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三話 パーティー結成!


「なるほど、理解したぜ!」


 俺のミルクの酔いがすっかりしっかり醒める頃には、サキュバスの話も一通り話し終わっていた。


 まぁ要するにサキュバスは何が言いたかったかといえば「エナジードレインなんて恥ずかしいことは出来ない」ってことだそうだ。


「だってね、聞いてよ! エナジードレインってねあのもう……何というか……言い辛いわね」


 言い辛そうにしているが、「だってね、聞いてよ!」のところで大ジョッキ並々に入っていた酒を一気飲みしている事は忘れてはいけない。


「で、どうなんだ?」


 サキュバスは何かをいいたげにしながらも苦しげに「えっ……」と呟く。

 伝えたいけど、果たして言葉に出していいものなのか。そんな事を心の中で争っている風に感じ取れる。


「えっ……ち。なのよ」


「へぇ」


 エッチなのか。


 何だそれだけか。俺も今年で十八歳、そんなことで慌てるような人間ではない。

 むしろなにも感じないぜ。


「サキュバスのエナジードレインって、その吸収してるときとっても光るじゃない? で、そんなに何やってるかわからないでしょう?」


「うん。あれは一種の閃光スキルだよな」


 まさしく目も当てられない。


「あの光って自分がやってるとってもエッチなことを見せたくないからやってるだけなのよね」


 あ、これは秘密ね。

 と口元に人差し指を立ててしぃー、のポーズ。


 確かに、あのパーティーのサキュバスもなんかエナジードレインしたあとは顔が火照ってたな。

 一見すると酔ってるようにも見えたそれの真相がこんなことだったとは。


 まぁいいけどね。


「でもそれが、……あんたはできないと」


 そういうこと、と指を鳴らすと話は続く。


「スキルの使えないサキュバスなんてそりゃ必要ないわよね。しかも理由が恥ずかしいから、なんていったら追放されるのも無理はないわ」


 自分自身のことを貶めるように、馬鹿にするように、あえて傷つけるかのようにそう言う。 

 涙がでてないのが不思議なぐらいだ。


「まぁでもいいじゃん。追放されたってことは働かなくていいってことだろ?」


「正確には働く場所を無くしたって感じだけど、それがどうかしたの? まさかどうやったら働けるか一緒に考えるなんて言わないわよね」


「まさか、そんなの言わないよ。寧ろ働かなくていいなんて最高じゃんか」


「最高!?」 


 サキュバスは今日一番に目を見開く。


「別に働くことが全てじゃないんだし、時間だって増えるんだから他のことやってみるとかしたらいいじゃんか。そもそもサキュバスだからエナジードレインができないとおかしいとか転生者だからスキルが使えないといけないとか、そんな固定概念がある方が駄目だよな。もっと自由に生きてていいんだぜサキュバス」


 しかも本人はエナジードレインなんて使いたくないと言っている。

 だったら無理に働かせる方がおかしい。


「そっ、それで新しいことをやろうとかいって私をどうにかしようって魂胆なのね!」


 なぜかすごく逃げ腰で俺のことを指さしてくるサキュバス。

 まさか俺のことを怪しいセールスとかと勘違いしてるのか? 怪しい転生者ではあるかもしれないけど。


「さっきから気になってるだけど、何でそんなに俺のことを警戒してるんだ?」


 転生者が酒場にいるなんて確かにおかしいとは思わなくもないけど。


「そ、それは今までの人がみんなそうだったから……よ」


「今までの人?」


 俺が来るまで話してた人が何人かいたのかな? もしくは今まで会った転生者がみんな俺みたいな感じだったとか?

 あ、まさか俺がミルクで酔っ払って絡んじゃったからかも……。

 ちっくしょう、酔っ払った拍子にサキュバスに話しかけるんじゃなかったなぁ。そりゃあ警戒もするわ。

 

「あなた、さてはとっても的外れなこと考えてるわね」


「いやいや、今まで会った転生者がみんなミルクで酔って、絡んできたってことだろ?」


「あら、あながち間違ってはないじゃない。半分は合ってるわ」


「だろ? にしてもそんなに転生者に会うなんて凄いな」


「そっちが間違ってる方なんだけど……。じゃなくてね、今までも私何回も追放されてきたのよ」


 ほいほいと、相槌を打つ。


「で、追放される度に酒場でお酒を飲んだりしちゃうのよ。そーするとね、寄ってくるのよ」


「蠅が?」


「そんなに汚くないわよ! 違くて、男よ男! 私がサキュバスって事もあるんだけど弱みにつけ込もうとして来る男が何人もいたのよ」


「弱みにつけ込んでどうするつもり何だか、俺には全くわからんな」


「あなたには少し刺激が強いかもしれないからそこまでは言わないけど、簡単に言うと下心丸出しなのよね皆」


 ほんっと呆れちゃう、とサキュバス。


「私も最初の方は信じちゃったりしたのよ、何っていうか、信じたくなっちゃうのよ。でもやっぱり二日三日経つ頃には本性がでちゃうんでしょうね。皆、みーんな特別宿に連れて行こうとするのよ」


 特別宿か、あそこはベットが他の宿よりも格別にいいって聞いたことがある。

 俺も一回は行きたいもんだ、ちょっと値が張るからいくのは相当あとになりそうだけど。


「まぁ、疲れたら寝たくもなるよな」


 サキュバスはまるで予想外の返答に困ったような顔をしてそうね……。と言って続ける。


「でも他の連中に比べてあなたは違ったの、最初はミルクで酔っちゃうし転生者なのに追放されてるし童顔だし変な奴だと思ったけど……」


「最終回みたいな雰囲気を醸し出して悪口を羅列してる所悪いが、サキュバス。何回も言うが童顔は悪口じゃないんだ、しかも寧ろ褒め言葉だと思うんだけど」


 これはつっこまずにいられるだろうか。

 何でこの世界では童顔がこんなにも虐げられているんだ? 謎だ。


 俺のツッコミを無視するとサキュバスは続ける、高らかに笑いながら。


「変な奴だと思ったけど、あなたみたいな人初めてだわ。ふふっ、ほんと面白いのねあなた」


「何がおかしいんだよ」


 おかしいのはこの世界の童顔への偏見だ。


「あっ! いいこと思いついた!」


「何だ!? まさかサキュバスの特性を生かした新しい何かを思いついたのか!」


 しかしサキュバスの言う言葉は全く違った。


「あなた、私とパーティーを組まない?」


「え、働いちゃっていいのか? また戦場に戻っちゃっていいのか?」


「いいのよ、しかも丁度二人とも追放仲間じゃない。それとも嫌?」


「別にいやってことはないけど……まぁいっか! じゃあ宜しく。俺はフクラメグミ、スキルの使えない転生者だ」


「私はエルミル、エナジードレインの出来ないサキュバスよ」

 

 俺の出した手とエルミルの出した手、二人の手はがっしりと掴まれ、今ここにパーティーが完成したのだった。


主人公の名前(漢字バージョン)「吹浦 恵」


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