表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ

ここは、天国か地獄か、それとも……異世界か。

 魂は、生物が生命活動を終える際、身体から抜け、冥界へ昇天する。それは音を立てずに、ただ

その場に肉塊を残して旅に出る。抜け殻が腐ろうと、魂は腐れない。魂はまるで酒飲みのおっさんが酒屋を転々とはしごする様に、違う地球、違う環境、違う概念の世界へ向かう。そうして、魂は己を鍛錬し続ける。鍛錬をする理由など存在しない。ただ続ける。

 これから語る物語には、現実の世界とは全く異なる世界が描かれている。


 この世界の魂は、視覚化されている。生物が、己の生を終えたその瞬間、一匹の蝶を模した妖しい灯りが、見た者の感情を神妙にさせる。

 視覚化される点以外の概念は、基本的に現実世界とあまり変化がないらしい。しかし、この世界の文明は、僕が存在していた世界よりも著しく劣っている。

 僕は、此処で生涯を終えるのか、と言うか、

既に終えていて、冥界に連れられたのか、いまいち見当もつかない。

 僕は今、一面淡い本紫の霧が漂う森の中に佇んでいる。耳を澄ませば、一匹、はたまたそれ以上の甲高い鳥類や獣の鳴き声が、森林の広大さを表すように延々と木霊する。その音に聴き入っていたが、小一時間経った頃、森の奥底から一つの囁きが贈られてきた。その贈り主を辿るべく、立ち続けて痺れた重い足を、一歩、また一歩と運んでいく。枯れ葉を踏み、乾いた音が小さく舞い上がる。地面が緩く、視界不良の中、聴こえた声を頼りに、主が居るはずの方向へ俯きながら進んでいく。

 「こんにちは」

 儚く生暖かいその声は、僕の身体中を舐め回すように纏わり付いた。思わず顔を上げる。しかし、視界には何処を見渡しても変わらない景色だけが広がっている。

 「もう少し、もう少し進んで」

 その声に対し、指示に逆らえない奴隷の様に

従い、直進を再開する。あと少し、あと少しと

息を切らしながら口呼吸を続ける。意外に森の中は冷えているのか、呼気からは湯気が出ている。

 結末は、突然に襲い掛かって来た。僕の視界は平行に急降下を行い、暗闇は叫び声を掴み底へと誘う。それは、悪い夢から醒める為の衝撃か、はたまた悪い魔女の落とし穴か……


第一話へ、つづく。

 声の主は、果たして誰なのか。

そして、彼がこの世界へ来た理由は何なのか。

独りから始まる異世界生活。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