ただしたかった。
ゲームタイトルは、架空の物です。
【風ゆくさきに】
サービス開始から数年がたつ、人気PC用オンラインゲーム。
そのゲームに今日もログインをするプレイヤーが一人。
「いっくぞおー!」
大きな声をあげて、ひとつ目の巨人へ、大剣を手に走り出す鎧の大男。
大男が巨人に攻撃をするタイミングで、巨人は彼にてに持っていた棍棒を振り下ろす。
しかし、その巨人の腕が爆発して振り下ろされた腕は、大男から大きく外れた。
「ケイ、サンキュー!」
大男は、遠くに居た、頭から猫の耳が生えた少年に、お礼をする。
「いいから、行け!ツヨシ!」
ケイと呼ばれた猫耳の少年は、彼に攻撃を促す。
先ほど巨人の爆発は、彼が爆弾を当てたからである。
「よっしゃあー!」
ツヨシと呼ばれた大男は、巨人の振り下ろした腕から、駆け上がり、巨人の目の前まで走る。
その時、巨人の目に光が集まる。その光を止めるように、巨人の頭が、凍りつく。
「おりゃー!」
ツヨシは、巨人の脳天目掛けて、大剣を振り下ろした。
その一撃で、巨人は断末魔の声を上げて、地面に倒れ、そして――
【クエスト クリア】
――と、声と表示とファンファーレの後に、リザルトが表示され、彼らは、それを確認すると、クエストエリアから退出する。
ホームタウンで、彼らは――
「どう?最後、かっこよく決まっただろ?」
ツヨシは、ガッツポーズをとる。
「いや、最後、私の魔法効果でなかったら、危なかったし」
ローブに三角帽子のエルフ耳の少女が、やれやれと呆れた態度をとる。
「そうだぞ、サクラと俺の援護がなかったら、目からのビームで、ジュッ――、だったぞ」
続けるように、ケイが畳み掛ける。
「二人には、感謝してるって」
「…まぁ、ツヨシの火力がないと、辛いのは確かだし」
「チーム中、一番のアタッカーだからなぁ……」
二人の言葉に、ツヨシは再びガッツポーズをとる。
「だろだろ?」
「これさえなければなぁ……」
二人は、項垂れるように呆れる。
勿論、この三人は、ゲーム内のアバターである。
鎧の大男、ツヨシは人間型アバターを使う、チーム一のアタッカーでお調子者。
猫耳の少年、ケイは猫耳獣人型アバターを使い、スピードタイプのクラスを好んで選んでいる。
ケイというのは愛称で、ケットシーがフルネームである。
エルフ耳の少女、サクラはエルフ型のアバターで、魔法系で援護をしている。ちなみに理由は、前衛に出たくない為。
彼らが何時ものように、話をしていると、他のプレイヤー達の声が耳に入ってくる。
『――知ってるか?最近のアカウント乗っ取り』
『聞いたことある、何でもプレイヤーの方にはログイン履歴が残らないんだってな……』
『……全く、怖い話だせ』
その話を聞いて、三人は――
「のっとりかー」
「のっとって、何してるのかな?」
「まぁ、嫌がらせや、不正行為に使うとかだろうな」
「でも、本人がログインしようとして、見つかったんだっけ」
「そうそう、それで判明したんだよな」
「フレンドにもバレそう」
「……すでに、この中の誰か、別人で真似していたり……?」
その一言に、驚くが――
「……まっさかー?」
「この能天気は、真似できないよー?」
「確かにケイの毒舌も」
その言葉にツヨシとケイはムッとして、サクラは笑った。
その日は、もう少しクエストに挑戦して、一日が終わった。
サクラが、クエストを終わらせて、ホームタウンに戻ってくる。
「……ふぅ、ケイが時間に来ないから、クエストで時間潰したけど、もうログアウトしようかなぁ?」
そうして、ホームタウンをぶらついていると――
「あれ、ケットシー?」
遠くに、数人のプレイヤーと行動していた彼を見つける。
「ちょっと、ケットシー、どうしたの?」
彼女は、近寄り話しかけるが、彼は動きはないものの、他のプレイヤーと話をしているのが見て取れた。
「その人達は誰?」
「やぁ、なんだ、ログインしてたんだ?」
サクラが怪しみながら、質問すると返事が返ってきたが、焦っているのが伝わってきた。
しばらくの沈黙の後――
「……キミは、そういうことを、するんだね」
サクラは、その一言の後、ログアウトしてしまった。
彼女が去った後、彼らは突如として動かなくなり、そのまま操作不能による強制ログアウトをすることになった。
ホームタウンにやって来たツヨシは、すでにログインしていた、ケイとサクラに、駆けよって――
「ヤッホー、こないだは、ごめんね?リアルで泊まりになっちゃってログインできなかった」
ツヨシは挨拶しながら、謝った。
「いいよー、怒ってないから」
サクラは、むくれた態度をとる。
ケイは頭を掻きながら――
