表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリーダム  作者: 清香
18/38

18 春、ですね(笑)

 進級クラス分け試験を控えて、仲良くして頂いてる方々から『去年の様に集中講義をして欲しいのですが。』と言って来ました。それを聞いたチャールズ様やリチャード様が音頭をとってクラス全員をまとめて、放課後の教室で集団自習学習をする事になりました。判らない時はみんなで教え合い、授業よりも真面目に勉強している様子に、覗きに来たメイスン先生始め、諸先生方がなんとも言えない表情をしていたそうです。お陰で無事に入れ替え無しで3年Aクラスに上がる事に決まりました。


 …因みに、Bクラスの方々からは『卑怯だ。』とか『羨ましい!』とか声が上がっていたそうですが、音頭を取っていたのが公爵家のお2人ですからね。『せめて去年の様に食堂でなら末席でこっそりと聴けたのに…』とボヤいていた声に頷いていた人が大半だったそうです。なんでも私の解説の方が理解し易いそうです。簡単な言い方に変えてるせいかな?


 最終学年に上がりました!予想外の出来事でクライド様の婚約者になってしまい、プライベートの予定はかなり変わってしまいましたが、まだ平民のままですから、此処では予定通りに大人しく何事も無く卒業を目指します。女神様が持っていた薄桃色の糸やその他の糸に絡まれない様に注意して過ごしましょう。平穏こそ我が人生ですから‼︎…女神様、何かが立った‼︎とかは無しですよ!


 メイスン先生が教室に入って来てホームルームが始まります。『1年、2年と着実に実績を重ねているので、今年もAクラスは注目されてますよ。』と言う話しから始まり、『有終の美を飾る1年にしましょう。』と話しを締め括って終わりました。


 錬金術は鉱物を掛け合わせて加工し易い様にする知識を教えてもらう段階になり、みんなソワソワしています。どんな組み合わせで混ぜたらオリハルコンやヒヒイロカネになるのか!と囁き合っています。シックギター先生は苦笑しながら教科書を良く読む様に。とページを指示されました。


 其処には、『伝説の鉱物はダンジョンや坑道の奥深くで稀に見つかる事も有るが、希少な為研究者の手に入る事が無く、組成式などは全く解明されていない。』と書かれていました。それを読んでガッカリした私達に『各国の王室の宝物庫とか、伝説のSSSランクの冒険者でも無いと持っていないんじゃないかな?』と先生はおっしゃいました。


 そもそも、この分野に関しては机上論のみの授業なので、1年を掛けて⁉︎ササッと流して行く予定だそうです。基本的な内容は、むしろ、鍛冶屋さんの領分に近いそうで、わざわざ魔力を掛けなくても出来る事が多いそうです。と言うより、魔力を用いて行う様な錬金術は何年も修行しなくては出来ないレベルで、一般には出まわらない内容だそうです。王宮図書館になら文献が有るそうで、興味があるなら個人的に調べて勉強する事を勧める。と笑ってました。


 それよりも、Aクラスに関してはポーションの研究を並行して続けると張り切ってますね⁉︎例年ならハイポーションは3年で学ぶ内容なのだそうですが、私達は新鮮な薬草と、クリーンを多用して魔力の含有量を増やす事で、既に昨年、成功しています。


 今年はマナ草を入手してマジックポーションにも挑戦したい。とシックギター先生は目を輝かせてますが、その前に、私のやり方で上級ポーションを作って、今までのハイポーションと味や回復量を比較するそうです。


 実は、昨年の文化祭で2年Aクラスと3年Aクラスとで出したハイポーションは、正確には別物だったんですよ。2ーAは初級ポーションのハイポーション。3ーAは上級ポーションのハイポーションだったんです。つまり、材料が違うのにほぼ同じ回復量だったのです。ただ、マジックポーションを飲んで作った人も居たので、その分を価格に上乗せさせてもらう事で同額のお値段にしたのです。


 上級に使う薬草やマジックポーション用のマナ草は、魔素の多い森の奥に入らないと見つからないので、数があまり出回りません。それもあって、シックギター先生は張り切っているのです。私が作った事で、手に入り易い材料でも高性能なポーションが出来る。と言う発見も凄かったですが、其れでは、高品質な材料から作るポーションならどれだけ!と盛り上がっていらっしゃいます。でも私は手を出す気はありません。材料が違うから作り方も全く違う。と言うなら兎も角、作り方はほぼ同じなんですもの。使う薬草を擦り潰して水魔法で出した水で混ぜて作るだけなので、チャールズ様達にマジックポーションを飲んでもらって、魔力を頑張って上げて頂けば良いと思います。


 と思っていたのですが、つい、薬草を擦り潰すのではなく、魔力で練ってみたらどうかな⁉︎なんて思ってしまって、こっそりと試してみたらね〜やっぱり回復量が異常でした。どうやってシックギター先生に伝えたら良いのでしょう?


 悩んだ末、メイスン先生に相談しました。資料を調べてみようとなり、ミッシェル先生を巻き込んで王宮図書館の文献を漁ってみる事にしました。結果から言うと、魔力の無駄遣いという項目のお話しの中に、似たような事を思い付いた人の話しがありました。その方は、水魔法の水で洗う方法を提案されてましたが、ご自身が得意で無い属性の為結果を出せなかった事と、思いつきのみで行動されていて信頼性が低かったせいで、研究者達からは笑い話しのネタで流されてしまったようです。


 この話しをミッシェル先生からシックギター先生に話してもらい、クリーンを掛けた薬草を瓶の中に入れて、風魔法で圧力を掛けながら撹拌したら、擦り潰すのと同じ工程を魔力でした事に成りませんかね?という風に導いてもらいました。ミッシェル先生が話して下さったから、司書繋がりという事で王宮図書館の本の話しが出ても不自然に思われ無かったようです。結果が出る事は分かっていますから、安心して風魔法の得意な人に頑張ってもらいましょうね!


