表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/29

八話 自己紹介はかっこよく


「なっ、何でこんなところにっいるんですのでございましょうか!?」


 思わず口走ってしまった。

 すると、すかさずエルミルの突っ込みが降りかかってきた。


「どんな敬語なのよ……」 


「そ、そりゃあ最高級の敬語だ」


 た、たぶん。


「むしろランクは下がっている気がするんだけど」


 否定はできないけど、否定したい!

 よし、煽ろう。


「いやいや、敬語に敬語を足すと最高級敬語に進化するんだぜ? 全く知らないのか?」


「知らないわよ! あとそんなのないからね!」


「ふふっ、面白いのねあなた達」


 王女様が、鈴のような声で笑った。


 あれ? もしかしてこれってだめなんじゃないか? 王女様を笑わせたら大罪! とかそんなのがあったらどうしよう。


「めっ、めっそうもございません。私達はこのとーり完全なくずです! ゴミです! 肥溜めです!」


 とりあえず土下座の上から土下座をしてやろうかと思うぐらいだった。

 

「メグ、そこまで目上の人に対して自分を蔑まなくてもいいのよ。最後には場所になってるし……って! 私達ってなによ!」


 あ、気づかれた!


「もー喧嘩しないの、め!」


「は、はい!」


「え……はい」


 王女様の一声で俺らの謎の言い合いは終わり、本題へとうつる。


「えーこほん。さぁ逃げましょう! もうそんなに時間は残されてないわ」


 王女様は王女様らしからぬガッツポーズ(多分この世界にガッツさんはいないから他の名称何だろうけど)をしていて、なぜかそれが俺にはかっこよく見えた。


「でも、逃げるったってどこから逃げればいいのよ?」


 と、エルミル。

 すると食い気味に王女様が言う。


「私が出てきた、ここ、からよ!」


 王女様がすこし横にずれるとそこには人が一人入れるかどうかぐらいの穴があった。


 エルミルに訊いたところ、俺が寝た後暫く壁を蹴ったり殴ったりと、どうにかここから逃げようとなんか色々出来ることをやりまくっていた時。

 突然、今壁があいているところから王女様が出現したという。


「いや、もうねお化けかと思ったわ」


「そんなこと考えていたんですの!?」


 エルミルの発言にあんぐりと口を開けて驚く王女様。


「全く失礼な奴だなエルミルは、俺だったら……」


 俺だったらどう考える……。

 殴っていた壁から少女がぬるりと出てきたとしたら……しかもそれは白い服を、ゆったりとした白い服を着ている。


「貞子かな?」 


「サダコ……?」


「なによそれ?」


 固まってしまう二人……しまった! 貞子とかそんなの知ってるわけなじゃないか!

 ……って貞子って伝わらなくて良かったぁ! 完全に怒らせちゃうじゃないか。

 危ない危ない。


「うーんと可愛いお化け!」


「結局お化けじゃない!」


「少し悲しいですわ」


 そしてまた静かな時が流れる。

 

「……じゃなくて、そんな話をしている場合ではないんです! 早く二人ともここに入ってください!」


 そんな可愛らしい王女様の怒声に押され、俺とエルミルはその小さな壁の穴に身をねじ入れた。


 ◇◇◇


「なぁ王女様?」


「どうしたんですか?」


 俺の声は狭い空間の中、反響して、話してる声が毎回鐘の音みたいだ。


 俺ら三人があの壁の穴に入って見るとそれはもう恐ろしく狭かった、エルミルなんて胸部についたでかいおもりが邪魔をして全然はいれていなかった。

 ちなみに順番は前から、王女様、俺、エルミルである。

 ほふくぜんしんで進んでいるからか、はたまた王女様の服装がやけにゆったりとしているからか、たまに下に穿いているお召し物がお見えになってしまうが、そこは紳士である俺。

 

