友
進路指導室を出て学校の廊下を歩いていた音哉は、歩みは止めぬまま教室の中を見る。
教室の中で机に向かって勉強する、将来を選んだ奴等。
廊下で友達と騒いで笑い会う、今を選んだ奴等。
どっちが正しいなんて言えない。分からない。じゃあ俺は、どっちを選べば納得する?
ポケットに手を差し入れば、カサカサと指先に当たる紙。先程男性教師に渡されたテストの結果表だった。嫌なことは忘れさせてもらえない。
気持ちが重く沈んで、深いため息を吐いたとき、2つ向こうの教室から音哉を呼ぶ声が聞こえてきた。
「音哉ー、終わったのかー?」
赤い髪の坊主頭は、棒つきキャンディを舐めながら鞄を背負って近づいてきた。
「おう、」
「どうした?元気ねえじゃん」
「進路指導でしょ?普通は落ち込む筈だよ?仁は何で落ち込まないの?」
坊主 山本 仁の後ろからもう一人、今度は背の小さい童顔の男が現れた。齋藤 啓、見た目に反して結構毒舌キャラだ。
「そりゃお前、俺は大人になんと言われようとも気にならねぇからな!俺は奴等の言いなりにはならんのだよ!進路指導室に呼ばれたからって俺の志は変わらない!!」
「あっそ。ぁ、音哉、これから3人でファミレス行かない?」
「……あー…………そうだな、行こう」
ポジティブ馬鹿な仁、冷静Sな啓、嫌なことがあったときには親友たちと過ごすことが一番だった。