テスト結果
窓から見える桜の木にはすでに桜の花はなく、鮮やかな緑色になっている。
誰かが、遅咲きの桜もある、と言っていたがここに聳え立つ桜はどうやら違ったようだ。
開け放たれた窓から、外を眺めていた少年、時村 音哉は漠然とそんなことを思った。窓から差し込む午後の日差しを受け、音哉の金色の髪はキラキラと反射する。
「……聞いているのか時村」
明後日の方向を見ていた音哉に、机を挟んで向かい側に座っていた男が声を掛ける。音哉は男に視線を戻してから、ヘラッと笑った。
「まぁ、何とかなりますって」
「ならない状況に差し迫ってるからここに呼ばれてるんだぞ!」
悠長なことを言う音哉に、男性教師は声を荒げると、机に置かれた用紙を叩いてみせた。その用紙には中間考査結果、と書かれていた。そこに書かれた全ての点数が40点を下回っている。つまりは、赤点ということだった。
「先生、俺らには未来がある、そう言ってましたよね?勉強よりも大事なことってあると思うんですよ!」
「……あのな時村、確かにお前らにはどんな未来だってある。でもな、勉強を疎かにしていいってことにはならないんだよ。仕事に就くにしたって、相応の学力が必要になるんだから」
始まった、大人の言い訳……
男性教師が語り出す社会一般論を、音哉は無言で聞き流した。