 悟られないように必死に目をそらしておく。


「王女様ってさ、何でこんな道しってるんですか?」


「ええっと、私としてはとても言い辛いのですが、まぁ、貴方達に隠してたって意味はないですし、話すとしましょうか」


 ためらいはしたものの、王女様は何故か少し困った様子で話し始める。


「私って結構、お外で遊ぶのが好きなのよね。それで、小さい頃から結構お外に出て遊んでたのよ」


「それって……」


「ええ、もちろんダメなことです。でも私は止められませんでした。最初のうちは普通に玄関から遊びに出て、次は庭から、定番の紐を下ろして窓からなど色々やりました」


「定番って……」


 この世界でも王女様とかお嬢様が窓から紐を垂らして逃げ出すのは定番なのか。


「そして、最終的にはお城中に私専用の隠し通路を掘らせてしまいました、実は都中にまで繋がっているんですけれどね」


「わぉ」


 流石に規模が子供の家出、とかそんなものではなくなってる。何かあったときに隠し通路は大事かもしれないけどそこまでやったらもう。

 何だ……言葉が思いつかないや。


「所で王女様? そろそろ私達、自己紹介……情報交換しておきませんか?」


 俺が黙っていると、何か話しておかないといけないと思ったのかエルミルが繋いでくれた。


「そうね、そろそろ王女様って言われるのも飽きてきたところでしたし。それでは名乗らせて頂きます……」


「ちょっ、ちょっと待ったぁ!」


 今、とうとう王女様の名前が明かされる! そんなときにエルミルが割って入ってきた。


「どうしたんだ? トイレ?」


「違うわよ! 何で今ここで私がトイレに行ってきますなんていうのよ! そうじゃなくてこういう場合って下の人から名乗るもんでしょう?」


「そうなのか?」


「そ、そうですよね王女様!」


 自分でいっておきながら不安になったのか、エルミルはすぐさま王女様に訊く。


「どうなんですかね、私にはよくわかりません。でも名乗りたいならいいですよ、さっきから名前は聞こえてるんで知ってはいますけれど」


 それを聞いて、エルミルは一つ咳払いをして名乗る。


「私は、エルミル。何にもないエルミルですわよ」


 ですわよ!?


「種族はサキュバス、しかして、私はエナジードレインを使用致しません。その代わり魔法、そして物理攻撃に関してはトップレベルでございますわ。以後お見知りおきを」


「エルミル……どうしたんだ? さっきの俺より酷いぞ。いや、さっきの俺は酷くないけど」


 なんかもう喋り方とか、振る舞い方とか、語尾とかもう滅茶苦茶だった。

 王女様だって固まってるもん。


 仕方ない、俺が本当の自己紹介ってやつを見せてやるよ!!


「王女様よぉおらぁ、フクラメグミってんだあ! 王都の一匹狼ってのは俺の事だい! でも、俺はなぁ結構昔からここにいるってわけじゃあ無いんだぜ? おらぁ転生者って奴でよぉ。いろんなスキルを持ってるはず何だ、まぁ、気が向いたら何でもいいな。聞いてやん──」


「ハイストップー!」

 

 ぺしーんと、後ろから俺のお尻を叩いて強制的に話を終わらせるエルミル。


「何で止めるんだよ、これからもっと熱くいい展開が待ってたのに!」  


「いやいや、ひどすぎるでしょ。どこの不良の口調よ!」


「違うよ! 江戸時代のかっこいい侍をイメージしてだなぁ!」


 全く、わかってないなぁ。そこら辺の不良たちと比べないでくれ、俺が小さな頃何回時代劇を見たと思ってるんだよ。

 

 多分三回ぐらいだな。

 あれ? 俺……何であんな自己紹介にしたんだろう。


 俺の自己紹介が終わると、とうとう最後、お待ちかねの王女様の自己紹介が始まった。


「え、えーっと。二人ともとても個性的な自己紹介ありがとうございます。それでは最後、私の紹介をさせて頂きますね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