「実は、俺もログインしていなかった」
それに、ツヨシは驚いてからケイと一緒に謝っていた。
「ツヨシだけかと思ったら、ケットシーもだもん」
サクラは、まだむくれていたが――
「所でさ、この間のニュース見た?」
急にサクラは、そんな話題を振ってくる。
「あー、あれかー」
「一日で、何人だっけ?」
少し前に、テレビのニュースで、一日の間に、六人の遺体の発見があったという事件が報道された。
一ヶ所で六人の遺体が見つかった訳ではなく、六人それぞれ別の場所で見つかった。
それだけでは共通性が無かったのだが、見つけた状況が、六人全員がPCの前で亡くなっていた。
奇妙な現場に謎の共通性があるということで騒がれていた。
その内の三人から――
――まずいね、このままプレイヤーのフレンドだ。
――今日は、もうログアウトしておこう。
――そうだね、それじゃ、また後で。
――というネット掲示板に、書き込みがあり、PCゲームに関係性があるのでは、と可能性を示唆していた。
しかし、六人のPCから全てのゲームデータが消されていたため、捜査は難航していた。
それが、ニュースの内容だった。
「怖いねー」
「しかもまだ、見つかってない遺体もでるかもって。」
「自宅で、同じ様な突然死か……」
サクラとケイは、考えこんでいたが――
「もしかしてさ、その六人って、アカウント乗っ取りしていた人達じゃないか?チーム組んで、乗っ取りしてたとかさ。」
ツヨシが疑問をなげかける。
「この間の、乗っ取りの話?」
それなら確かに、遺体に共通点ができる。乗っ取りの被害者から復讐によって加害者が被害者になる。
「……何の話だっけ?」
サクラは、困ったように聞いてくる。
「ほら、巨人討伐のクエストの後の」
「覚えてないのか?」
二人が怪訝そうに答えると――
「あー、あの時、私の魔法で頭を凍らせてクリアした……。」
それにツヨシは、反論する。
「えー、俺が止めさしたんだよー?」
「……おいおい、今頃、フィニッシュの奪い合いかぁ?」
ケイは、少し楽しそうに言う。
口論になるかと思いきや――
「そっそうね、そうだったわ」
サクラは、あっさりとツヨシに譲る。
「なんか、いつものサクラと違うような……?」
「サクラ、もしかして、乗っ取られた?」
二人が疑いの目を向けるが――
「ないない!だってそれならクエストの内容、知ってるのおかしいでしょう?」
二人もその事に、それもそうかと納得する。
「それに、ケットシーだって被害を受けてたんだよ?」
「えっ?」
ツヨシは驚いた。
「あー、さっきサクラには説明したんだが……俺とツヨシがログインしなかった日に俺のアカウントが使われたらしい。後で運営に連絡するつもりなんだ。」
「そっかぁ、じゃあ今日はもうクエスト行けない?」
「あぁ、すまないな」
ツヨシはガッカリしていた。それから、ケイは、ログアウトした。
けど、ボクはおかしいな事に、気がついた。
サクラが、ケイの名前をケットシーと言っていた事に。
あの時、巨人討伐のクエストでは、愛称のケイと言っていたのに……。
もしかしたら、本人に成りすました乗っ取り犯ではなかったのかと。
その後、サクラのプレイヤーが遺体で発見された。
事件と同じように、PCの前で。
でも、ボクは、わかっていなかった。
サクラのプレイヤーは、二人だったことに。
『解説と答え合わせしますよ』
「はーい、殺害の方法は?」
『特に考えていません、あえて考えるなら、音や光による怪奇的な方法か、犯人が直接、自宅に乗り込んだかですね』
「サクラはアカウントを乗っ取られていた?」
『いえ、サクラのプレイヤーの身内が、代わりにプレイしていた、それを乗っ取りだと思った犯人が殺害しました』
「犯人は、誰?」
『乗っ取り犯は複数いました。作中でも書きましたが、ケイ(ケットシー)は被害者です。殺人犯は、ツヨシではないです、実は名前を出していないプレイヤーがもう一人いました』
「もう一人のプレイヤーとは?」
『最初にログインした一人がそのプレイヤーで、その視点からの描写です。巨人クエストの時点では四人のチームで、サクラAがプレイヤー、サクラが乗っ取り犯を見つけたときは、サクラBと殺人犯が二人でクエストに行ってました。最後の殺人事件の話でもサクラBを含む、四人の会話です』
「なるほど」
『ちなみにツヨシは、本当に泊まりでログイン出来ませんでした、殺人犯も段々と思考が幼くなっています』
「……所で、キミは誰だい?」
『冗談は、止めてください』
それでは、終わりにします。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。