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フリーダム  作者: 清香
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20 自由を目指して頑張ります!

 夏休みの最後の一週間はひたすらに忙しかったです。本来なら卒業後に式を済ませ、婚姻届を出してから住む予定だったお家に、急遽、サーシャと二人で転がり込みました。クライド様と執事兼侍従さんとメイドさんの5人暮らしを始める事になったのです。自分の荷物はインベントリに入れて置けば良いのでそんなに無いのですが、問題は作業部屋でした。商品作成の為にサーシャも共同で使うビーズや布、ワイヤーなどの材料を出して置かないといけないのです。一部屋を更に頂いて使わせて貰う事になりました。錬金術関連はサーシャは使えないので自分の部屋に置きました。


 何故かと言うと、テレサ姉様が嫁いで来たので、お店の2階を明け渡したのです。正直なところ私の貯金が有るので、王都の小さな家なら余裕で借りられるのです。商業ギルドで探したら年齢的に駄目だそうで、それを知ったクライド様が私の両親に同居を勧めて来たのです。お父さんは難しい顔をしてましたが、住み込みの使用人が居る上サーシャも一緒なので、女の子の二人暮らしよりは安全だろう。と最終的には折れました。


 テレサ姉様が驚いていましたが、箱の中にはテレサ姉様が見た事のない宝石の箱が入っていたそうです。私の両親宛ての手紙も入っていて、それを読んだお母さんは『取り敢えず教会に行き、祝福を受けましょう!さっさと手続きをしてシャルのお嫁さんになってもらってからでも、お話しはゆっくり出来ますからね。』と急いだのです。お父さんも賛成だそうで、箱の中に入っていた白いドレスをテレサ姉様に着せると兄様にもスーツに着替えさせて教会に行きました。ドサクサに紛れてクライド様が『私達も一緒に結婚してしまいましょうか?』と両親にねだっていたのはスルーされてましたけど、ホント慌ただしかったです。


 三日程経って、やっとお祝いの席を設けた時に両親から話してもらえました。リジーさんの伯爵家との婚約が知れた事で、テレサ姉様に子爵様の後妻の話しが来たのだそうです。良い迷惑でしかありませんが、シャル兄様では太刀打ち出来ないと思ったテレサ姉様のご両親が一芝居うったのが、今回の真相だそうです。貴族には不人気な『真実の愛に走った馬鹿な娘』がテレサ姉様の役処だそうです。


 『馬鹿なのは貴族なんじゃないの?』と怒るサーシャに私も1票入れますね。テレサ姉様も気持ちのつかえが取れて笑顔が戻ってます。咄嗟に行動したテレサ姉様のお父様の愛情の深さには驚きましたが、縁を切るまで追い詰められたなんて同情しか有りませんね。あ!この話しは当然、リジーさんには内緒ですし、学校で話す時はリジー様呼びに戻した方が良いとテレサ姉様から言われました。リジーさんは素直で腹芸の出来ない、貴族らしからぬ一面が有るので、暫くは騙したままになるそうです。なので、テレサ姉様が縁を切られて怒ってる私達。という演技の為の『様』呼びです。テレサ姉様は『孫を見せに行けば喜ばれるから大丈夫よ。』とお母さんに言われて真っ赤です。


 私から見てもリジー様は確かに直情径行ですから。バレた時は泣かれるかもしれませんが、そこはテレサ姉様にお願いしましょう!


 最後の文化祭です。リジー様が『薬学の出番を考えて下さい!』と言ってます。錬金術、魔法学と来れば、次は薬学!という気持ちも判らないでは有りませんが、何故他力本願なのでしょうか?と言うより、研究発表で良いのでは?と思うのですが。シックギター先生も風魔法を用いたマナポーションの件は、材料のマナ草が手に入り難い事もあって、今回は研究発表の方向で考えているそうで、チャールズ様を始めとして既にまとめ始めています。リチャード様達も貴族には余り使われない生活魔法を見直して、知ってると便利な魔法という形での研究発表でイゼルダ先生と話し合っている。とおっしゃってます。メイスン先生もそれをご存知なので、リジー様にクリスティ先生に相談する様に話してます。