 昨年の文化祭以来贔屓にして頂いているマリアン様ですが、この春、リチャード様と婚約されたそうです。元々幼馴染だそうで、チャールズ様と3人で居る処を良く拝見しておりましたが。上級貴族に有りがちな政略結婚の意味合いも有り、何方と縁を結ぶか、なかなか決まらなかったそうですが、『本人同士が相思相愛に成ったのなら。』とチャールズ様が引き下がったと聞こえてきました。リチャード様とマリアン様は魔法学でご一緒に学ばれていましたから、心の通じる機会が多かったのかも知れませんね。チャールズ様の好みがマリアン様では無かったのなら悔しくは無いのでしょう。


 リジーさんが言うには、貴族の娘は15歳を目安に婚約もしくは結婚される事が多く、遅くとも18歳迄に決まらないと行き遅れの落款を押されて、不利な婚姻を持ち込まれる場合も有るのだそうです。テレサ姉様は『ワザと婚姻破棄にまで持ち込んで平民のお兄様との婚約を両親に認めさせたのよ!』と嬉しそうに教えてくれました。それに、ご両親からも『平民とは言え、ワイマール家の後見を持つシャル君に嫁ぐのは、下手な貴族よりずっと良い!』と誉められたそうです。テレサ姉様曰く『親の目から見ても、王都で人気の雑貨屋店主は、下衆な伯爵より好条件!』なのだそうです。


 お2人だけで無く婚約者を持つ方や、新たに婚約を結ばれた方などが増えてきましたね。まぁ、私もその1人な訳ですが、内緒ですから。夏休みを目前に控えて教室が華やいできた気がします。と言うか、獲物を狙う何かの集団?の様な熱気が怖いくらいです。私を巻き込まなければOKですよ。


 取り敢えずリジーさんの応援をしましょうか。と思っていたら、『Bクラスの伯爵家の方に申し込まれた。』と蒼ざめた表情で此方に来ました。『リジーさんは男爵家ですから良縁な筈ですが?』と思って話しを伺うと、ザック様は1年の時にウォルフ様の取り巻きに居た方なのだそうで、そこだけを聞くと蒼ざめても仕方ないかなぁ?と思ってしまいます。ただ私は、ウォルフ様に悪印象が強過ぎるので、ザック様ご本人をよく覚えていないのですが。


 Aクラスで学んでいた時は普通に話す事も合ったけど、Bクラスに落ちてからは廊下で睨まれる事も合って、1年以上も会話した事が無いそうです。『両親は伯爵家からの申し込みに浮かれていて、断るなんてもっての外!と丸分かりな態度で、冷静に観察しているテレサ姉様だけが頼りなの。』と俯いてます。確か、リジーさんの好きなタイプはクライド様でしたね。同じ伯爵家ですから、ザック様自身を見極めれば良いのですね〜


 とは言え、私にそんなツテは有りませんので、同じ伯爵家のリアージュ様に伺う事にしました。卒業されたアリスト様は薬学を専攻されていたので、ザック様をご存知だそうです。アリスト様に拠ると昨年のザック様は勉強熱心で、Aクラスに上がるのを目標にされていたそうです。根は真面目な努力家だそうで、Bクラス落ちがショックでアリスト様にも相談されていたそうです。


 リアージュ様経由でお話しを伺っていると、リジーさんがBクラスにザック様を突撃しに行ってしまいました。慌てて追いかけると、既にザック様は呼び出されて、お2人で外へ向かっています。校庭の木の陰に隠れながらリアージュ様と近付きました。此処なら話し声がよく聞こえます。


 『あの!何で私に婚約を申し込まれたのですか?ザック様のメリットが思い付きません!』と叫ぶ様に一気に言います。ザック様は『本当はAクラスに復帰して、仲良く学びながら距離を縮めたかったんだけど、Aクラスの団結力が半端なくて。でも、周りが色めいて来てるから、早くしないと誰かに取られちゃうでしょ?こんな事ならウォルフに絡まれる前に距離を取って置くんだった。って、ずっと悔やんでいたんだ。』リアージュ様と顔を見合わせてしまいました。政略じゃ無くて恋愛でしょ!


 これ以上は…と、離れようとした時に運悪く小枝を踏むリアージュ様。その音で2人に気付かれてしまい、『ごめんなさい〜!』と叫んでその場を離れましたよ。アリスト様の見立て通りなら問題無さそうですし、後はリジーさんの気持ち次第ですね。


 結局、ザック様の見た目はクライド様と違うタイプではありますが、誠実な方でリジーさん一筋にこの2年を過ごして来たそうなので、と、ゴニョゴニョ言ってますが、リジーさんは無事に婚約者を得られた。という事です。


 チャールズ様の薄桃色の糸ですか?マリアン様とリチャード様の婚約を聞いた時に教会に駆け込んで、女神様にお聞きしましたよ。本当は管轄外なのだそうですが、私が関わる為に例外として糸を結んで下さったそうです。リチャード様の妹様と。公爵家同士の結びつきだと権力問題も考えなければならないのですが、チャールズ様のお姉様が王家に嫁いで居るので、此れは有りかも⁉︎と認められるでしょう。との事でした。


 さぁ、学生最後の夏休みをどう過ごしましょうか⁉︎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