだけ大きい魔石があり、鑑定したらそう出ましたから。


 サーチを広めに掛け直して安全を確保しながら残りのマナ草を半分採取してマジックバッグに仕舞うと、王都を目指して帰る事にしました。マップには引っ掛かりませんが、村が出来ていてもおかしくない数だと思います。


 ギルドでの報告は旦那様に任せて、私は後ろに控えてます。帰り道で倒したオークやディアは旦那様のマジックバッグの中ですし、此処で出すかどうかは旦那様次第です。話しを聞いたギルマスが森の探索を決めたそうです。『私達は冒険者では無いので、情報を渡したのだから帰りましょう⁉︎』と旦那様に言うと、受付嬢がゴブリンの討伐代と魔石の代金を渡して来ました。ギルマスからは情報料を受け取りました。本来なら冒険者でない為、魔石の買取りだけなのですが、今回は特別だそうです。そう言えば、何時もはレゾルブ様が窓口でしたね。何はともあれ、旦那様が居るので引き止められずに出られました。良かった。

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