 何時ものように私にも頼って来ましたけど、テレサ姉様の言付けに従って、『薬学は学んでいませんし、リジー様も貴族同士で相談された方が良いのでは?』と答えておきました。Bクラスのザック様が同じ薬学なのですが、クラスが違うので頼れないのですよ。Aクラスの薬学は伯爵家が最高位ですから、今のリジー様ならなんの問題も無くまとめられると思うのですが⁉︎


 3年間の総まとめですから、学習した結果を示す事で有終の美を飾り、みんな、親に誇りたいのですよ。特に錬金術チームの様に華々しい結果を残していない方は結構必死です。まぁ、私はそっと存在を薄くして他人事モードです。シックギター先生からマナ草の依頼⁉︎が有りましたけど、お断りしましたよ。私が加盟して居るのは商業ギルドですからね。マナ草の採取経験は有りますが、一応、護衛を頼んでいましたからね。…実質、必要が無かったとしても、建前はタイセツです。


 私のインベントリに有るマナ草ですが、マナポーションにして有る分は、ワイマール様経由で王宮に売り出される事になってます。来年、クライド様が出仕なさいますから、そのタイミングで持ち込むという話しです。クライド様は文官ですが、魔術士に知り合いがいらっしゃるそうで、ツテはあるから問題無いそうです。ツテと言えば、タブロイド先生も居ましたね〜


 そう言えば面白半分で、薬草とマナ草を混ぜてポーションを作ったら、エリクサー擬きが出来てしまったのですよね〜 どれも自分で採取したから元手が掛かってないので、失敗しても勿体無くないかな?なんて軽い気持ちで混ぜてみたら、凄くキラキラしたポーションが出来てしまったのです。


 慌てて教会に行き、女神様と技巧神様に相談すると、アネムタと言う神様の飲み物に近いそうで、『飲みたい!』とおっしゃるから全部差し上げてきました。『とても美味しい‼︎』と褒められましたよ。下手に持っていて誰かに見つかったら五月蝿そうですから、丁度良い。とばかりに押し付けてきたのです。だって、技巧神様の加護の籠ったインベントリのお陰で作れたと思うので。


 王宮の魔術院からも視察が来た研究発表を終えて、卒業を目指しての課題には当然ですが、付与魔法を選びました。そもそも、私がこの学校を選んだのって付与魔法の筈なのですよ。シックギター先生に振り回されて、周囲に流されて過ごしてしまいましたけど。メイスン先生とイゼルダ先生に相談しましたら、私が魔法付与出来るのをご存知の為、許可されました。今回の発表の際にもお手伝いしていたので、問題無いとの事でした。


 クリーンの付与をした時に思ったのは、付与する魔石に依って使う魔力量に差があるなぁ。という事でした。同じスライムの魔石なのに?と不思議でした。休日を利用して森や水辺のスライムを狩って魔石を集め、比較した結果をまとめると、クリーンや水魔法の付与をし易いのは水辺のスライムでした。森のスライムは火魔法や風魔法の攻撃系が付与し易かったです。


 3ヵ月程かけて調査比較した内容をまとめて提出すると、『コレを文化祭で発表したかった‼︎』と絶賛されて、A評価を頂きました。


 先生方から、『上の学校に上がり、このまま研究を続けて欲しい。』と懇願されましたが、『婚約者が居て結婚を控えているので無理です。』とお断りして卒業しました。


 クライド様のお家に同居してしまった為、メイドのスザンヌさんから貴族の最低知識と言う物を色々とお勉強させられていて、流されるんじゃ無かったと後悔し始めています。平民が嫁ぐと相手の家の貴族籍の末端に記録されて、貴族に準ずる者になるそうです。『つまり、何方からも弾かれるのですか?』と質問すると、『難しいのですが、中間に居ると思って下さい。』と言われました。面倒な事は嫌いなので、『住み分けが必要な処には行きませんよ!』とクライド様に文句を言うと、『私が守るから大丈夫!』と大丈夫では無い返事をされました。


 テレサ姉様がドレスを可愛くリメイクして、贈って下さいました。クライド様もそれに合わせて服を作っていたそうで、お揃いの服で教会に向かいました。メリッサ様も領地からいらして下さいました。ワイマール様が商業ギルドのギルマスになった時に、トリトン様とセバスチャン様を連れて領地に戻り、お2人に教えながら領地を守っていらっしゃるそうです。『王都は5年振りかしら?懐かしいわね。リルルさんの話しはアリエスからも沢山聞いているから、私は初対面の気がしないのだけれど、初めまして。私がお母様よ。』と微笑まれました。


 ワイマール様の王都のお屋敷は別邸で、本宅は領地に有るそうです。クライド様のお家は、私と結婚する為に用意したそうで、もしかして、ワイマール様の地位って、伯爵家の中でもう…え?


 若干顔色の悪くなった私をソッと抱きしめたクライド様は『逃がさないからね⁉︎リルルは今まで通りで変わる必要無いから安心してね。』と耳元でささやきますが、少しも安心出来ませんよ‼︎


 テレサ姉様の時とは逆に、王宮の貴族院に行き、婚姻届を出して来ました。初めての王宮に緊張している内に手続きが済み、準男爵夫人と呼ばれました。クライド様が文官としてキャリアアップして自力で準爵するかして位が上がる迄は仮の貴族位と言う事で、準が付くそうです。クライド様の地位も準男爵で王宮に出仕するそうです。


 良く考えたら、4月からはお店と手芸教室の講師で忙しくなります。兄様もテレサ姉様と王都の店を大きく⁉︎するそうで、ザキュに帰るのは少し延びました。


 サーシャは予定通りにザキュに帰ります。王都の本屋さんでトマスに再会し、何度かデート⁉︎したそうで、トマスが王都の本屋に来たのはサーシャを追って来たから。と打ち明けられたのだそうです。サーシャはザキュに帰ってお店を継ぐので、トマスは入婿になり、経営で頑張るそうです。


 私が学校の課題やクライド様の事で忙しくしていたせいで、せっかくサーシャも王都に来ていたのにあまり出掛けられず、ごめんね!と思っていたので、良かったです。でも、トマスが手芸倶楽部に話しに来ていたのは、サーシャが居たからだったとは気付きませんでしたね。とニマニマしていると、『最初はリルルが好きだったけど、リルルはルーカス兄さんしか目に入らないようだからね。直ぐにサーシャが好きになったんだ。サーシャは可愛くて元気いっぱいで、人気者だからね。というか、2人とも人気があり過ぎで大変だったよ。』と、サーシャを迎えに来たトマスが笑っます。


 いつの間にかクライド様がトマスの後ろから肩を掴んで『興味深い話しをしてますね。ルーカスとは誰ですか?』と凄んだ声で話し掛けました。『6年も前の話しですし、ルーカス兄さんはリルルの気持ちになんて気付いてません!今は同級生のエリス姉さんと結婚して、生まれたルイスと3人で幸せに暮らしてます。』あぁ幸せな家庭を築いてるんだね。とほのぼのしている私を後目に、トマスは何故か遠い目をしています。クライド様は私を抱きしめると、『私もリルルの産んだ可愛い子と暮らす未来が待ち遠しいなぁ。』と言いますが、ノーコメントです!


 学校を卒業して、結婚したので、マナポーションをワイマール様経由で売り出しました。ギルドの直販で、製作者はバレない様にして貰ったので、気が楽です。手芸学校も本格的に開始され、ビーズ教室の人気が高く、初級、中級、講師養成の3クラスに分けました。私は講師養成の担当で、魔法が使える方には簡単な付与を卒業試験に加味する事にしました。サライズさんが魔石ビーズの形成に成功したのです!ですから、付与魔石のビーズアクセサリーを売りにしたのです。


 マナポーションが王宮に定期納品される様になったら、何故かシックギター先生が私を訪ねて来まして、マナポーションを要望されるのですよ。でも、ワイマール様に敢えなく捕まり、直販コーナーに連行されました。お義父様、いつもありがとうございます。

此処で一区切りとさせて頂きます。終わり方を決めたら、また書く予定です。無事、着地点が見つかる迄失礼します。

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